SaaSにおける価格体系の特徴・メリット・デメリットを代表例を挙げながら、解説します。それぞれの価格体系の特徴を踏まえて、各事業者様が価格を設定する際に役に立てば幸いです。
今さら聞けないSaaSとは?
SaaS(Software as a Service)とは、電子メールやカレンダー、スケジュール管理、ドキュメント作成、人事・給与・勤怠・労務管理、プロジェクト管理などのアプリケーションをインターネット経由で提供するサービスです。完全無料のSaaSもありますが、多くの場合ユーザーは利用料を支払って利用します。
では、SaaSには実際にどのような価格体系が存在するのでしょうか。
SaaSの4つの代表的な価格体系
SaaSの価格体系は基本的にサブスクリプションになっており、中でも4種類の価格体系に分類されます。それは、
・単一価格モデル
・複数パッケージ価格モデル
・従量課金モデル
・フリーミアム
の4つです。
事業を成長させるためにも価格体系を把握しておくことはとても重要です。次はそれぞれの料金モデルについて詳しく解説していきます。
1. 単一価格モデル
単一価格モデル(Flat rate pricing model)は、サービスに対して料金体系が1つである価格体系です。
全てのユーザーに対して単一の製品・機能・価格を提供するため、SaaSの価格体系の中でも最もシンプルなものになります。
例えば、ターゲットセグメントが画一的であったり、機能や価値が単一化されているシンプルなサービスで利用されます。また、事業ニーズがあるかを仮説検証しやすいという観点から、PMFが優先されるシード(新規事業フェーズを含む)・アーリーステージなどで利用されることが多いです。
一方で、幅の広い顧客層のニーズに1つのプランで応えるということは難しく、SaaSの価格体系としてあまり多くは見受けられません。
メリット
- シンプルでわかりやすい
- 事業ニーズがあるかを仮説検証しやすい
デメリット
- 幅広いユーザーのニーズに応えることが困難
- 売上の向上が困難
2. 複数パッケージ価格モデル
複数のパッケージ(いわゆる「プラン」のこと)を提示する、SaaSで広く取り入れられている価格体系です。さまざまなニーズに対応でき、顧客ごとの売上最適化に近づきます。
また、質の高い機能や多くのストレージを提供する必要がある顧客に対して、価値に見合った金額を受け取ることができることから、利益を増加させることが可能です。
一方で、選択肢が多すぎたり、プランの差が複雑だと顧客にとって検討事項が増えてしまい、購入障壁を高めることにつながるため、顧客ニーズに合致した選択肢を3つ程度に留めるように注意が必要です。
メリット
- 幅広いニーズに対応できる
- 利益増につながる
デメリット
- 顧客ニーズに合致した価格設定のバランスが難しい
複数パッケージ価格モデルの種類を紹介します。
1.段階的なユーザーモデル(Tiered user model)
段階的なユーザーモデル(Tiered user model)とは、利用できるユーザー数の違いによって、価格を複数設定するモデルです。利用機能に違いを作りにくいが、1社で利用する人数が多いサービスで設定される場合が多いです。
2.段階的なストレージモデル(Tiered storage model)
段階的なストレージモデル(Tiered storage model)とは、利用できるストレージの量にもとづき、価格を複数設定するモデルです。ストレージサービスなど、使用可能な量に沿って利用価値が上がるサービスに多い価格体系です。
3.機能別モデル(Feature based model)
機能別モデル(Feature based model)とは、顧客が利用可能な機能に応じて、複数の料金プランを設定するモデルです。顧客のペルソナと必要とされる機能の把握ができていると設定しやすく、使用できる機能の数が多くなるほど価格は高くなります。
3. 従量課金制
従量課金制は、ユーザー数や使用時間などの利用した“量”に“従”って課金する、価格体系です。顧客目線だと「使った分だけお金を払う」仕組みになります。
ユーザーの使用状況に応じて単価が確定し、請求されるため、金額に対する顧客の納得を得やすくなります。また、ユーザーの利用状況によっては、一定の金額で使い放題の場合と比べ、より多くの金額を請求できるため収益の最大化につながります。
一方、サービス利用前に課金タイミングを設置できない点や、事前に収益予測をする難易度が上がる点が難点となります。
