「プロスペクト理論とは? 」
「プロスペクト理論の⾝近な例とは?」
「プロスペクト理論はビジネスにどう活⽤できる?」
このような悩みや疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか?そこで今回は、プロスペクト理論の解説から身近な事例や、ビジネスにどう活用するのかまで解説します。
この記事は、以下のような方におすすめの記事です。
- プロスペクト理論について知りたい方
- プロスペクト理論をビジネスで活用したい方
プロスペクト理論とは
プロスペクト理論とは、利益や損失に関わる意思決定のメカニズムをモデル化したもので、KahnemanとTverskyによって1979年に提唱された理論です。この理論から分かることは、等しい量の利益と損失があった場合、損失によって感じる痛みの方が利益によって感じる幸福より大きいということです。
人間はあらゆる場面で、利益を優先するよりも、損失を回避する傾向にあるのです。この考え方は、様々なビジネスに活用されています。ここで、実際にプロスペクト理論が活用されている事例を3つほどご紹介します。
プロスペクト理論が関わっている身近な例
事例①ZOZOTOWN
ZOZOTOWNのサイトでは割引を行う時、値引きされた後の価格だけでなく、元々の価格と割引額を表示しています。これはムーンプライスと呼ばれることもあり、実際に値引きをする前提で、売る値段を想定していても、あえて元々の価格を見せることで、顧客は得をした気分になるという心理が働きます。しかしこの手法は大袈裟な価格を設定しすぎると、表示価格での信憑性を失うので、注意が必要です。
事例②クレジットカード
顧客は現金で支払うよりクレジットカードで支払うことを好む傾向にあります。その要因は、プロスペクト理論が関係しており、カード払いは現金払いと比べて、手元からお金が離れることによって生まれる負の効用を感じにくいからです。
カード払いの場合、署名やパスワードを打ち込むだけで決済が完了します。しかし現金払いの場合、財布の中のお金をレジの担当者に渡して、レジに収納される様子を見て初めて決済が完了します。つまり、カード払いは現金払いより、支払いをしているという「感覚」が薄いのです。そのため同じ金額でも、現金払いの方がお金を支払うことによって生じる負の効用は大きく、顧客はクレジットカードで支払いをしたくなるのです。
事例➂キャッシュバック
様々な企業が実施しているキャッシュバック制度も、実はプロスペクト理論が関係しています。キャッシュバックとは商品を購入してもらった後に一定の額を現金やギフトカード、ポイントなどで返すというものです。例えばPanasonicでは、2021年4月23日(金)からテレビやブルーレイレコーダー購入で最大9万円をキャッシュバックするキャンペーンを行っています。
何故最初から値引きをしないで、わざわざキャッシュバックをするのでしょうか。
本来、商品を購入するという動作は、商品を所持、消費する正の効用とお金を支払うという負の効用両方が、釣り合っているときに発生します。
しかしキャッシュバックという仕組みを使うと、この一連のプロセスが終わった後にお金を少し返すので、追加で正の効用が生まれることになります。そのため、顧客の満足度はあらかじめ値引きをしている時より上がるのです。
プロスペクト理論のビジネスの活⽤にかかわる心理作用
プロスペクト理論をビジネスで活用するために、まずは、理論に影響している心理作用を理解する必要があります。プロスペクト理論には、大きく分けて下記3つの人間の心理作用が影響しています。
- 「損失回避性」
- 「参照点依存性」
- 「感応度逓減性」
それぞれについて解説します。
損失回避性
損失回避性とは、「手に入れること」よりも、「損をする」こと を回避する⽅を選ぶ⼼理作⽤のことです。 この心理作用を踏まえると、「利益が出る」と伝えるよりも「無駄をなくせる、損をしない」と伝えた方が、損失回避性に訴えかけることができます。
参照点依存性
参照点依存性とは、価値を「絶対的ではなく、相対的」に判断する⼼理作⽤のことです。
これは、前述のZOZOTOWNの事例でも活用されていた心理作用で、元値となる「参照点」から割引されていると、得をしたと思う心理作用から、正の効用を感じる作用で、実際に値引きをする前提で、売る値段を想定していても、あえて元々の価格を見せることで、顧客は得をした気分になるのです。
