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2023.07.31(更新日:2024.03.04)

値上げを成功させる法則|値上げを成功に導く顧客へのコミュニケーションの取り方

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その他・価格業界情報
#価格戦略
#値上げ

(この記事は、『値上げを成功させる法則|失敗しない値上げ金額の決め方』の続きの記事です。)

全部で3部構成になっており、

第1部では、「値上げを成功させる法則」として、下記2つの要因を解説し、

  1. 顧客の許容⾦額を超えないこと
  2. 顧客と適切なコミュニケーションを取ること

第2部では、上記2つのうち「①顧客の許容⾦額を超えないこと」について、

顧客の許容を超えない金額の求め方と有効な分析方法、また適切な価格に設定することで値上げに成功した企業事例について解説いたしました。

本記事では、第3部として「②顧客と適切なコミュニケーションを取ること」について、

値上げをした際にはどんなフローで告知をすべきなのかや、どうやって伝えるべきかについて、また適切なコミュニケーションを行うことで値上げに成功した企業事例について解説いたします。

ぜひ最後までご一読ください。

前回の記事を読まれたい方は、下記よりご覧ください。

<値上げを成功させる法則の記事一覧>

→「成功の法則①:顧客の許容⾦額を超えないこと」を解説します。

顧客と適切なコミュニケーションを取る方法

先述のとおり「値上げを成功させる法則」として、「顧客と適切なコミュニケーションを取ること」と述べました。

コミュニケーションが不十分な「値上げ」は、顧客の反感を買うことがあり、この値上げ時のコミュニケーションはとても重要なポイントです。

顧客と適切なコミュニケーションを取る方法として、下記2つの方法をご紹介いたします。

  • 告知から一定の期間を設けた上で値上げを実施すること」
  • 「値上げだけではなくユーザーにとっていい情報を組み合わせて伝えること」

下記にて詳しく解説していきます。

コミュニケーション方法①「告知から一定の期間を設けた上で値上げを実施すること」

値上げを検討している場合には、三か月、半年、一年など、一定の周知期間を設けた上での実施と、早めの告知が有効です。

ごくまれに告知当⽇や翌⽇に値上げを実施する企業がありますが、かなりの確率で「炎上」しています。 

プライシングの業界では、「内的参照価格」というものが存在しています。

「内的参照価格」とは、消費者が商品を購入する際の基準にする価格「参照価格」のうち、過去の経験などから形成された消費者の記憶の中の価格のことを指し、その人が妥当と考える「値ごろ感」に近い言葉です。

例えば、自動販売機の500mlのペットボトルの価格は?と聞かれたら、なんとなく150円~160円くらいに思われる方は多いのではないでしょうか?これが過去の経験から形成された「内的参照価格」なのです。

内的参照価格は更新されていきます。「値上げ」を⼀定の周知期間を設け、早めの告知を実施することにより、顧客が値上げ後の価格に慣れていき、慣れることで顧客の「内的参照価格」が値上げ後の価格に更新されていきます。すると、値上げを実施する頃には「値ごろ感をいきなり大きく超えた」と感じるのを緩和することができ、反感を買いにくい「値上げ」を実施することができるのです。

加えて値上げの際には、既存顧客にも注意が必要です。同じサービスで、今までの価格よりも高くなることに既存顧客は敏感なので、工夫をしないと既存顧客の反感を買う可能性があります。そうならないための工夫として既存顧客に対する価格変更に際しては、過渡期を設けることや既存顧客に対しては価格を据え置き、新規顧客にだけ価格改定を実施したり、 既存顧客の価格改定は、⼀定期間を設けてから実施するなどの工夫があります。

コミュニケーション方法②「値上げだけではなくユーザーにとっていい情報を組み合わせて伝えること」

単純に「値上げ」の情報だけでは、顧客から反感を買う可能性があります。そのため、値上げに関するネガティブな情報だけを発信するのではなく、値上げに伴う製品・サービスの付加価値も発信することが重要です。

具体的には、「値上げによって得られた利益をサービス改善や新商品開発に投資することで顧客価値を向上させる」や「値上げする商品だけでなく、同時に値下げする商品をつくる」などが、値上げに伴う付加価値になるでしょう。