メリット
- 顧客の納得を得やすい
- 収益を最大化させやすい
デメリット
- 前払いをしてもらえない
- 事前に収益予測ができない
- 利用を控えられる可能性がある
従量課金制の種類を紹介します。
1.使用量課金
使用量課金は、特定の機能を利用した回数や保存できるデータの量、アクセスできるストレージの量など、サービスの何かを利用・アクセスした量に応じて課金されるモデルです。
Datadog(データドッグ)
使用量課金型の従量課金モデルの代表例として、監視アプリケーションサービスを提供するデータドッグが挙げられます。
次の画像のようにデータドッグが提供するリアルユーザーモニタリングのサービスでは1マンセッションごとに課金される仕組みになっています。
(出典:Datadog)
2.成果報酬型
成果報酬型は、成果が発生した場合に課金されるモデルです。例えば、採用媒体で人材を獲得した場合に課金が発生する場合はこれに該当します。
月額利用料に加えて成果報酬が発生するサービスもあれば、月額利用料はなく成果報酬のみ発生するサービスもあります。
BIZREACH(ビズリーチ)
成果報酬型の従量課金モデルとして転職支援サービスを提供するビズリーチが挙げられます。
ビズリーチではシステム利用料に加えて、入社した際の成功報酬が発生します。
(出典:ビズリーチ)
3.ユーザー課金
ユーザー数課金は、顧客企業に付与したアカウントの数に応じて単価が上がるモデルです。顧客の利用アカウント数が増える度に、自動で単価が増加するため、追加営業やパッケージの変更なく売上を増加させることが可能になり、使い方次第では非常に強力な収益増加のドライバーになります。
Salesforce(セールスフォース)
ユーザー課金型の従量課金モデルを用いている企業の代表例として、顧客管理クラウドで有名なセールスフォースが挙げられます。
セールスフォースでは次の画像のように、価格表には1ユーザーごとの金額が表示されており、サービスを使う使うユーザーの数によって金額が変わるのです。(出典:Salesforce)
4.アクティブユーザー課金
ユーザー課金モデルの場合は、サービスの利用状況に関わらず料金が発生する一方、アクティブユーザー課金モデル(Per active user pricing)は、サービスを利用していないアカウントには料金が発生せず、過去のログイン履歴などを参照し、サービスを利用しているアカウント数のみに料金が発生するモデルです。
ユーザー課金よりも単価を抑えやすいぶん、顧客に好まれやすいというメリットがある反面、収益や業務内容、コスト面で様々な懸念点があるため、自社の状況をしっかりと鑑みて実施することが望ましくなります。
Slack(スラック)
アクティブユーザー課金型の従量課金モデルを用いているサービスとして、ビジネス用メッセージングアプリのスラックが挙げられます。
実際は次の画像のようにアクティブユーザーの数が全体の金額に換算されます。(出典:Slack)
スラックでは自社サイト上にて次のように表記しています。
「企業向けソフトウェアの料金プランではほとんどの場合、チームのユーザー数をもとに請求が行われ、ソフトウェアを実際に使用しているユーザー数は考慮されません。しかし、Slack では実際に利用した分のみの料金が請求されるので、Slack を使用していないメンバー分の料金を支払うことはありません。」
(出典:Slack help center)
4. フリーミアム
フリーミアムとは、無料プランと有料プランの2つの段階に分類し、運用する価格体系です。顧客は、基本的な機能を無料で利用できますが、機能や容量などを追加して利用する際に課金が必要になります。
フリーミアムを使うことで、顧客は無料でサービスを利用できることから、導入ハードルを大きく下げることが可能です。フリーミアムを正しく運用することで、顧客獲得単価を下げ、大幅な顧客数増加のドライバーにできます。
一方、設計を間違うと、収益化の難易度が格段に上がるため、注意が必要です。また、カスタマイズ性が高く、カスタマーサクセス工数が多くかかるようなサービスでは、採算が合わず、適応は難しくなります。
メリット
- 顧客獲得が容易
- サービス理解が促進されやすい
- 有料化が必要なタイミングに、やめにくくなっている
デメリット
- 収益化の難易度が高い
- カスタマイズ性が高いサービスでは、採算が合わない
まとめ
