(この記事は、サブスクの専門家中野賀通社長に聞く。サブスクにすべきビジネスとサブスクの成功条件は?の解説記事です)
今回は、ベンチャーでの上場経験があり、現在はAI企業の代表をされている中野賀通社長にお話を伺いました。サブスクの専門家である中野社長に自身のキャリアとサブスクについてのぶっちゃけを聞いてみました!
目次
中野賀通社長の経歴
- 学校の先生を4年間務めた後に複数のベンチャー企業で活躍。
- 2015年にテモナ株式会社(以下テモナ)に入社し、2017年にマザーズ上場を経験。2019年には東証一部に鞍替え。
- 2020年の12月にテモナの取締役CTOを退任。
- テモナのAI研究開発期間であるオプスデータ株式会社をMBOという形で引き取り、現在はオプスデータの経営に従事。
どのようなサブスクの支援を行ってきた?
これまでどういったサブスクサービスを、どのくらいの期間支援されていたんですか?
ファーストキャリアでは株式会社エイジア(現 株式会社WOW WORLD)でマーケティングのコンサルをやっていました。そこではサブスクビジネスを含めた総合通販の国内案件をけっこう扱ってきました。テモナに移ってからはサブスクのプラットフォームを作りました。食品・化粧品の扱いが多く、現在では約1,700社が利用しています。
どういうビジネスがサブスクに向いている?
「おんぶ(O・N・B)」の3つの軸で考えられる商材が向いています!
おんぶ(O・N・B)とは次の3つのことを指します。
具体的には消耗品で、定期的に買うけど買いに行くことを忘れてしまうor買いに行くのが面倒くさいものが向いていると思います。最近だと完全食。あとはウォーターサーバーといった水関連や、学び放題みたいなデジタル商材も向いています。他にはairClosetがやっているような洋服をスタイリストが選んでくれるサービスだったり、子供の成長に合わせてベストな知育玩具を選んでくれるおもちゃのコンシェルジュも良いサービスだと思います。つまり、キュレーション系のサービスが良いと思います。
色々な市場で色々な商品があるから選ぶ労力がすごいかかる。そういうときにはサブスクがすごくいいと思います。
サブスクはぶっちゃけおすすめ?
すでに商材を持っている事業者さんはやったほうがいいと思います。
D2Cスタートアップっていう話になると、もはや当たり前の選択肢として入ってきますね。ただ業界の変化が過熱してきた分、色々な国からの規制とか迷惑防止条例とか法律も含めて勘案するべきことは多いです。法律関係含め市況の変化などの動向調査を行う必要はあります。
逆にそれさえできていれば大丈夫じゃないかと?
おっしゃるとおりですね!
サブスクは商いの根幹
サブスクは商いの根幹だと思います。サービスの価値を顧客が決め、サービスに満足してくれれば買い続ける。満足できなければやめるというだけなので。
サブスクは「サービスの価値を決めるのは顧客である」という当たり前の話をできるビジネスモデルであり、一極集中でお客さんを見れば良いというのが素晴らしい点だと思います。サブスクと言うと新しい概念に聞こえますが、昔からあるビジネスモデルであり本質は商いだと思います。例えば新聞配達や家賃もサブスクと捉えることができますし、定額支払いにしているものって昔からあって、それらも全部サブスクの一種と言えば一種かなと思います。
僕もこの「本来あるべき商いの姿である」みたいな話好きなんですよ。
なぜ今改めてサブスクが流行っているんだろうと考えると、様々なツールの発展でECがやりやすくなったことや、定額支払いのサービスに対するユーザーの認知度や親しみやすさの向上が関係しているのかと思います。特に、ユーザーの定期購入に対する慣れが大きいのかなと思います。
サブスクのプライシングについて
今度はプライシングスタジオさんに質問ですが、サブスクのプライシングってどうやっているんですか?