実例として、東京ディズニーリゾートやスターバックスでは、値上げを実施する一方で、混雑緩和の実現や値下げの商品を作ったりなど、顧客体験価値を向上させ、それを顧客にうまく伝えることができているため、値上げに成功しています。これらの良い情報を「値上げ」の情報と組み合わせて、発信することで、顧客の理解が得られやすいです。

適切なコミュニケーションを取り、値上げに成功した事例 

ここで、顧客と適切なコミュニケーションを取ることで、値上げに成功している企業の事例2つを紹介します。

企業事例①Evernote(エバーノート)

エバーノートはノートを取るように情報を蓄積する、パソコンやスマートフォン向けの個人用ドキュメント管理システムとも言えるサービスです。今回紹介するエバーノートの値上げは2016年6月29日に実施されました。

このときの値上げのPRは、「次世代のEvernoteを作るために」というテーマのメッセージがあり、値上げをする意図と、良いサービスにするためにしっかりサービスに投資をしていくことを宣言しているのがポイントです。単に自社の利益を追求するのではなく、顧客のためにサービス開発に投資することをアピールすることで、顧客に納得してもらっているのです。

一般的には多くの企業が値上げの理由として外部要因(ほとんどがコストの増加)を挙げます。しかし、本来顧客にとってはコストは関係ありません。顧客にとって大事なことは、そのサービスが良いものかどうか、またさらに良いものになっていくのかどうかです。エバーノートはあえて、言い訳をせず、より良いサービスにするための投資をしていくという顧客とWin-Winになる方針を掲げ、それに向けた協力を仰いでいます。

企業事例②ローソンの「からあげクン」

ローソンのからあげクンの値上げの告知は、36周年の2022年4月15日に行われました(価格改定自体は同年5月31日)。SNS、自社ニュースリリース、ファンクラブサイトにおいて異なる形式での告知を実施し、それぞれの告知には次の3つの特徴が見られました。

  • 発売36年を伝える
  • 感謝の気持ちを伝える
  • 増量キャンペーンを伝える

まず「発売36年を伝える」ですが、単なる値上げに留まらず、自社が行ってきた歴史(過去)を伝えることで、消費者に対して今まで多くの価値を生み出してきた事実を伝え、価格変更後(未来)も「よい商品を作りつづけることを消費者に想起させる」ことができていた可能性があります。

また「感謝の気持ちを伝える」に関しても、こういった値上げのリリースの際には過度な謝罪を行う企業が一般的ですが、今回のように、まず今までの感謝の気持ち(現在)を伝えるリリースは、「今後も応援しようという気持ちを強める」ことができている可能性があります。

そして、「増量キャンペーンを伝える」に関しても、1個増量キャンペーンを実施し、同キャンペーン(良い情報)を値上げのニュースと同時に発信することで、消費者にとって損をする情報だけでなく、得をする情報を一緒に伝えています。これによりネガティブな気持ちが緩和されているのではないかと考えます。

 上記を見ると、ネガティブな情報だけでなく、過去・現在・未来に対して良い情報を組み合わせて伝えることが非常に重要だということが分かります。これは値上げの際の告知に使える成功パターンの一つと言えると考えられます。

コミュニケーションにおいて気をつけるべき点とは

多くはBtoBのサービスに限った話ですが、売り上げのほとんどが販売代理店経由で成り立っている企業ほど、価格変更を販売代理店が許容してくれないという壁に直面します。

販売代理店が価格変更を許容しない理由のほとんどは、価格を変える(主に値上げ)と

  • 「売り上げが下がり、自社(販売代理店)のフィーが下がるリスクがあること(ほとんどの場合が、販売実績による成功報酬型のため)」
  • 「価格変更に伴うオペレーション変更の工数をわずわしく思っている」

のどちらかで、前者のケースが特に多いです。

 そのため、価格改定により「売り上げが上がり、むしろフィーが上がる」という定量的なエビデンスを提示したり、Win-Winとなるようなより良い契約の座組みを提案するのが得策です。

いずれにせよ、販売代理店がネックとなり価格変更ができないのは、事業として大きな機会損失のため、早めに解消したいポイントです。前もって価格変更を想定した契約にしておくのも手でしょう。

