(この記事は、プライシングスタジオ 高橋 嘉尋のnoteを再構成して転載しています)
米国の主要なSaaS企業の料金表にはどういう戦略の上で、作成されているのでしょうか。今回、Salesforce、Slack、zoomなど、時価総額上位50社の企業を調べてみました。
調べてみたSaaS企業はこちら
ここからいくつかのことがわかったので、考察していこうと思います。
<この記事の結論>
・料金表を公開している企業のうち、プラン数が3-4プランになっている企業は76%
・料金表を公開している企業の100%が、無料トライアルを採用
・料金表を公開している企業のうち、82%が従量課金モデルを採用
目次
料金表を公開していた企業は34%
米国の時価総額上位50社のSaaS企業の料金ページを調べたところ、具体的な料金表を公開している企業は全体の34%で、残りの66%の企業は、具体的な料金表を公開していませんでした。
また、料金表を公開している94%の企業が、PLG型ということがわかりました。PLG型とは?
PLGはProduct-Led Growthの略で「プロダクトがプロダクトの価値を伝える」戦略を用いている企業のことを指します。例えばzoomやslackなど、主に個人単位でサービスを展開しており、顧客自身が自由に登録できるようになっています。そのため他社と比べて、拡散が早く、成長速度が速いことが特徴です。
以降、料金表を公開しているPLG型の企業に絞って考察を進めていきます。
公開企業のうち、プラン数が3-4プランになっている企業は76%
料金表を公開している企業が提供するプラン数について調べたところ、3-4プランになっている企業が全体の76%を占めていました。
実際、米国のトップVCであるAndreessen Horowitz(a16z)がPLG型のSaaS企業向けに書いたプライシング記事によると、PLG型の場合、試行錯誤するうちに、だいたい3-4プランに収束していくようです。
この記事では、PLG型企業のプライシングにおいて、ユーザーが初めて製品に触れてから、その製品がユーザーの組織で使われるまでの段階である「ユーザージャーニー」を理解することがとても重要だと言われています。「ユーザージャーニー」は4段階に分かれており、それぞれ次のように説明されています。
(出典:Andreessen Horowitz)
TIER1で無料トライアルやフリーミアムでOrganicの母数を増やし、そこからTIER4へスムーズに移行してもらえるような導線を作ることが重要だそうです。
顧客にスムーズに移行してもらうには、このように3-4プランに設定し、導線を作るのが良いとされています。
公開企業の100%が、無料トライアルを採用
先ほど紹介したAndreessen Horowitzの記事では、PLG型のSaaS企業では、リードを獲得する為の方法として無料トライアルやフリーミアムを実施するのが一般的とされていました。
実際、料金表を公開している企業のうち100%が無料トライアルを採用していました。
無料トライアルとフリーミアムの違い
無料トライアルとは、「14日間無料」のように期間に制限をつける一方、機能には制限をつけずサービスを無料で体験することができる仕組みです。
それに対しフリーミアムとは、40分までなら無料で使えるzoom meetingのように、機能に制限をつける一方、期間には制限をつけないでサービスを無料で体験することができる仕組みです。
何故フリーミアムより無料トライアルの方が主流なのか
フリーミアムより無料トライアルの方が主流な理由として、無料トライアルの方がCVRが高く、比較的容易であることが考えられます。実際、PayPalの元創設COO兼製品リーダーであるDavid Sacksは、市場に口コミやバイラルでの広がりが期待できる場合はフリーミアム有効ですが、下記のようなデメリットもあると言い、無料トライアルを推奨しています。
