SaaSの課金体系のうちの1つ、従量課金制について、メリットとデメリット、事例も交えながら解説いたします。
目次
従量課金制とは
従量課金制は、ユーザー数や使用時間などの利用した“量”に“従”って課金する、価格体系の1つです。顧客目線だと「使った分だけお金を支払う」仕組みといえます。
ユーザーの使用状況に応じて金額が確定し、請求されるため、金額に対する顧客の納得を得やすくなります。また、ユーザーの利用状況によっては、一定の金額で使い放題の場合と比べ、より多くの金額を請求できるため収益の最大化につながります。
超過従量課金
従量課金のシステムを部分的に取り入れる価格体系として、超過従量課金があげられます。
超過従量課金では、基本料金が設定されており、超過利用分に応じて料金が追加されます。そのため、特定のプランの制限から超過利用した場合にプランをアップグレードするのではなく、超過した分に従量課金をかけるモデルだといえます。
ただの従量課金では、多くの顧客が著しく利用を控えた場合、企業の収益が不安定になるリスクを孕んでいますが、超過従量課金を採用することで、最低限の収益は保証され、収益の拡大も見込めることから、非常に使い勝手がいいモデルです。
従量課金のメリット
従量課金制導入のメリットは次の2点あります。
金額に対する顧客の納得を得やすい
ユーザーが使えば使った分に応じて利用金額が確定されるため、顧客の納得を得やすくなります。また、機能制限がある課金モデルと異なり、全機能をとりあえず利用できたり、単価が上がる要因を事前に把握できているため、顧客にとっては非常にわかりやすいモデルとなります。
他にも、「サービスの価値は半信半疑なので、まずは安く使ってみたい」と考えている顧客は、利用頻度を抑えつつ低単価で、「サービスに対して、非常に価値を感じているためたくさん使いたい」と考えている顧客は、利用頻度が高く高単価になることから、購買のハードルを下げつつ、収益を最大化することが可能になります。
解約を回避できる場合がある
サービスによっては、利用する期間が一定期間に集中し、月ごとに利用量が大きく異なる場合があります。導入業績の業績によってもその傾向はあるでしょう。
そのようなサービスは、利用量が少ない期間にコストカットの対象と判断され、解約されてしまう可能性があります。しかし、従量課金制を採用していれば、利用量の少ない期間は低単価になるため、解約されにくくなります。
従量課金のデメリット
従量課金は、以下のようなデメリットも合わせ持ちます。
利用を控えられる
利用量やユーザー数が多ければ多いほど料金が高くなる従量課金制では、顧客が単価を抑えるために利用を控えてしまう可能性があります。そうなると、本来なら解決できた課題を解決できずに、顧客の満足度が低下してしまうかもしれません。
前払いしてもらえない
サブスクリプションビジネスでは、欠点である「顧客獲得コストの回収に時間がかかる」ことを解決するために、年間一括前払いなど事前に決裁を促す工夫がなされています。
収益予測ができない
多くのSaaSビジネスにおいて、サブスクリプションによる収益予測が容易な点は、非常に大きな強みとなりますが、単価が確定できない従量課金制ではそれができません。
収益の予測がしっかりできていればいるほど、顧客獲得などに投資できるため、中長期的に大きな差が生まれる可能性も孕んでしまいます。
従量課金制の種類
従量課金制は、主に「使用量による課金」「ユーザー数による課金」の2つがあげられます。
使用量課金
使用量課金とは、特定の機能を利用した回数や保存できるデータの量、アクセスできるストレージの量など、サービスの何かを利用・アクセスした量に応じて課金される仕組みです。
・使用量課金の事例
電子契約サービス「WAN-Sign」があげられます。このサービスは企業間の契約を行うごとに料金が発生する使用量課金となっています。
参考:「WAN-Sign」
ユーザー数課金
ユーザー数課金とは、企業内でアカウントを持つユーザーの数に応じて価格が上がるモデルです。難点として、企業がなるべく登録ユーザー数を増やさないようにする結果、サービス満足度が低下してしまうことがあげられます。
この問題点を解決できる、ユーザー数課金を応用した「アクティブユーザー課金」モデルも存在しています。
このモデルでは、アカウント自体は好きな数登録できて、アクティブユーザーの数に応じて請求を行います。これにより、気軽に多くの社員にサービスを導入してもらい、サービス満足度の低下を防ぐことが可能です。
・ユーザー数課金の事例
ユーザ数課金を行っているSaaSサービスとして、株式会社ディー・エヌ・エーが運営するRPA(コンピューター上の業務用ロボット)サービス「Coopel」があげられます。1アカウントあたり5,400円で利用可能で、気軽に導入できることをサービスの強みにしており、価格の高さからRPAサービスを利用していなかった企業にもアプローチすることを可能にしています。
まとめ
従量課金制は、ユーザーの使用状況に応じて金額が確定し、請求されるため、金額に対する顧客の納得を得やすい価格体系です。
しかし、利用を抑制したり、キャッシュフローの鈍化、収益予測の難化など、多くのリスクを孕んでいます。
超過従量課金など応用的なモデルを組み合わせたりなどと様々な工夫をすることで、メリットを最大限活かすことが望ましいでしょう。