SaaSの価格体系として、単一価格モデル・複数パッケージ価格・従量課金制・フリーミアムを紹介しました。
価格・プライシングに関してお悩みの事業者様は、一度プライシングにお問い合わせください。
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では、SaaSには実際にどのような価格体系が存在するのでしょうか。
SaaSの4つの代表的な価格体系
SaaSの価格体系は基本的にサブスクリプションになっており、中でも4種類の価格体系に分類されます。それは、
・単一価格モデル
・複数パッケージ価格モデル
・従量課金モデル
・フリーミアム
の4つです。
事業を成長させるためにも価格体系を把握しておくことはとても重要です。次はそれぞれの料金モデルについて詳しく解説していきます。
1. 単一価格モデル
単一価格モデル(Flat rate pricing model)は、サービスに対して料金体系が1つである価格体系です。
全てのユーザーに対して単一の製品・機能・価格を提供するため、SaaSの価格体系の中でも最もシンプルなものになります。
例えば、ターゲットセグメントが画一的であったり、機能や価値が単一化されているシンプルなサービスで利用されます。また、事業ニーズがあるかを仮説検証しやすいという観点から、PMFが優先されるシード(新規事業フェーズを含む)・アーリーステージなどで利用されることが多いです。
一方で、幅の広い顧客層のニーズに1つのプランで応えるということは難しく、SaaSの価格体系としてあまり多くは見受けられません。
メリット
- シンプルでわかりやすい
- 事業ニーズがあるかを仮説検証しやすい
デメリット
- 幅広いユーザーのニーズに応えることが困難
- 売上の向上が困難
2. 複数パッケージ価格モデル
複数のパッケージ(いわゆる「プラン」のこと)を提示する、SaaSで広く取り入れられている価格体系です。さまざまなニーズに対応でき、顧客ごとの売上最適化に近づきます。
また、質の高い機能や多くのストレージを提供する必要がある顧客に対して、価値に見合った金額を受け取ることができることから、利益を増加させることが可能です。
一方で、選択肢が多すぎたり、プランの差が複雑だと顧客にとって検討事項が増えてしまい、購入障壁を高めることにつながるため、顧客ニーズに合致した選択肢を3つ程度に留めるように注意が必要です。
メリット
- 幅広いニーズに対応できる
- 利益増につながる
デメリット
- 顧客ニーズに合致した価格設定のバランスが難しい
複数パッケージ価格モデルの種類を紹介します。
1.段階的なユーザーモデル(Tiered user model)
段階的なユーザーモデル(Tiered user model)とは、利用できるユーザー数の違いによって、価格を複数設定するモデルです。利用機能に違いを作りにくいが、1社で利用する人数が多いサービスで設定される場合が多いです。
2.段階的なストレージモデル(Tiered storage model)
段階的なストレージモデル(Tiered storage model)とは、利用できるストレージの量にもとづき、価格を複数設定するモデルです。ストレージサービスなど、使用可能な量に沿って利用価値が上がるサービスに多い価格体系です。
3.機能別モデル(Feature based model)
機能別モデル(Feature based model)とは、顧客が利用可能な機能に応じて、複数の料金プランを設定するモデルです。顧客のペルソナと必要とされる機能の把握ができていると設定しやすく、使用できる機能の数が多くなるほど価格は高くなります。
3. 従量課金制
従量課金制は、ユーザー数や使用時間などの利用した“量”に“従”って課金する、価格体系です。顧客目線だと「使った分だけお金を払う」仕組みになります。
ユーザーの使用状況に応じて単価が確定し、請求されるため、金額に対する顧客の納得を得やすくなります。また、ユーザーの利用状況によっては、一定の金額で使い放題の場合と比べ、より多くの金額を請求できるため収益の最大化につながります。
一方、サービス利用前に課金タイミングを設置できない点や、事前に収益予測をする難易度が上がる点が難点となります。
メリット
- 顧客の納得を得やすい
- 収益を最大化させやすい
デメリット
- 前払いをしてもらえない
- 事前に収益予測ができない
- 利用を控えられる可能性がある
従量課金制の種類を紹介します。
1.使用量課金
