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2022.04.14(更新日:2024.03.04)

価格を決める際にABテストは有効か?

【YouTube記事】価格を決める際にABテストは有効か?
【YouTube記事】価格を決める際にABテストは有効か?
その他・価格業界情報
#価格戦略

(この記事は、価格を決める際にABテストは有効か?の解説記事です)

【質問】
価格を決定する際、調査ではなくABテストで価格を決めれば良いのではないでしょうか?
【回答】
ABテストを行う際にも入念な調査が必要です。炎上リスクも考えると、PSM分析を用いることを推奨します

今回も質問に対して回答していきます。私は価格の調査方法としてPSM分析を推奨していますが、「そんな面倒なことしなくてもABテストを実施すれば分かるのではないか?」という意見もあると思います。しかしながら様々な理由からABテストはおススメできません

価格を決める際にABテストは有効か?

ABテスト自体は有効な方法の1つです。ただし、価格分析に用いることはオススメできません。

ABテストでは実際の顧客の行動をベースに価格を決定します(スプリットテスティングプライシング)。LPにおいては「スプリットテスト」が主に用いられます。これは数パターンの仮説を基に表示を変更し、表示ごとのクリック率変化を分析する手法です。この手法には「顧客の行動に基づくため信憑性が高い」「断定することができるため、迷いなく意思決定を行える」というメリットがあります。

ABテストの弱点

実はABテストは非常に手間のかかる手法なのです。リスク対策や精度を高めるための事前調査などが必要です。

ABテストは非常に手間がかかります。例えば炎上リスクに対処する必要があります。
1,680円と1,880円で同じ商品の価格をテストした場合について考えてみましょう。この2つの価格で販売したとき、1,880円で購入したお客さんは200円の損をすることになります。「1,880円で購入してくれるお客さんは高くても購入したいと考えている。だから高く売ってもよいのではないか」と考える方もいるかもしれません。ですが、同じサービスをより高い金額で購入したいと思うお客さんはほとんど存在しません。
このようにABテストはお客さんの不満に繋がり、炎上によってブランドが傷つくリスクもあります。それでもABテストを行いたい場合は1,880円で販売してから1,680円で販売しましょう。実際に支払った金額が顧客間で平等になるため実質損をしていない状態を作ることができます。もしくは、実験を行っていたことを後で伝えて、損をさせてしまった分を返金する形をとりましょう。しかし、これらの手法には、「顧客の支払う金額を平等にする作業」に手間がかかってしまうのです。

ABテストに必要なサンプル数

顧客の購買データを分析していくためには膨大なサンプル数が必要です。十分なサンプル数を集められないと有意な結果が得られません。

統計的に有意な数字を作るためにはPSM分析で100〜200サンプル、スプリットテストでは1万〜2万サンプルが必要です。ユーザー数の多いサービスであれば問題ありませんが、そこまでのユーザー数を保持しているサービスは少ないと思います。立ち上げ段階やグロース段階では統計的に有意な数字が得られない場合が多いです。

実はABテストの方が労力が大きい?

ABテストを行う際には事前調査が必要です。調査せずにABテストを行うことは「適切なデータが得られない」「炎上リスクが上がる」という点からオススメできません。

ABテストでは仮説出しのために別の調査を行う必要があります。PSM分析でもABテストと変わらないレベルの精度で結果がでるので、敢えてABテストを用いる必要はありません。
またABテストを実施する際には、データに差が出ないよう条件を調整する必要があります。ECサイトでのアイス販売を例に考えてみます。冬と夏で異なる金額で販売しても、そもそも顧客の購買意欲が異なるため適切なデータが得られないでしょう。
とはいえ、どの条件がデータに変動を及ぼすか想定することは非常に難しいです。
仮説出しに労力がかかる上に、支払い意欲の差を発見するためのペルソナ特定にはかなりの調査が必要になるためABテストはかなり労力がかかるといえるでしょう。

ABテストを行うべきケース

ここまでABテストを否定してきましたが、行うべき場合もあります。1つ目はダメ押しをしたい時です。アンケートの精度が高いとはいえ、顧客の実際の動きに勝るFACTはありません。FACTを取りに行きたい時にABテストはおススメです。2つ目は調査で判明した価格よりも高い価格で売りたい時です。ABテストで検証した結果売れるのであれば、その価格で販売しても問題ないでしょう。より高額での販売を望むならABテストを用いる価値ありでしょう。これら2つの場合においてはABテストは非常に有効です。実施してみても良いのではないでしょうか。

まとめ

今回はABテストについて解説しました。ABテストを行う際にも入念な調査が必要なのです。炎上リスクも考えてPSM分析を用いることを推奨します。
ABテストの実施は非常に大変なので、今後の動画で解説していけたらと考えています。

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Yoshihiro Takahashi

高橋 嘉尋

プライシングスタジオ株式会社

代表取締役CEO

プライシングスタジオ株式会社代表取締役 CEO。2019年、慶應義塾大学総合政策学部在学中に価格1%が企業の営業利益を約20%の改善につながるということを知り、その影響力に魅力を感じ、当社を設立。プライシングスタジオは設立以来、30以上の業界、100以上のサービスの値付けを支援している。著書に「値決めの教科書 勘と経験に頼らないプライシングの新常識」(日経BP)。「日経トップリーダー・ビジネス」にて「値決めの科学」、「ダイヤモンドオンライン」にて「価格戦略のプロが見た「あの値付け」」を連載中。「日経COMEMO」キーオピニオンリーダー。そのほか、テレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」、ABEMA「ABEMA Prime」、NewsPicks「メイクマネー」など多数メディアに出演。2023年Forbesによる「アジアを代表する30才未満の30人」に部門で選出される。

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【質問】
価格を決定する際、調査ではなくABテストで価格を決めれば良いのではないでしょうか?
【回答】
ABテストを行う際にも入念な調査が必要です。炎上リスクも考えると、PSM分析を用いることを推奨します

今回も質問に対して回答していきます。私は価格の調査方法としてPSM分析を推奨していますが、「そんな面倒なことしなくてもABテストを実施すれば分かるのではないか?」という意見もあると思います。しかしながら様々な理由からABテストはおススメできません

価格を決める際にABテストは有効か?

