「アンカリング効果とは?」
「アンカリング効果の⾝近な例とは?」
「アンカリング効果はビジネスにどう活⽤できる?」
このような悩みや疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか?そこで今回は、アンカリング効果の解説から身近な事例や、ビジネスにどう活用するのか、活用する際の注意点まで解説します。この記事は、以下のような方におすすめの記事です。
- アンカリング効果について知りたい方
- アンカリング効果の⾝近な例やビジネスにどう活⽤できるか知りたい方
目次
アンカリング効果とは?
アンカリング効果とは、消費者が商品の品質について評価をする時に、アンカーという最初に目にした価格が購買判断に影響する心理効果のことです。つまり最初に目にした価格や条件の印象が一番強く残るため、その後の購買行動まで影響を及ぼすということです。一番最初に目にし、印象に残っている価格は、アンカー価格とも呼ばれます。
アンカーという言葉の語源は、船の錨(アンカー)から来ています。最初に錨(アンカー)を海底に下ろすと、鎖は伸びる制限があるため、船を動かせる範囲に影響するということから、名付けられました。
アンカリング効果の活用事例
実際にアンカリング効果は様々な市場で活用されています。ここで、アンカリング効果の活用事例として下記3つの事例をご紹介します。
- 松竹梅は竹が売れる
- 値引き前の価格をあえて表示
- あえて高い商品を用意する
松竹梅は、竹が売れる
アンカリング効果が活用されている1つ目の事例として、「松竹梅は、竹が売れる」ことが挙げられます。「真ん中のマジック」と呼ばれることもあり、松竹梅のように複数の価格帯が存在する時、真ん中の価格帯が一番売れる傾向にあるようです。例えばコーヒーショップなどではTallサイズが売れやすいなどです。
(出典:タリーズコーヒージャパン)
他にもレストランでワインを注文するときでも同じようなことが起こるようです。
レストランでワインを選ぶ時、ほとんどの顧客はワインリストを見て中間の価格帯のワインを注文します。そして最も高価なワインや、最も安価なワインを選ぶ人はごく少数になります。
(出典:photoAC)
買い手は商品を選ぶ時できるだけ最善の意思決定をしようとします。そこで中間の価格帯の商品を選ぶことで、品質が劣るものを購入するリスクや、多く払い過ぎてしまうリスクを同時に軽減しようという思考が働くようです。
そういった背景から、買い手にとって真ん中の価格帯は魅力的に見え、選ばれやすくなるといった現象が他の商品でも見られるのです。そのため売り手は、複数の適切な価格帯を揃えアンカーを設置することで、意図的に一定の価格に誘導することが可能になるのです。
値引き前の価格をあえて表示する
アンカリング効果が活用されている2つ目の事例として、様々な市場で用いられている手法ですが、最初から値引きした金額を表示するのではなく、あえて値引き前の金額も記載することで、アンカリング効果によりお得感を強調する事例があります。メーカー希望小売価格や定価を表示し、そこからの値引きを強調することで、値引き前と後で比較しやすくなり、消費者はお得感を感じやすくなるのです。
あえて非常に高い商品を用意する
アンカリング効果が活用されている3つ目の事例として、顧客に商品の情報や知識がなかったり、その価格帯に関する情報を持っていない場合に、適切なアンカー価格を設置するという戦略が有効です。
具体例を挙げると、「誰も買わないのに収益に貢献する商品」が挙げられます。次のような事例が紹介されています。ある販売員が、新しいスーツケースを買うために来店した客に対して予算を聞いたところ、200ドルと言いました。そこで販売員は取扱商品の全体像を伝えたいと言い、900ドルのスーツケースを取り出してきて、品質やデザイン、ブランド名の点で最高級モデルであることを強調しました。その後、顧客が希望する価格帯の商品の設営に戻るが、その際に250ドルから300ドルの価格帯の商品に客の注意を促しました。すると250ドルから300ドルの価格帯の商品を購入する可能性がかなり高くなることがわかりました。
この事例のように、あえて消費者の支払い意欲よりも高い価格設定をしてある商品を用意し、先に紹介することで、高い商品がアンカーとなり、次に見た商品を「安い」と思ってもらいやすくなります。このように、アンカー価格がうまく機能すると、消費者を一定の価格に誘導したり、消費者の支払意欲を上げることが可能になります。
アンカリング効果の注意点
アンカリング効果は上述のとおり、うまく活用すれば大きな成果を挙げることができますが、注意点も存在します。ここでは大きく分けて下記三つの注意点をご紹介します。
- 二重価格表示をする際には注意が必要