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ユーザーの使用状況に応じて金額が確定し、請求されるため、金額に対する顧客の納得を得やすくなります。また、ユーザーの利用状況によっては、一定の金額で使い放題の場合と比べ、より多くの金額を請求できるため収益の最大化につながります。
超過従量課金
従量課金のシステムを部分的に取り入れる価格体系として、超過従量課金があげられます。
超過従量課金では、基本料金が設定されており、超過利用分に応じて料金が追加されます。そのため、特定のプランの制限から超過利用した場合にプランをアップグレードするのではなく、超過した分に従量課金をかけるモデルだといえます。
ただの従量課金では、多くの顧客が著しく利用を控えた場合、企業の収益が不安定になるリスクを孕んでいますが、超過従量課金を採用することで、最低限の収益は保証され、収益の拡大も見込めることから、非常に使い勝手がいいモデルです。
従量課金のメリット
従量課金制導入のメリットは次の2点あります。
金額に対する顧客の納得を得やすい
ユーザーが使えば使った分に応じて利用金額が確定されるため、顧客の納得を得やすくなります。また、機能制限がある課金モデルと異なり、全機能をとりあえず利用できたり、単価が上がる要因を事前に把握できているため、顧客にとっては非常にわかりやすいモデルとなります。
他にも、「サービスの価値は半信半疑なので、まずは安く使ってみたい」と考えている顧客は、利用頻度を抑えつつ低単価で、「サービスに対して、非常に価値を感じているためたくさん使いたい」と考えている顧客は、利用頻度が高く高単価になることから、購買のハードルを下げつつ、収益を最大化することが可能になります。
解約を回避できる場合がある
サービスによっては、利用する期間が一定期間に集中し、月ごとに利用量が大きく異なる場合があります。導入業績の業績によってもその傾向はあるでしょう。
そのようなサービスは、利用量が少ない期間にコストカットの対象と判断され、解約されてしまう可能性があります。しかし、従量課金制を採用していれば、利用量の少ない期間は低単価になるため、解約されにくくなります。
従量課金のデメリット
従量課金は、以下のようなデメリットも合わせ持ちます。
利用を控えられる
利用量やユーザー数が多ければ多いほど料金が高くなる従量課金制では、顧客が単価を抑えるために利用を控えてしまう可能性があります。そうなると、本来なら解決できた課題を解決できずに、顧客の満足度が低下してしまうかもしれません。
前払いしてもらえない
サブスクリプションビジネスでは、欠点である「顧客獲得コストの回収に時間がかかる」ことを解決するために、年間一括前払いなど事前に決裁を促す工夫がなされています。
収益予測ができない
多くのSaaSビジネスにおいて、サブスクリプションによる収益予測が容易な点は、非常に大きな強みとなりますが、単価が確定できない従量課金制ではそれができません。
収益の予測がしっかりできていればいるほど、顧客獲得などに投資できるため、中長期的に大きな差が生まれる可能性も孕んでしまいます。
従量課金制の種類
従量課金制は、主に「使用量による課金」「ユーザー数による課金」の2つがあげられます。
使用量課金
使用量課金とは、特定の機能を利用した回数や保存できるデータの量、アクセスできるストレージの量など、サービスの何かを利用・アクセスした量に応じて課金される仕組みです。
・使用量課金の事例
電子契約サービス「WAN-Sign」があげられます。このサービスは企業間の契約を行うごとに料金が発生する使用量課金となっています。
参考:「WAN-Sign」
ユーザー数課金
ユーザー数課金とは、企業内でアカウントを持つユーザーの数に応じて価格が上がるモデルです。難点として、企業がなるべく登録ユーザー数を増やさないようにする結果、サービス満足度が低下してしまうことがあげられます。
この問題点を解決できる、ユーザー数課金を応用した「アクティブユーザー課金」モデルも存在しています。
このモデルでは、アカウント自体は好きな数登録できて、アクティブユーザーの数に応じて請求を行います。これにより、気軽に多くの社員にサービスを導入してもらい、サービス満足度の低下を防ぐことが可能です。
・ユーザー数課金の事例
ユーザ数課金を行っているSaaSサービスとして、株式会社ディー・エヌ・エーが運営するRPA(コンピューター上の業務用ロボット)サービス「Coopel」があげられます。1アカウントあたり5,400円で利用可能で、気軽に導入できることをサービスの強みにしており、価格の高さからRPAサービスを利用していなかった企業にもアプローチすることを可能にしています。
まとめ
従量課金制は、ユーザーの使用状況に応じて金額が確定し、請求されるため、金額に対する顧客の納得を得やすい価格体系です。
しかし、利用を抑制したり、キャッシュフローの鈍化、収益予測の難化など、多くのリスクを孕んでいます。
超過従量課金など応用的なモデルを組み合わせたりなどと様々な工夫をすることで、メリットを最大限活かすことが望ましいでしょう。
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