ABテスト自体は有効な方法の1つです。ただし、価格分析に用いることはオススメできません。

ABテストでは実際の顧客の行動をベースに価格を決定します(スプリットテスティングプライシング)。LPにおいては「スプリットテスト」が主に用いられます。これは数パターンの仮説を基に表示を変更し、表示ごとのクリック率変化を分析する手法です。この手法には「顧客の行動に基づくため信憑性が高い」「断定することができるため、迷いなく意思決定を行える」というメリットがあります。

ABテストの弱点

実はABテストは非常に手間のかかる手法なのです。リスク対策や精度を高めるための事前調査などが必要です。

ABテストは非常に手間がかかります。例えば炎上リスクに対処する必要があります。
1,680円と1,880円で同じ商品の価格をテストした場合について考えてみましょう。この2つの価格で販売したとき、1,880円で購入したお客さんは200円の損をすることになります。「1,880円で購入してくれるお客さんは高くても購入したいと考えている。だから高く売ってもよいのではないか」と考える方もいるかもしれません。ですが、同じサービスをより高い金額で購入したいと思うお客さんはほとんど存在しません。
このようにABテストはお客さんの不満に繋がり、炎上によってブランドが傷つくリスクもあります。それでもABテストを行いたい場合は1,880円で販売してから1,680円で販売しましょう。実際に支払った金額が顧客間で平等になるため実質損をしていない状態を作ることができます。もしくは、実験を行っていたことを後で伝えて、損をさせてしまった分を返金する形をとりましょう。しかし、これらの手法には、「顧客の支払う金額を平等にする作業」に手間がかかってしまうのです。

ABテストに必要なサンプル数

顧客の購買データを分析していくためには膨大なサンプル数が必要です。十分なサンプル数を集められないと有意な結果が得られません。

統計的に有意な数字を作るためにはPSM分析で100〜200サンプル、スプリットテストでは1万〜2万サンプルが必要です。ユーザー数の多いサービスであれば問題ありませんが、そこまでのユーザー数を保持しているサービスは少ないと思います。立ち上げ段階やグロース段階では統計的に有意な数字が得られない場合が多いです。

実はABテストの方が労力が大きい?

ABテストを行う際には事前調査が必要です。調査せずにABテストを行うことは「適切なデータが得られない」「炎上リスクが上がる」という点からオススメできません。

ABテストでは仮説出しのために別の調査を行う必要があります。PSM分析でもABテストと変わらないレベルの精度で結果がでるので、敢えてABテストを用いる必要はありません。
またABテストを実施する際には、データに差が出ないよう条件を調整する必要があります。ECサイトでのアイス販売を例に考えてみます。冬と夏で異なる金額で販売しても、そもそも顧客の購買意欲が異なるため適切なデータが得られないでしょう。
とはいえ、どの条件がデータに変動を及ぼすか想定することは非常に難しいです。
仮説出しに労力がかかる上に、支払い意欲の差を発見するためのペルソナ特定にはかなりの調査が必要になるためABテストはかなり労力がかかるといえるでしょう。

ABテストを行うべきケース

ここまでABテストを否定してきましたが、行うべき場合もあります。1つ目はダメ押しをしたい時です。アンケートの精度が高いとはいえ、顧客の実際の動きに勝るFACTはありません。FACTを取りに行きたい時にABテストはおススメです。2つ目は調査で判明した価格よりも高い価格で売りたい時です。ABテストで検証した結果売れるのであれば、その価格で販売しても問題ないでしょう。より高額での販売を望むならABテストを用いる価値ありでしょう。これら2つの場合においてはABテストは非常に有効です。実施してみても良いのではないでしょうか。

まとめ

今回はABテストについて解説しました。ABテストを行う際にも入念な調査が必要なのです。炎上リスクも考えてPSM分析を用いることを推奨します。
ABテストの実施は非常に大変なので、今後の動画で解説していけたらと考えています。

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Yoshihiro Takahashi

高橋 嘉尋

プライシングスタジオ株式会社

代表取締役CEO

プライシングスタジオ株式会社代表取締役 CEO。2019年、慶應義塾大学総合政策学部在学中に価格1%が企業の営業利益を約20%の改善につながるということを知り、その影響力に魅力を感じ、当社を設立。プライシングスタジオは設立以来、30以上の業界、100以上のサービスの値付けを支援している。著書に「値決めの教科書 勘と経験に頼らないプライシングの新常識」(日経BP)。「日経トップリーダー・ビジネス」にて「値決めの科学」、「ダイヤモンドオンライン」にて「価格戦略のプロが見た「あの値付け」」を連載中。「日経COMEMO」キーオピニオンリーダー。そのほか、テレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」、ABEMA「ABEMA Prime」、NewsPicks「メイクマネー」など多数メディアに出演。2023年Forbesによる「アジアを代表する30才未満の30人」に部門で選出される。

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