使用量課金は、特定の機能を利用した回数や保存できるデータの量、アクセスできるストレージの量など、サービスの何かを利用・アクセスした量に応じて課金されるモデルです。
Datadog(データドッグ)
使用量課金型の従量課金モデルの代表例として、監視アプリケーションサービスを提供するデータドッグが挙げられます。
次の画像のようにデータドッグが提供するリアルユーザーモニタリングのサービスでは1マンセッションごとに課金される仕組みになっています。
(出典:Datadog)
2.成果報酬型
成果報酬型は、成果が発生した場合に課金されるモデルです。例えば、採用媒体で人材を獲得した場合に課金が発生する場合はこれに該当します。
月額利用料に加えて成果報酬が発生するサービスもあれば、月額利用料はなく成果報酬のみ発生するサービスもあります。
BIZREACH(ビズリーチ)
成果報酬型の従量課金モデルとして転職支援サービスを提供するビズリーチが挙げられます。
ビズリーチではシステム利用料に加えて、入社した際の成功報酬が発生します。
(出典:ビズリーチ)
3.ユーザー課金
ユーザー数課金は、顧客企業に付与したアカウントの数に応じて単価が上がるモデルです。顧客の利用アカウント数が増える度に、自動で単価が増加するため、追加営業やパッケージの変更なく売上を増加させることが可能になり、使い方次第では非常に強力な収益増加のドライバーになります。
Salesforce(セールスフォース)
ユーザー課金型の従量課金モデルを用いている企業の代表例として、顧客管理クラウドで有名なセールスフォースが挙げられます。
セールスフォースでは次の画像のように、価格表には1ユーザーごとの金額が表示されており、サービスを使う使うユーザーの数によって金額が変わるのです。(出典:Salesforce)
4.アクティブユーザー課金
ユーザー課金モデルの場合は、サービスの利用状況に関わらず料金が発生する一方、アクティブユーザー課金モデル(Per active user pricing)は、サービスを利用していないアカウントには料金が発生せず、過去のログイン履歴などを参照し、サービスを利用しているアカウント数のみに料金が発生するモデルです。
ユーザー課金よりも単価を抑えやすいぶん、顧客に好まれやすいというメリットがある反面、収益や業務内容、コスト面で様々な懸念点があるため、自社の状況をしっかりと鑑みて実施することが望ましくなります。
Slack(スラック)
アクティブユーザー課金型の従量課金モデルを用いているサービスとして、ビジネス用メッセージングアプリのスラックが挙げられます。
実際は次の画像のようにアクティブユーザーの数が全体の金額に換算されます。(出典:Slack)
スラックでは自社サイト上にて次のように表記しています。
「企業向けソフトウェアの料金プランではほとんどの場合、チームのユーザー数をもとに請求が行われ、ソフトウェアを実際に使用しているユーザー数は考慮されません。しかし、Slack では実際に利用した分のみの料金が請求されるので、Slack を使用していないメンバー分の料金を支払うことはありません。」
(出典:Slack help center)
4. フリーミアム
フリーミアムとは、無料プランと有料プランの2つの段階に分類し、運用する価格体系です。顧客は、基本的な機能を無料で利用できますが、機能や容量などを追加して利用する際に課金が必要になります。
フリーミアムを使うことで、顧客は無料でサービスを利用できることから、導入ハードルを大きく下げることが可能です。フリーミアムを正しく運用することで、顧客獲得単価を下げ、大幅な顧客数増加のドライバーにできます。
一方、設計を間違うと、収益化の難易度が格段に上がるため、注意が必要です。また、カスタマイズ性が高く、カスタマーサクセス工数が多くかかるようなサービスでは、採算が合わず、適応は難しくなります。
メリット
- 顧客獲得が容易
- サービス理解が促進されやすい
- 有料化が必要なタイミングに、やめにくくなっている
デメリット
- 収益化の難易度が高い
- カスタマイズ性が高いサービスでは、採算が合わない
まとめ
SaaSの価格体系として、単一価格モデル・複数パッケージ価格・従量課金制・フリーミアムを紹介しました。
価格・プライシングに関してお悩みの事業者様は、一度プライシングにお問い合わせください。
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