 続いて規約周りです。信じられないかもしれませんが、利用規約に価格変更を行わないこと(指定した期間や永年といったケースがある)を意味する内容が記載しており、価格改定を実施できないケースを数多く見ます。本記事は法律の専門書ではないため、細かい言及は避けますが、利用規約が価格変更可能な内容になっているか、価格変更を検討している・いないにかかわらず確認しておくのがいいでしょう。利用規約に「価格変更を行わない」ことを意味する記載がある場合は、顧問弁護士や法務部門と連携し、対策を講じる必要があるでしょう。また、代理店契約にも同様の記載がある場合があるため、そちらも併せて確認することをお勧めします。

 特にインターネットを介したサービスにいえる話ですが、価格が変わると請求する対象や金額、タイミングや、計測するべき情報(従量課金に変更する場合など)が変わります。過去に支援した企業のある大規模サービスでは、変更までに半年から数年の期間を要するケースもあったため、あらかじめ開発チームの工数を見積もり、リソースを確保しておくのがいいでしょう。また、開発の論点が漏れたまま価格変更日を決めてしまい、スケジュールが遅延する事例も見たことがあります。抜けがちな論点ですが、事前に確認することをお勧めします。

まとめ

今回は「顧客との適切なコミュニケーションの取り方」について解説しました。

スムーズな値上げを成功させるためには、適切なプロセスに基づく価格設定を行ったうえで、顧客と適切なコミュニケーションを取ることが重要です。

バリューベースの価格設定を実現したい事業者様や、値上げ時のコミュニケーションにお悩みの経営者様は、お気軽にプライシング スタジオにお問い合わせください。

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Yoshihiro Takahashi

高橋 嘉尋

プライシングスタジオ株式会社

代表取締役CEO

プライシングスタジオ株式会社代表取締役 CEO。2019年、慶應義塾大学総合政策学部在学中に価格1%が企業の営業利益を約20%の改善につながるということを知り、その影響力に魅力を感じ、当社を設立。プライシングスタジオは設立以来、30以上の業界、100以上のサービスの値付けを支援している。著書に「値決めの教科書 勘と経験に頼らないプライシングの新常識」(日経BP)。「日経トップリーダー・ビジネス」にて「値決めの科学」、「ダイヤモンドオンライン」にて「価格戦略のプロが見た「あの値付け」」を連載中。「日経COMEMO」キーオピニオンリーダー。そのほか、テレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」、ABEMA「ABEMA Prime」、NewsPicks「メイクマネー」など多数メディアに出演。2023年Forbesによる「アジアを代表する30才未満の30人」に部門で選出される。

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  1. 顧客の許容⾦額を超えないこと
  2. 顧客と適切なコミュニケーションを取ること

第2部では、上記2つのうち「①顧客の許容⾦額を超えないこと」について、

顧客の許容を超えない金額の求め方と有効な分析方法、また適切な価格に設定することで値上げに成功した企業事例について解説いたしました。

本記事では、第3部として「②顧客と適切なコミュニケーションを取ること」について、

値上げをした際にはどんなフローで告知をすべきなのかや、どうやって伝えるべきかについて、また適切なコミュニケーションを行うことで値上げに成功した企業事例について解説いたします。

ぜひ最後までご一読ください。

前回の記事を読まれたい方は、下記よりご覧ください。

<値上げを成功させる法則の記事一覧>

→「成功の法則①:顧客の許容⾦額を超えないこと」を解説します。

顧客と適切なコミュニケーションを取る方法

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コミュニケーションが不十分な「値上げ」は、顧客の反感を買うことがあり、この値上げ時のコミュニケーションはとても重要なポイントです。

顧客と適切なコミュニケーションを取る方法として、下記2つの方法をご紹介いたします。

  • 告知から一定の期間を設けた上で値上げを実施すること」
  • 「値上げだけではなくユーザーにとっていい情報を組み合わせて伝えること」

下記にて詳しく解説していきます。

コミュニケーション方法①「告知から一定の期間を設けた上で値上げを実施すること」

値上げを検討している場合には、三か月、半年、一年など、一定の周知期間を設けた上での実施と、早めの告知が有効です。

ごくまれに告知当⽇や翌⽇に値上げを実施する企業がありますが、かなりの確率で「炎上」しています。 

プライシングの業界では、「内的参照価格」というものが存在しています。

「内的参照価格」とは、消費者が商品を購入する際の基準にする価格「参照価格」のうち、過去の経験などから形成された消費者の記憶の中の価格のことを指し、その人が妥当と考える「値ごろ感」に近い言葉です。