感応度逓減(ていげん)性
感応度逓減(ていげん)性とは、同じ損失額でも、⺟数が⼤きくなるほど鈍感になるという⼼理作⽤のことです。 例えば、1,000円で買った商品が後⽇700円で売られていた場合と、10万円で買った商品が後⽇9万9,700円で売られていた場合とでは、同じ300円の損失でも、⺟数が⼩さい1,000円で買った場合の⽅が、心理的負担は大きいのです。
プロスペクト理論を活用したマーケティング施策
それぞれの心理作用を理解したうえで、次にどのようにビジネスに活用するのかについて、具体的に下記マーケティング施策をご紹介します。
- 値上げを⾏う際には段階的に実施
- 商品にランクをつけて販売する(松・竹・梅や、特上・上・並など)
- ポイント制を導入する
- 無料期間や割引キャンペーンを導入する
- 販売期間や人数を「限定」する
- 返⾦保証や交換・修理などの補償対応を実施
値上げを⾏う際には段階的に実施
値上げを段階的に実施することは、参照点依存性の心理作用が関わっています。値上げを実施する前の価格が、参照点になるため、値上げを一度で行うよりも、段階的に行なうことで、参考にする価格を更新することができるので、一回一回の値上げのインパクトが少なくなります。しかし、複数回値上げをすると顧客から反感を買う可能性があるので、注意が必要です。
商品にランクをつけて販売する(松・竹・梅や、特上・上・並など)
「松・竹・梅」や、「特上・上・並」など商品にランクをつけて販売する施策は、参照点依存性と損失回避性が関わっています。参照点依存性の心理作用から、それぞれのランクを「高い」「普通」「安い」と相対的に判断するようになり、一番「高い」とされるグレードは選ばれにくくなります。一方で、損失回避性の心理作用から「安い」と判断されたものは、「安いと品質が落ち、損をするのではないか」と判断されるようになり、もっとも損をしなさそうな「普通」が選ばれやすくなります。
ポイント制を導入する
商品などを購⼊するとポイントがたまる「ポイントサービス」 は、損失回避性が関わっています。ポイント制がある店舗とない店舗では、品質や価格帯に極端な差がない限り、「損をしたくない」という心理が働くことから、ポイント制がある店舗を選ぶようになります。また、ポイントには、有効期限が設けられているケースが多く、「そのポイントを使わないと損だ」という心理が働くことから、店舗に足を運ぶようになるのです。しかし、ポイントの有効期限が切れると、「損をした」と感じ、お店に対してマイナスイメージが付きやすいので、注意が必要です。
販売期間や人数を「限定」する
販売期間や人数を限定する施策は、損失回避性が関わっています。期間限定で販売されていたり、先着順などで人数を限定したりしていると、「今ここで何か買わないと損をする」という心理が働きます。そのため、限定した方が売れやすくなるケースが多いです。
無料期間や割引キャンペーンを導入する
無料期間の導入や割引キャンペーンを導入するのも、販売期間や人数を限定する施策と同様に損失回避性が関わっています。「無料期間や、割引されているのに商品を購入しないのは、もったいない」といった心理が働きます。もし仮に無料になる人数が限られていても、「無料になる可能性」は心理的にプラスに働きます。しかし、割引価格に慣れてしまうと、定価に戻したときに、売れにくくなってしまうため、注意が必要です。
返⾦保証や交換・修理などの補償対応を実施
返⾦保証や交換・修理などの補償対応を実施する施策は、損失回避性が関わっています。継続的に利用したり、高額な商品だと、自分に合わなかったときや、すぐ壊れてしまった場合のリスクを考えて、購入をためらってしまうケースがあります。そこで「合わない場合返金する」や「無償で修理をします」といった保証をすることで、損失を回避でき、安心して購入することに繋がります。
まとめ
今回は、プロスペクト理論の概要から事例、活用の具体的施策まで、解説しました。前述のように多くのマーケティング施策には、プロスペクト理論が関わっているため、マーケティング施策について考え直す際には、是非とも理解したい概念です。
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「プロスペクト理論の⾝近な例とは?」