- 商品価格の相場が広く消費者に知れ渡っている場合は効果を発揮しづらい
- 極端な価格設定は逆効果
二重価格表示をする際には、注意が必要
アンカリング効果を狙って、通常価格と値引き後の価格を表示する二重価格表示をする場合、景品表示法に違反する可能性があります。景品表示法で二重価格表示として認められている価格は、「今までの価格やこれから設定する可能性のある価格」、「希望小売価格」「競合の販売価格」の三種類です。しかし、「これから設定する可能性がある価格」に根拠がなかったり、販売する環境が異なる競合の価格や、競合が昔販売していた価格などを表示したりする二重価格表示は、景品表示法に違反しています。
過去に大手ネットショッピングサービスや、Amazonなどもこの二重価格表示で行政処分を受けた事例があるため、景品表示法に関連するガイドラインを正確に理解し、違反した二重価格表示を行っていないか細心の注意を払う必要があります。
商品価格の相場が広く消費者に知れ渡っている場合は効果を発揮しない
アンカリング効果は様々な市場で取り入れられている手法ですが、効果を発揮できない市場も一定数存在します。それは、製品やサービスの相場が、消費者に広く知れ渡っている市場です。具体例を挙げるとお菓子や、飲料メーカーの製品は、ある程度の相場を消費者は理解しており、それより高い値段を提示しても、消費者はお得感を感じません。
極端な価格設定は逆効果
理想の価格に誘導することを意識しすぎて、極端に高い価格や極端に安い価格をアンカーとして設置してしまうと、消費者が不信感を感じ、うまく機能しない場合があるのです。具体的には、「高すぎる値段からここまで値下げされているのは、製品に何かしらの欠陥があるのではないか」「お得に見せたいために、通常価格を盛っているのではないか」といった不信感を感じられてしまう可能性があります。
なぜうまく機能しないかというと、価格レンジから外れてしまうからです。価格レンジとは、消費者が製品やサービスに対して、いくらまでなら払えるのかという支払い意欲の幅を指します。そのため、まずは消費者がその製品にどのくらい価値を感じており、どの価格までなら支払えるのかという価格レンジを正確に把握する必要があります。正確な価格レンジを把握することができれば、極端な価格設定を避けることができます。
適切なアンカー価格を設定するためには?
前述のとおり、適切なアンカー価格を設定するためには、価格レンジを把握することが重要です。その際に、価格レンジを把握するアプローチとして使われるのが、PSM分析という分析手法です。PSM分析(価格感応度分析)とは、バリューベースの価格設定を実現するために、顧客の支払意欲を調査するために使われる手法です。PSM分析を応用することで、商品・サービスがどの程度の価格なら最も顧客に受け入れられるかを把握できます。
売上や顧客数を最大化できる価格を試算できるのですが、顧客が高いと感じる価格や安いと感じる価格も可視化することが可能なため、適切なアンカー価格を設定することに役立てることが可能になります。PSM分析に関する詳しい記事は下記記事で紹介しています。
まとめ
今回は、「価格のアンカー効果」という初期値が顧客の購入の判断に影響する心理効果について紹介しました。使い方次第では価格戦略に大きく役立てることができますが、商品・サービスがどの程度の価格なら最も顧客に受け入れられるかという価格レンジをPSM分析で把握してから活用すると良いでしょう。
バリューベースの価格設定を実現したい事業者様は、お気軽に、プライシング スタジオにお問い合わせください。
プライシングスタジオが提供するホワイトペーパーも配布中! SaaS∕サブスク業界や⽇⽤消費財業界などの事業成⻑に向けた価格戦略の考え⽅と価格プロジェクトのフレームワークを収録した資料もダウンロードいただけます。
また、プライスハックでは、こうしたプライシングに関わるお役立ち情報やセミナー情報を発信しています。よりプライシングについて学ばれたい方は、下記リンクよりニュースレターをお受け取りください。
この執筆者のほかの記事
「アンカリング効果とは?」
「アンカリング効果の⾝近な例とは?」
「アンカリング効果はビジネスにどう活⽤できる?」
このような悩みや疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか?そこで今回は、アンカリング効果の解説から身近な事例や、ビジネスにどう活用するのか、活用する際の注意点まで解説します。この記事は、以下のような方におすすめの記事です。
- アンカリング効果について知りたい方
- アンカリング効果の⾝近な例やビジネスにどう活⽤できるか知りたい方
目次
アンカリング効果とは?