サブスクビジネスのプライシングは立ち上げ期とそうじゃない時期でけっこう変わってきます。立ち上げ期のプライシング観点は以下の3点です。
1.誰にどのお客さんに売っていくのか
2.その人に何を売るのか
3.その人お客さんはいくらまで払ってくれるのか
まず1.について。例えば、化粧品の場合1万円を超えるものと3千円のものだとお客さんがサービスに求めるものが変わってきます。3千円の化粧品が欲しい層と1万円の化粧品が欲しい層、どちらに対して売っていくのかをまず決めます。
次に2.について。その客層がどんな価値を欲しているのかをインタビューなどで訂正面から探っていって、ある程度ペルソナ像を設定します。
最後に3.について。そのペルソナに絞ってPSM分析をはじめとした支払い意欲調査を行います。様々なデータ分析結果を組合せていって、このお客さんだったらこの金額まで払ってくれるというのを特定します。例えば金額が5千円のときだったら何%のお客さん、3千円のときだったら何%のお客さんが買ってくれる。売上だったらこれくらいになるとか、LTVもこれぐらいになるというのを考えます。これらを踏まえて最終的に、ユーザー数を最大化していく価格を取るのか、最初から収益を上げていく価格にするのかを協議して価格に落とし込みます。
価格の驚き体験
コンサルをやっていた頃に、2,000円で売っていた化粧ブラシを8,000円に値上げしたらめちゃくちゃ売れたことがあって驚きました。これ面白いですよね!
2,000円が「安すぎて低品質と思われてしまう価格」になっていたってことですよね。2,000円だとこれで大丈夫かなと思われてしまっていたのが、8,000円にすることで品質安全だと感じてもらえた。しかもユーザーにとって高すぎない、お手頃な金額だったってことなんですよね。
機能的な価値は変わらないけど感情的な価値を付加できたのかなと思いました。安心安全を感じてくれたことはもちろん、「高いブラシを使っているから綺麗になれるに違いない」とユーザーがストーリーをくっつけて価値を見出してくれた。価格というバーを1つ変えるだけで、売れる売れないも変わってくるというのが衝撃的な体験でした。
実はプライシングスタジオも1年前に価格を10倍に引き上げているんですよ。
10倍に引き上げてから売れるようになりました。コンサルティングサービスなので数10万円でそれができてしまうと、「数10万円で価格のことを任せていいんだっけ」と不安に感じられてしまうことがありました。僕らも価格を上げて売れたという現体験がありますし、僕らのお客さんでもそういったケースがあるので、中野さんにすごく共感できます。経験したことない人だと価格を10倍にして売れるのかとか2,000円を8,000円にして売れるのかとかなると思うんですけど、これめちゃくちゃ本当にある事例です。
企業努力をしてコストを下げ続けるという考えもありますが、お客様の期待に合わせて価格を上げた方がフィットする場合もあるので、それは専門家に相談したほうがいいと思います!
ありがとうございます。是非ご相談ください!
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今回は、ベンチャーでの上場経験があり、現在はAI企業の代表をされている中野賀通社長にお話を伺いました。サブスクの専門家である中野社長に自身のキャリアとサブスクについてのぶっちゃけを聞いてみました!
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中野賀通社長の経歴
- 学校の先生を4年間務めた後に複数のベンチャー企業で活躍。
- 2015年にテモナ株式会社(以下テモナ)に入社し、2017年にマザーズ上場を経験。2019年には東証一部に鞍替え。
- 2020年の12月にテモナの取締役CTOを退任。
- テモナのAI研究開発期間であるオプスデータ株式会社をMBOという形で引き取り、現在はオプスデータの経営に従事。
どのようなサブスクの支援を行ってきた?
これまでどういったサブスクサービスを、どのくらいの期間支援されていたんですか?
ファーストキャリアでは株式会社エイジア(現 株式会社WOW WORLD)でマーケティングのコンサルをやっていました。そこではサブスクビジネスを含めた総合通販の国内案件をけっこう扱ってきました。テモナに移ってからはサブスクのプラットフォームを作りました。食品・化粧品の扱いが多く、現在では約1,700社が利用しています。
どういうビジネスがサブスクに向いている?
「おんぶ(O・N・B)」の3つの軸で考えられる商材が向いています!
おんぶ(O・N・B)とは次の3つのことを指します。
具体的には消耗品で、定期的に買うけど買いに行くことを忘れてしまうor買いに行くのが面倒くさいものが向いていると思います。最近だと完全食。あとはウォーターサーバーといった水関連や、学び放題みたいなデジタル商材も向いています。他にはairClosetがやっているような洋服をスタイリストが選んでくれるサービスだったり、子供の成長に合わせてベストな知育玩具を選んでくれるおもちゃのコンシェルジュも良いサービスだと思います。つまり、キュレーション系のサービスが良いと思います。
色々な市場で色々な商品があるから選ぶ労力がすごいかかる。そういうときにはサブスクがすごくいいと思います。
サブスクはぶっちゃけおすすめ?