例えば、自動販売機の500mlのペットボトルの価格は?と聞かれたら、なんとなく150円~160円くらいに思われる方は多いのではないでしょうか?これが過去の経験から形成された「内的参照価格」なのです。

内的参照価格は更新されていきます。「値上げ」を⼀定の周知期間を設け、早めの告知を実施することにより、顧客が値上げ後の価格に慣れていき、慣れることで顧客の「内的参照価格」が値上げ後の価格に更新されていきます。すると、値上げを実施する頃には「値ごろ感をいきなり大きく超えた」と感じるのを緩和することができ、反感を買いにくい「値上げ」を実施することができるのです。

加えて値上げの際には、既存顧客にも注意が必要です。同じサービスで、今までの価格よりも高くなることに既存顧客は敏感なので、工夫をしないと既存顧客の反感を買う可能性があります。そうならないための工夫として既存顧客に対する価格変更に際しては、過渡期を設けることや既存顧客に対しては価格を据え置き、新規顧客にだけ価格改定を実施したり、 既存顧客の価格改定は、⼀定期間を設けてから実施するなどの工夫があります。

コミュニケーション方法②「値上げだけではなくユーザーにとっていい情報を組み合わせて伝えること」

単純に「値上げ」の情報だけでは、顧客から反感を買う可能性があります。そのため、値上げに関するネガティブな情報だけを発信するのではなく、値上げに伴う製品・サービスの付加価値も発信することが重要です。

具体的には、「値上げによって得られた利益をサービス改善や新商品開発に投資することで顧客価値を向上させる」や「値上げする商品だけでなく、同時に値下げする商品をつくる」などが、値上げに伴う付加価値になるでしょう。

実例として、東京ディズニーリゾートやスターバックスでは、値上げを実施する一方で、混雑緩和の実現や値下げの商品を作ったりなど、顧客体験価値を向上させ、それを顧客にうまく伝えることができているため、値上げに成功しています。これらの良い情報を「値上げ」の情報と組み合わせて、発信することで、顧客の理解が得られやすいです。

適切なコミュニケーションを取り、値上げに成功した事例 

ここで、顧客と適切なコミュニケーションを取ることで、値上げに成功している企業の事例2つを紹介します。

企業事例①Evernote(エバーノート)

エバーノートはノートを取るように情報を蓄積する、パソコンやスマートフォン向けの個人用ドキュメント管理システムとも言えるサービスです。今回紹介するエバーノートの値上げは2016年6月29日に実施されました。

このときの値上げのPRは、「次世代のEvernoteを作るために」というテーマのメッセージがあり、値上げをする意図と、良いサービスにするためにしっかりサービスに投資をしていくことを宣言しているのがポイントです。単に自社の利益を追求するのではなく、顧客のためにサービス開発に投資することをアピールすることで、顧客に納得してもらっているのです。

一般的には多くの企業が値上げの理由として外部要因(ほとんどがコストの増加)を挙げます。しかし、本来顧客にとってはコストは関係ありません。顧客にとって大事なことは、そのサービスが良いものかどうか、またさらに良いものになっていくのかどうかです。エバーノートはあえて、言い訳をせず、より良いサービスにするための投資をしていくという顧客とWin-Winになる方針を掲げ、それに向けた協力を仰いでいます。

企業事例②ローソンの「からあげクン」

ローソンのからあげクンの値上げの告知は、36周年の2022年4月15日に行われました(価格改定自体は同年5月31日)。SNS、自社ニュースリリース、ファンクラブサイトにおいて異なる形式での告知を実施し、それぞれの告知には次の3つの特徴が見られました。

  • 発売36年を伝える
  • 感謝の気持ちを伝える
  • 増量キャンペーンを伝える

まず「発売36年を伝える」ですが、単なる値上げに留まらず、自社が行ってきた歴史(過去)を伝えることで、消費者に対して今まで多くの価値を生み出してきた事実を伝え、価格変更後(未来)も「よい商品を作りつづけることを消費者に想起させる」ことができていた可能性があります。

また「感謝の気持ちを伝える」に関しても、こういった値上げのリリースの際には過度な謝罪を行う企業が一般的ですが、今回のように、まず今までの感謝の気持ち(現在)を伝えるリリースは、「今後も応援しようという気持ちを強める」ことができている可能性があります。