アンカリング効果とは、消費者が商品の品質について評価をする時に、アンカーという最初に目にした価格が購買判断に影響する心理効果のことです。つまり最初に目にした価格や条件の印象が一番強く残るため、その後の購買行動まで影響を及ぼすということです。一番最初に目にし、印象に残っている価格は、アンカー価格とも呼ばれます。
アンカーという言葉の語源は、船の錨(アンカー)から来ています。最初に錨(アンカー)を海底に下ろすと、鎖は伸びる制限があるため、船を動かせる範囲に影響するということから、名付けられました。
アンカリング効果の活用事例
実際にアンカリング効果は様々な市場で活用されています。ここで、アンカリング効果の活用事例として下記3つの事例をご紹介します。
- 松竹梅は竹が売れる
- 値引き前の価格をあえて表示
- あえて高い商品を用意する
松竹梅は、竹が売れる
アンカリング効果が活用されている1つ目の事例として、「松竹梅は、竹が売れる」ことが挙げられます。「真ん中のマジック」と呼ばれることもあり、松竹梅のように複数の価格帯が存在する時、真ん中の価格帯が一番売れる傾向にあるようです。例えばコーヒーショップなどではTallサイズが売れやすいなどです。
(出典:タリーズコーヒージャパン)
他にもレストランでワインを注文するときでも同じようなことが起こるようです。
レストランでワインを選ぶ時、ほとんどの顧客はワインリストを見て中間の価格帯のワインを注文します。そして最も高価なワインや、最も安価なワインを選ぶ人はごく少数になります。
(出典:photoAC)
買い手は商品を選ぶ時できるだけ最善の意思決定をしようとします。そこで中間の価格帯の商品を選ぶことで、品質が劣るものを購入するリスクや、多く払い過ぎてしまうリスクを同時に軽減しようという思考が働くようです。
そういった背景から、買い手にとって真ん中の価格帯は魅力的に見え、選ばれやすくなるといった現象が他の商品でも見られるのです。そのため売り手は、複数の適切な価格帯を揃えアンカーを設置することで、意図的に一定の価格に誘導することが可能になるのです。
値引き前の価格をあえて表示する
アンカリング効果が活用されている2つ目の事例として、様々な市場で用いられている手法ですが、最初から値引きした金額を表示するのではなく、あえて値引き前の金額も記載することで、アンカリング効果によりお得感を強調する事例があります。メーカー希望小売価格や定価を表示し、そこからの値引きを強調することで、値引き前と後で比較しやすくなり、消費者はお得感を感じやすくなるのです。
あえて非常に高い商品を用意する
アンカリング効果が活用されている3つ目の事例として、顧客に商品の情報や知識がなかったり、その価格帯に関する情報を持っていない場合に、適切なアンカー価格を設置するという戦略が有効です。
具体例を挙げると、「誰も買わないのに収益に貢献する商品」が挙げられます。次のような事例が紹介されています。ある販売員が、新しいスーツケースを買うために来店した客に対して予算を聞いたところ、200ドルと言いました。そこで販売員は取扱商品の全体像を伝えたいと言い、900ドルのスーツケースを取り出してきて、品質やデザイン、ブランド名の点で最高級モデルであることを強調しました。その後、顧客が希望する価格帯の商品の設営に戻るが、その際に250ドルから300ドルの価格帯の商品に客の注意を促しました。すると250ドルから300ドルの価格帯の商品を購入する可能性がかなり高くなることがわかりました。
この事例のように、あえて消費者の支払い意欲よりも高い価格設定をしてある商品を用意し、先に紹介することで、高い商品がアンカーとなり、次に見た商品を「安い」と思ってもらいやすくなります。このように、アンカー価格がうまく機能すると、消費者を一定の価格に誘導したり、消費者の支払意欲を上げることが可能になります。
アンカリング効果の注意点
アンカリング効果は上述のとおり、うまく活用すれば大きな成果を挙げることができますが、注意点も存在します。ここでは大きく分けて下記三つの注意点をご紹介します。