すでに商材を持っている事業者さんはやったほうがいいと思います。
D2Cスタートアップっていう話になると、もはや当たり前の選択肢として入ってきますね。ただ業界の変化が過熱してきた分、色々な国からの規制とか迷惑防止条例とか法律も含めて勘案するべきことは多いです。法律関係含め市況の変化などの動向調査を行う必要はあります。
逆にそれさえできていれば大丈夫じゃないかと?
おっしゃるとおりですね!
サブスクは商いの根幹
サブスクは商いの根幹だと思います。サービスの価値を顧客が決め、サービスに満足してくれれば買い続ける。満足できなければやめるというだけなので。
サブスクは「サービスの価値を決めるのは顧客である」という当たり前の話をできるビジネスモデルであり、一極集中でお客さんを見れば良いというのが素晴らしい点だと思います。サブスクと言うと新しい概念に聞こえますが、昔からあるビジネスモデルであり本質は商いだと思います。例えば新聞配達や家賃もサブスクと捉えることができますし、定額支払いにしているものって昔からあって、それらも全部サブスクの一種と言えば一種かなと思います。
僕もこの「本来あるべき商いの姿である」みたいな話好きなんですよ。
なぜ今改めてサブスクが流行っているんだろうと考えると、様々なツールの発展でECがやりやすくなったことや、定額支払いのサービスに対するユーザーの認知度や親しみやすさの向上が関係しているのかと思います。特に、ユーザーの定期購入に対する慣れが大きいのかなと思います。
サブスクのプライシングについて
今度はプライシングスタジオさんに質問ですが、サブスクのプライシングってどうやっているんですか?
サブスクビジネスのプライシングは立ち上げ期とそうじゃない時期でけっこう変わってきます。立ち上げ期のプライシング観点は以下の3点です。
1.誰にどのお客さんに売っていくのか
2.その人に何を売るのか
3.その人お客さんはいくらまで払ってくれるのか
まず1.について。例えば、化粧品の場合1万円を超えるものと3千円のものだとお客さんがサービスに求めるものが変わってきます。3千円の化粧品が欲しい層と1万円の化粧品が欲しい層、どちらに対して売っていくのかをまず決めます。
次に2.について。その客層がどんな価値を欲しているのかをインタビューなどで訂正面から探っていって、ある程度ペルソナ像を設定します。
最後に3.について。そのペルソナに絞ってPSM分析をはじめとした支払い意欲調査を行います。様々なデータ分析結果を組合せていって、このお客さんだったらこの金額まで払ってくれるというのを特定します。例えば金額が5千円のときだったら何%のお客さん、3千円のときだったら何%のお客さんが買ってくれる。売上だったらこれくらいになるとか、LTVもこれぐらいになるというのを考えます。これらを踏まえて最終的に、ユーザー数を最大化していく価格を取るのか、最初から収益を上げていく価格にするのかを協議して価格に落とし込みます。
価格の驚き体験
コンサルをやっていた頃に、2,000円で売っていた化粧ブラシを8,000円に値上げしたらめちゃくちゃ売れたことがあって驚きました。これ面白いですよね!
2,000円が「安すぎて低品質と思われてしまう価格」になっていたってことですよね。2,000円だとこれで大丈夫かなと思われてしまっていたのが、8,000円にすることで品質安全だと感じてもらえた。しかもユーザーにとって高すぎない、お手頃な金額だったってことなんですよね。
機能的な価値は変わらないけど感情的な価値を付加できたのかなと思いました。安心安全を感じてくれたことはもちろん、「高いブラシを使っているから綺麗になれるに違いない」とユーザーがストーリーをくっつけて価値を見出してくれた。価格というバーを1つ変えるだけで、売れる売れないも変わってくるというのが衝撃的な体験でした。
実はプライシングスタジオも1年前に価格を10倍に引き上げているんですよ。
10倍に引き上げてから売れるようになりました。コンサルティングサービスなので数10万円でそれができてしまうと、「数10万円で価格のことを任せていいんだっけ」と不安に感じられてしまうことがありました。僕らも価格を上げて売れたという現体験がありますし、僕らのお客さんでもそういったケースがあるので、中野さんにすごく共感できます。経験したことない人だと価格を10倍にして売れるのかとか2,000円を8,000円にして売れるのかとかなると思うんですけど、これめちゃくちゃ本当にある事例です。
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ありがとうございます。是非ご相談ください!
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