デメリット
1.無料版を魅力的にしすぎると有料版を使ってもらえない
顧客が価値を感じるポイントをしっかりと理解し、顧客がさらに使いたいと思うように設計することが大切です。
2.機能面のペイウォールの作成と維持に多くのリソースを割く必要がある
新しい機能がリリースされるたびに、製品チームは何が無料で何が有料かを決定する必要があります。
3.収益化が難しい
有料版が無料版と比較して魅力的なプロダクトである必要があるため開発コストは高くなります。またリードが収益を生み出すアカウントに変換されるまでに、数か月または数年かかる可能性がある場合、このマーケティングのROIを評価することは困難です。
この点、無料トライアルではこれらの制限に悩む必要がないと言われています。無料トライアルは、期間を限定し有料版への移行の意思決定を、ユーザーに迫ることができため、CVRが比較的高くなります。(フリーミアムのCVRが3-5%なのに対し、無料トライアルは10-20%)
また、製品への実装、販売やマーケティングとの調整も比較的容易な為、David Sacksは無料トライアルを推奨しています。
公開企業のうち、82%が従量課金モデルを採用
料金表を公開している企業の価格体系を調べたところ、82%の企業が従量課金モデルの価格体系を用いていました。
従量課金モデルとは
ユーザー数や使用時間などの利用した“量”に“従”って課金する、価格体系です。顧客が「使った分だけお金を支払う」仕組みです。例えばDatadogでは料金表は次のように使用料に応じた料金が表示されています。
(出典:Datadog)
従量課金モデルがトレンドになっている理由
openviewは、従量課金がトレンドになっている理由として次のようなことをあげています。
1.NDRが高い
顧客の会社規模が、売り上げの天井になることがないため、仮に売上規模が上がったとしても、普通のSaaS企業よりNDRが高く、売上成長率が高くなりやすいといわれています。従量課金モデルではアップセルがしやすいため、NDRが平均的なSaaSより9%高いとされています。
2.高い成長を維持できる
従量課金モデルを採用するSaaS企業はNDRが高いため、上場後も高い成長を維持し、平均的なSaaSより8%高くなると言われています。
3.高いプレミアムがついている
1.2などのことから、マルチプルが平均的なSaaS企業より50%高くなっています。
まとめ
今回米国の主要サービス企業の料金ページをリサーチしてわかったことについて紹介しました。プライシングによって皆様の事業成長が、より加速することを願っております。
価格についてのご相談はお気軽にプライシングスタジオまで宜しくお願い致します。
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(この記事は、プライシングスタジオ 高橋 嘉尋のnoteを再構成して転載しています)
米国の主要なSaaS企業の料金表にはどういう戦略の上で、作成されているのでしょうか。今回、Salesforce、Slack、zoomなど、時価総額上位50社の企業を調べてみました。
調べてみたSaaS企業はこちら
ここからいくつかのことがわかったので、考察していこうと思います。
<この記事の結論>
・料金表を公開している企業のうち、プラン数が3-4プランになっている企業は76%
・料金表を公開している企業の100%が、無料トライアルを採用
・料金表を公開している企業のうち、82%が従量課金モデルを採用
目次
料金表を公開していた企業は34%
米国の時価総額上位50社のSaaS企業の料金ページを調べたところ、具体的な料金表を公開している企業は全体の34%で、残りの66%の企業は、具体的な料金表を公開していませんでした。
また、料金表を公開している94%の企業が、PLG型ということがわかりました。PLG型とは?