- 二重価格表示をする際には注意が必要
- 商品価格の相場が広く消費者に知れ渡っている場合は効果を発揮しづらい
- 極端な価格設定は逆効果
二重価格表示をする際には、注意が必要
アンカリング効果を狙って、通常価格と値引き後の価格を表示する二重価格表示をする場合、景品表示法に違反する可能性があります。景品表示法で二重価格表示として認められている価格は、「今までの価格やこれから設定する可能性のある価格」、「希望小売価格」「競合の販売価格」の三種類です。しかし、「これから設定する可能性がある価格」に根拠がなかったり、販売する環境が異なる競合の価格や、競合が昔販売していた価格などを表示したりする二重価格表示は、景品表示法に違反しています。
過去に大手ネットショッピングサービスや、Amazonなどもこの二重価格表示で行政処分を受けた事例があるため、景品表示法に関連するガイドラインを正確に理解し、違反した二重価格表示を行っていないか細心の注意を払う必要があります。
商品価格の相場が広く消費者に知れ渡っている場合は効果を発揮しない
アンカリング効果は様々な市場で取り入れられている手法ですが、効果を発揮できない市場も一定数存在します。それは、製品やサービスの相場が、消費者に広く知れ渡っている市場です。具体例を挙げるとお菓子や、飲料メーカーの製品は、ある程度の相場を消費者は理解しており、それより高い値段を提示しても、消費者はお得感を感じません。
極端な価格設定は逆効果
理想の価格に誘導することを意識しすぎて、極端に高い価格や極端に安い価格をアンカーとして設置してしまうと、消費者が不信感を感じ、うまく機能しない場合があるのです。具体的には、「高すぎる値段からここまで値下げされているのは、製品に何かしらの欠陥があるのではないか」「お得に見せたいために、通常価格を盛っているのではないか」といった不信感を感じられてしまう可能性があります。
なぜうまく機能しないかというと、価格レンジから外れてしまうからです。価格レンジとは、消費者が製品やサービスに対して、いくらまでなら払えるのかという支払い意欲の幅を指します。そのため、まずは消費者がその製品にどのくらい価値を感じており、どの価格までなら支払えるのかという価格レンジを正確に把握する必要があります。正確な価格レンジを把握することができれば、極端な価格設定を避けることができます。
適切なアンカー価格を設定するためには?
前述のとおり、適切なアンカー価格を設定するためには、価格レンジを把握することが重要です。その際に、価格レンジを把握するアプローチとして使われるのが、PSM分析という分析手法です。PSM分析(価格感応度分析)とは、バリューベースの価格設定を実現するために、顧客の支払意欲を調査するために使われる手法です。PSM分析を応用することで、商品・サービスがどの程度の価格なら最も顧客に受け入れられるかを把握できます。
売上や顧客数を最大化できる価格を試算できるのですが、顧客が高いと感じる価格や安いと感じる価格も可視化することが可能なため、適切なアンカー価格を設定することに役立てることが可能になります。PSM分析に関する詳しい記事は下記記事で紹介しています。
まとめ
今回は、「価格のアンカー効果」という初期値が顧客の購入の判断に影響する心理効果について紹介しました。使い方次第では価格戦略に大きく役立てることができますが、商品・サービスがどの程度の価格なら最も顧客に受け入れられるかという価格レンジをPSM分析で把握してから活用すると良いでしょう。
バリューベースの価格設定を実現したい事業者様は、お気軽に、プライシング スタジオにお問い合わせください。
プライシングスタジオが提供するホワイトペーパーも配布中! SaaS∕サブスク業界や⽇⽤消費財業界などの事業成⻑に向けた価格戦略の考え⽅と価格プロジェクトのフレームワークを収録した資料もダウンロードいただけます。
また、プライスハックでは、こうしたプライシングに関わるお役立ち情報やセミナー情報を発信しています。よりプライシングについて学ばれたい方は、下記リンクよりニュースレターをお受け取りください。
この執筆者のほかの記事