「プロスペクト理論はビジネスにどう活⽤できる?」
このような悩みや疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか?そこで今回は、プロスペクト理論の解説から身近な事例や、ビジネスにどう活用するのかまで解説します。
この記事は、以下のような方におすすめの記事です。
- プロスペクト理論について知りたい方
- プロスペクト理論をビジネスで活用したい方
プロスペクト理論とは
プロスペクト理論とは、利益や損失に関わる意思決定のメカニズムをモデル化したもので、KahnemanとTverskyによって1979年に提唱された理論です。この理論から分かることは、等しい量の利益と損失があった場合、損失によって感じる痛みの方が利益によって感じる幸福より大きいということです。
人間はあらゆる場面で、利益を優先するよりも、損失を回避する傾向にあるのです。この考え方は、様々なビジネスに活用されています。ここで、実際にプロスペクト理論が活用されている事例を3つほどご紹介します。
プロスペクト理論が関わっている身近な例
事例①ZOZOTOWN
ZOZOTOWNのサイトでは割引を行う時、値引きされた後の価格だけでなく、元々の価格と割引額を表示しています。これはムーンプライスと呼ばれることもあり、実際に値引きをする前提で、売る値段を想定していても、あえて元々の価格を見せることで、顧客は得をした気分になるという心理が働きます。しかしこの手法は大袈裟な価格を設定しすぎると、表示価格での信憑性を失うので、注意が必要です。
事例②クレジットカード
顧客は現金で支払うよりクレジットカードで支払うことを好む傾向にあります。その要因は、プロスペクト理論が関係しており、カード払いは現金払いと比べて、手元からお金が離れることによって生まれる負の効用を感じにくいからです。
カード払いの場合、署名やパスワードを打ち込むだけで決済が完了します。しかし現金払いの場合、財布の中のお金をレジの担当者に渡して、レジに収納される様子を見て初めて決済が完了します。つまり、カード払いは現金払いより、支払いをしているという「感覚」が薄いのです。そのため同じ金額でも、現金払いの方がお金を支払うことによって生じる負の効用は大きく、顧客はクレジットカードで支払いをしたくなるのです。
事例➂キャッシュバック
様々な企業が実施しているキャッシュバック制度も、実はプロスペクト理論が関係しています。キャッシュバックとは商品を購入してもらった後に一定の額を現金やギフトカード、ポイントなどで返すというものです。例えばPanasonicでは、2021年4月23日(金)からテレビやブルーレイレコーダー購入で最大9万円をキャッシュバックするキャンペーンを行っています。
何故最初から値引きをしないで、わざわざキャッシュバックをするのでしょうか。
本来、商品を購入するという動作は、商品を所持、消費する正の効用とお金を支払うという負の効用両方が、釣り合っているときに発生します。
しかしキャッシュバックという仕組みを使うと、この一連のプロセスが終わった後にお金を少し返すので、追加で正の効用が生まれることになります。そのため、顧客の満足度はあらかじめ値引きをしている時より上がるのです。
プロスペクト理論のビジネスの活⽤にかかわる心理作用
プロスペクト理論をビジネスで活用するために、まずは、理論に影響している心理作用を理解する必要があります。プロスペクト理論には、大きく分けて下記3つの人間の心理作用が影響しています。
- 「損失回避性」
- 「参照点依存性」
- 「感応度逓減性」
それぞれについて解説します。
損失回避性
損失回避性とは、「手に入れること」よりも、「損をする」こと を回避する⽅を選ぶ⼼理作⽤のことです。 この心理作用を踏まえると、「利益が出る」と伝えるよりも「無駄をなくせる、損をしない」と伝えた方が、損失回避性に訴えかけることができます。
参照点依存性
参照点依存性とは、価値を「絶対的ではなく、相対的」に判断する⼼理作⽤のことです。
これは、前述のZOZOTOWNの事例でも活用されていた心理作用で、元値となる「参照点」から割引されていると、得をしたと思う心理作用から、正の効用を感じる作用で、実際に値引きをする前提で、売る値段を想定していても、あえて元々の価格を見せることで、顧客は得をした気分になるのです。