PLGはProduct-Led Growthの略で「プロダクトがプロダクトの価値を伝える」戦略を用いている企業のことを指します。例えばzoomやslackなど、主に個人単位でサービスを展開しており、顧客自身が自由に登録できるようになっています。そのため他社と比べて、拡散が早く、成長速度が速いことが特徴です。
以降、料金表を公開しているPLG型の企業に絞って考察を進めていきます。
公開企業のうち、プラン数が3-4プランになっている企業は76%
料金表を公開している企業が提供するプラン数について調べたところ、3-4プランになっている企業が全体の76%を占めていました。
実際、米国のトップVCであるAndreessen Horowitz(a16z)がPLG型のSaaS企業向けに書いたプライシング記事によると、PLG型の場合、試行錯誤するうちに、だいたい3-4プランに収束していくようです。
この記事では、PLG型企業のプライシングにおいて、ユーザーが初めて製品に触れてから、その製品がユーザーの組織で使われるまでの段階である「ユーザージャーニー」を理解することがとても重要だと言われています。「ユーザージャーニー」は4段階に分かれており、それぞれ次のように説明されています。
(出典:Andreessen Horowitz)
TIER1で無料トライアルやフリーミアムでOrganicの母数を増やし、そこからTIER4へスムーズに移行してもらえるような導線を作ることが重要だそうです。
顧客にスムーズに移行してもらうには、このように3-4プランに設定し、導線を作るのが良いとされています。
公開企業の100%が、無料トライアルを採用
先ほど紹介したAndreessen Horowitzの記事では、PLG型のSaaS企業では、リードを獲得する為の方法として無料トライアルやフリーミアムを実施するのが一般的とされていました。
実際、料金表を公開している企業のうち100%が無料トライアルを採用していました。
無料トライアルとフリーミアムの違い
無料トライアルとは、「14日間無料」のように期間に制限をつける一方、機能には制限をつけずサービスを無料で体験することができる仕組みです。
それに対しフリーミアムとは、40分までなら無料で使えるzoom meetingのように、機能に制限をつける一方、期間には制限をつけないでサービスを無料で体験することができる仕組みです。
何故フリーミアムより無料トライアルの方が主流なのか
フリーミアムより無料トライアルの方が主流な理由として、無料トライアルの方がCVRが高く、比較的容易であることが考えられます。実際、PayPalの元創設COO兼製品リーダーであるDavid Sacksは、市場に口コミやバイラルでの広がりが期待できる場合はフリーミアム有効ですが、下記のようなデメリットもあると言い、無料トライアルを推奨しています。
デメリット
1.無料版を魅力的にしすぎると有料版を使ってもらえない
顧客が価値を感じるポイントをしっかりと理解し、顧客がさらに使いたいと思うように設計することが大切です。
2.機能面のペイウォールの作成と維持に多くのリソースを割く必要がある
新しい機能がリリースされるたびに、製品チームは何が無料で何が有料かを決定する必要があります。
3.収益化が難しい
有料版が無料版と比較して魅力的なプロダクトである必要があるため開発コストは高くなります。またリードが収益を生み出すアカウントに変換されるまでに、数か月または数年かかる可能性がある場合、このマーケティングのROIを評価することは困難です。
この点、無料トライアルではこれらの制限に悩む必要がないと言われています。無料トライアルは、期間を限定し有料版への移行の意思決定を、ユーザーに迫ることができため、CVRが比較的高くなります。(フリーミアムのCVRが3-5%なのに対し、無料トライアルは10-20%)
また、製品への実装、販売やマーケティングとの調整も比較的容易な為、David Sacksは無料トライアルを推奨しています。
公開企業のうち、82%が従量課金モデルを採用
料金表を公開している企業の価格体系を調べたところ、82%の企業が従量課金モデルの価格体系を用いていました。
従量課金モデルとは
ユーザー数や使用時間などの利用した“量”に“従”って課金する、価格体系です。顧客が「使った分だけお金を支払う」仕組みです。例えばDatadogでは料金表は次のように使用料に応じた料金が表示されています。
(出典:Datadog)
従量課金モデルがトレンドになっている理由
openviewは、従量課金がトレンドになっている理由として次のようなことをあげています。
1.NDRが高い
顧客の会社規模が、売り上げの天井になることがないため、仮に売上規模が上がったとしても、普通のSaaS企業よりNDRが高く、売上成長率が高くなりやすいといわれています。従量課金モデルではアップセルがしやすいため、NDRが平均的なSaaSより9%高いとされています。
2.高い成長を維持できる
従量課金モデルを採用するSaaS企業はNDRが高いため、上場後も高い成長を維持し、平均的なSaaSより8%高くなると言われています。
3.高いプレミアムがついている
1.2などのことから、マルチプルが平均的なSaaS企業より50%高くなっています。
まとめ
今回米国の主要サービス企業の料金ページをリサーチしてわかったことについて紹介しました。プライシングによって皆様の事業成長が、より加速することを願っております。
価格についてのご相談はお気軽にプライシングスタジオまで宜しくお願い致します。
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