プライシングは、商品やサービスの収益化に直接的に大きな影響を及ぼすものです。
日本では今でも、勘や相場だけで決めている企業が数多く存在しています。そういった状況から、合理的な調査や分析のもとでプライシングの計画や方策を立てるプライシング戦略の重要性が高まっています。
そこで本記事では、プライシング戦略の基本からアプローチ方法・戦略手法・分析手法まで、網羅的に解説します。
目次
プライシングとは、企業が製品・サービスの価格を決めることです。
価格によって収益化できるかどうかが決まるので、言うまでもなくビジネス上非常に重要な意思決定となります。収益化できれば、より事業投資を加速させ、事業成長できますが、収益化の見込みがつかなければ、投資ができず、事業成長は鈍化していきます。
事業を通じて顧客へ価値提供を行う観点からも、事業に投資し、成長させることは必要不可欠であり、そのための収益化を決定づけるものこそが価格なのです。
事業に適したプライシング戦略を考えるために、まず価格決定で重要な3つの観点について説明します。
価格を決める際、考慮すべきことは、コスト(Cost)、競合(Competitor)、顧客(Customer)の3つの観点(3C)です。
どれか1つだけで価格を決めるわけでなく、3つの観点(3C)を考慮して複合的に価格決定することが理想的なプライシングになります。
前述した3Cの考え方をベースに、「コストアプローチ」「競合ベースアプローチ」「ニーズ志向アプローチ」の3つから、自社が属する業界や製品・サービスの特徴を踏まえて価格を決定していきます。
コストベースプライシングとは、名前のとおりコスト(原価)に対して、利益を上乗せして価格を設定する方法です。
多くの企業は、商品・サービスを販売する際に、このコストベースプライシングを利用して価格を決定しています。例として、飲食業界では原価率30%が慣例的だと言われています。
競合ベースプライシングは、競合他社の価格をベンチマークとして、独自の商品・サービスに対して価格を設定する方法です。
競合ベースプライシングは、顧客価値や生産コストではなく、競合他社の価格に関する公開情報のみに焦点を当てています。
バリューベースプライシングとは、顧客が商品・サービスに感じている価値に基づいて価格を設定することです。
バリューベースプライシングにより、商品・サービスの価格を原価や競合の価格にとらわれずに、値段を決められます。
プライシング戦略を練る際に、事業戦略や成長戦略も合わせて考える必要があります。
先を見据えたプライシングを抜きにしては、事業の成長が見込みづらくなります。その際に用いる代表的な戦略手法として「ペネトレーションプライシング」と「スキミングプライシング」があります。
ペネトレーションプライシングとは、新製品を市場に送り出す初期段階で価格を低価格に設定し、ある一定の期間でシェアを高める価格戦略です。
以下で流れの一例をご紹介します。
ステップ1:初期段階の価格を製造原価と同じかそれ以下に設定する
ステップ2:市場でのシェアが増えることで、製造量が増える
ステップ3:徐々に価格を上げる
ペネトレーションプライシングは、中・長期的に利益を上げていく価格戦略になっています。
スキミングプライシングは、初期段階の製品を高価格に設定し、早期に投資資金を回収する価格戦略です。
以下で流れの例をご紹介します。
ステップ1:新しい製品を早期から受け入れてくれる顧客を探す。
ステップ2:顧客からフィードバックをもらい、製品の改善をする。
ステップ3:徐々に価格を低下させ、ターゲットを拡大する。
ステップ4:ターゲットを全市場に拡大する。
プライシング戦略の策定の際に用いられる主な分析手法は4つあります。
1.PSM分析
2.CVM分析
3.EVC Analysis
4.Split Testing Pricing
PSM分析とはバリューベースの価格設定を実現するために、顧客が商品に対して、どれくらいの範囲で価格が受け入れられるのかを調査するために使われる手法です。
PSM分析を応用することで、商品・サービスがどの程度の価格なら最も顧客に受けいられるかを把握でき、売り上げや顧客数を最大化できる価格を試算できます。
CVM分析は、「さまざまな種類の生態系や環境サービス等の経済的価値を明らかにする」ことを目的とし、仮想的な市場を描いたシナリオの元でのサービスに対する被験者の支払意思額を推定する分析手法で、支払い意欲調査の一種です。
EVCとは、Economic Value to the Customerの略称で、競合商品にはない要素を持つ商品に対し、その要素の価値を勘案した上で、販売する商品の価格決めをするための指標を指します。
価格付けの際には、EVCから数%割り引いた値を販売価格とします。そのため、競合商品にはない要素を持つ商品に対し、有効な値付けの手法となります。
Split Testing Pricing(スプリット テスティング プライシング)は簡単にいうとABテストであり、スプリットテストの考え方をもとにしています。
スプリットテストとは、商品に関する様々な変更内容に対し、顧客セグメントがどのような反応を示すのかを確認することで、顧客体験を効果的に最適化する方法を把握するための方法です。
スプリットテストは、プライシングの領域よりも、ホームページの設計などのために使われることが多いです。
プライシングに活用する際の、実施方法としては、以下の4つの種類が挙げられます。
1.Lastminute Discount:実際の価格よりも高い範囲でデータベースまたは価格表に格納されている価格をランダムに表示し、購入を確認する直前に値引きを実施し、すべての顧客に実際の価格で販売する方法です。
2.Anchoring in Action:異なる価格で製品を提供するのではなく、複数の価格で複数の製品を提示し、それぞれの価格設定が他のプランの価格に対してどのような相対的な意味を持つかを調査します。
3.価格表示を変える:例えば年額ではなく、月額表示にした方が、登録者数が増加する効果が知られていますが、このように単純な価格表示の変化によって、販売数や利益がどのように変化するかを判断することができます。
4.時間によって価格を変化させる:通常スプリットテストでは同時に異なる顧客に対して異なる価格を提示しますが、時間によってすべての顧客に対して提示する価格を変化させ、どのように販売数や利益が変化するかを調査する方法です。
プライシング戦略を策定する際にどのような方法があるのでしょうか。
下記では大きく2つの方法をご紹介します。
1つ目のポイントは、プライシングの専任部署やプロジェクトを立ち上げることです。
価格の決定により、事業の収益やブランド価値などが左右するため、専門の部署を作って、その分野に長けた人が意思決定をする必要があるのです。
プライシングは、市場浸透やブランディング・差別化など、事業戦略によって価格設定の考え方が大きく異なります。そのため、プライシング戦略の策定には経営判断のできるメンバーが関与していることが求められます。
自社にプライシングに長けた人がいない場合や、自社のプライシングに根拠や自信がない場合はプライシングのプロであるコンサルティングサービスを利用することも可能です。
サービスを利用したい方や、サポート内容の詳細が知りたい方は以下リンクからプライシングスタジオの公式サイトをご覧頂けますと幸いです。