感応度逓減(ていげん)性
感応度逓減(ていげん)性とは、同じ損失額でも、⺟数が⼤きくなるほど鈍感になるという⼼理作⽤のことです。 例えば、1,000円で買った商品が後⽇700円で売られていた場合と、10万円で買った商品が後⽇9万9,700円で売られていた場合とでは、同じ300円の損失でも、⺟数が⼩さい1,000円で買った場合の⽅が、心理的負担は大きいのです。
プロスペクト理論を活用したマーケティング施策
それぞれの心理作用を理解したうえで、次にどのようにビジネスに活用するのかについて、具体的に下記マーケティング施策をご紹介します。
- 値上げを⾏う際には段階的に実施
- 商品にランクをつけて販売する(松・竹・梅や、特上・上・並など)
- ポイント制を導入する
- 無料期間や割引キャンペーンを導入する
- 販売期間や人数を「限定」する
- 返⾦保証や交換・修理などの補償対応を実施
値上げを⾏う際には段階的に実施
値上げを段階的に実施することは、参照点依存性の心理作用が関わっています。値上げを実施する前の価格が、参照点になるため、値上げを一度で行うよりも、段階的に行なうことで、参考にする価格を更新することができるので、一回一回の値上げのインパクトが少なくなります。しかし、複数回値上げをすると顧客から反感を買う可能性があるので、注意が必要です。
商品にランクをつけて販売する(松・竹・梅や、特上・上・並など)
「松・竹・梅」や、「特上・上・並」など商品にランクをつけて販売する施策は、参照点依存性と損失回避性が関わっています。参照点依存性の心理作用から、それぞれのランクを「高い」「普通」「安い」と相対的に判断するようになり、一番「高い」とされるグレードは選ばれにくくなります。一方で、損失回避性の心理作用から「安い」と判断されたものは、「安いと品質が落ち、損をするのではないか」と判断されるようになり、もっとも損をしなさそうな「普通」が選ばれやすくなります。
ポイント制を導入する
商品などを購⼊するとポイントがたまる「ポイントサービス」 は、損失回避性が関わっています。ポイント制がある店舗とない店舗では、品質や価格帯に極端な差がない限り、「損をしたくない」という心理が働くことから、ポイント制がある店舗を選ぶようになります。また、ポイントには、有効期限が設けられているケースが多く、「そのポイントを使わないと損だ」という心理が働くことから、店舗に足を運ぶようになるのです。しかし、ポイントの有効期限が切れると、「損をした」と感じ、お店に対してマイナスイメージが付きやすいので、注意が必要です。
販売期間や人数を「限定」する
販売期間や人数を限定する施策は、損失回避性が関わっています。期間限定で販売されていたり、先着順などで人数を限定したりしていると、「今ここで何か買わないと損をする」という心理が働きます。そのため、限定した方が売れやすくなるケースが多いです。
無料期間や割引キャンペーンを導入する
無料期間の導入や割引キャンペーンを導入するのも、販売期間や人数を限定する施策と同様に損失回避性が関わっています。「無料期間や、割引されているのに商品を購入しないのは、もったいない」といった心理が働きます。もし仮に無料になる人数が限られていても、「無料になる可能性」は心理的にプラスに働きます。しかし、割引価格に慣れてしまうと、定価に戻したときに、売れにくくなってしまうため、注意が必要です。
返⾦保証や交換・修理などの補償対応を実施
返⾦保証や交換・修理などの補償対応を実施する施策は、損失回避性が関わっています。継続的に利用したり、高額な商品だと、自分に合わなかったときや、すぐ壊れてしまった場合のリスクを考えて、購入をためらってしまうケースがあります。そこで「合わない場合返金する」や「無償で修理をします」といった保証をすることで、損失を回避でき、安心して購入することに繋がります。
まとめ
今回は、プロスペクト理論の概要から事例、活用の具体的施策まで、解説しました。前述のように多くのマーケティング施策には、プロスペクト理論が関わっているため、マーケティング施策について考え直す際には、是非とも理解したい概念です。
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