そして、「増量キャンペーンを伝える」に関しても、1個増量キャンペーンを実施し、同キャンペーン(良い情報)を値上げのニュースと同時に発信することで、消費者にとって損をする情報だけでなく、得をする情報を一緒に伝えています。これによりネガティブな気持ちが緩和されているのではないかと考えます。

 上記を見ると、ネガティブな情報だけでなく、過去・現在・未来に対して良い情報を組み合わせて伝えることが非常に重要だということが分かります。これは値上げの際の告知に使える成功パターンの一つと言えると考えられます。

コミュニケーションにおいて気をつけるべき点とは

多くはBtoBのサービスに限った話ですが、売り上げのほとんどが販売代理店経由で成り立っている企業ほど、価格変更を販売代理店が許容してくれないという壁に直面します。

販売代理店が価格変更を許容しない理由のほとんどは、価格を変える(主に値上げ)と

  • 「売り上げが下がり、自社(販売代理店)のフィーが下がるリスクがあること(ほとんどの場合が、販売実績による成功報酬型のため)」
  • 「価格変更に伴うオペレーション変更の工数をわずわしく思っている」

のどちらかで、前者のケースが特に多いです。

 そのため、価格改定により「売り上げが上がり、むしろフィーが上がる」という定量的なエビデンスを提示したり、Win-Winとなるようなより良い契約の座組みを提案するのが得策です。

いずれにせよ、販売代理店がネックとなり価格変更ができないのは、事業として大きな機会損失のため、早めに解消したいポイントです。前もって価格変更を想定した契約にしておくのも手でしょう。

 続いて規約周りです。信じられないかもしれませんが、利用規約に価格変更を行わないこと(指定した期間や永年といったケースがある)を意味する内容が記載しており、価格改定を実施できないケースを数多く見ます。本記事は法律の専門書ではないため、細かい言及は避けますが、利用規約が価格変更可能な内容になっているか、価格変更を検討している・いないにかかわらず確認しておくのがいいでしょう。利用規約に「価格変更を行わない」ことを意味する記載がある場合は、顧問弁護士や法務部門と連携し、対策を講じる必要があるでしょう。また、代理店契約にも同様の記載がある場合があるため、そちらも併せて確認することをお勧めします。

 特にインターネットを介したサービスにいえる話ですが、価格が変わると請求する対象や金額、タイミングや、計測するべき情報(従量課金に変更する場合など)が変わります。過去に支援した企業のある大規模サービスでは、変更までに半年から数年の期間を要するケースもあったため、あらかじめ開発チームの工数を見積もり、リソースを確保しておくのがいいでしょう。また、開発の論点が漏れたまま価格変更日を決めてしまい、スケジュールが遅延する事例も見たことがあります。抜けがちな論点ですが、事前に確認することをお勧めします。

まとめ

今回は「顧客との適切なコミュニケーションの取り方」について解説しました。

スムーズな値上げを成功させるためには、適切なプロセスに基づく価格設定を行ったうえで、顧客と適切なコミュニケーションを取ることが重要です。

バリューベースの価格設定を実現したい事業者様や、値上げ時のコミュニケーションにお悩みの経営者様は、お気軽にプライシング スタジオにお問い合わせください。

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Yoshihiro Takahashi

高橋 嘉尋

プライシングスタジオ株式会社

代表取締役CEO

プライシングスタジオ株式会社代表取締役 CEO。2019年、慶應義塾大学総合政策学部在学中に価格1%が企業の営業利益を約20%の改善につながるということを知り、その影響力に魅力を感じ、当社を設立。プライシングスタジオは設立以来、30以上の業界、100以上のサービスの値付けを支援している。著書に「値決めの教科書 勘と経験に頼らないプライシングの新常識」(日経BP)。「日経トップリーダー・ビジネス」にて「値決めの科学」、「ダイヤモンドオンライン」にて「価格戦略のプロが見た「あの値付け」」を連載中。「日経COMEMO」キーオピニオンリーダー。そのほか、テレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」、ABEMA「ABEMA Prime」、NewsPicks「メイクマネー」など多数メディアに出演。2023年Forbesによる「アジアを代表する30才未満の30人」に部門で選出される。

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