2021年9月8日、SaaS企業におけるプライシングについて、企業にあった価格体系の決め方や、具体的な価格の決め方について、サブスクリプションモデルの現状を元に解説するオンラインセミナーが開催された。
本セミナーには、プライシングコンサルティングおよびプロダクト開発を通じて、顧客の価格成功を支援してきた経験を持ち、現在プライシングスタジオ取締役COOを務めている相関集氏が登壇した。
前回開催されたプライシングセミナーの記事はこちら。
目次
実例からみるサブスクモデルの現状
プライシングの成功企業(Netflix)
相関氏はプライシングの成功企業としてNetflix (ネットフリックス)を例に挙げた。
(出典:Statista)
「Netflixでは1-2年に1度のペースで値上げが実施されています。それによって売上も上がっていることが左のグラフのMRRを見ていただければわかると思います。」
米国の失敗したスタートアップのうち15%は「価格と費用」が原因
プライシングで成功した企業がある一方、失敗した企業もあるという。
米国の111の失敗したスタートアップを調査して、失敗した理由をランキングにしたものが次のグラフである。
(出典:CBINSIGHT)
このグラフでいう失敗とは倒産だけでなく、実質倒産も含まれる。
「最も多いのは、キャッシュアウト資金切れで、次にマーケットのニーズがないというランキングですが、この7番目にプライシングとコストの問題がでてきます。
プライシングに難航している企業は多々ありますが、倒産の原因にまでなっている企業が15%もあるんですね。この違いは何から生まれるのでしょうか?この理由について価格体系という側面から、掘り下げていくのが本日のセミナーになります。」
そもそも価格体系とは?
相関氏は価格体系について「製品にいくら請求するか?の問いに答えるもの」と定義している。
「すごく単純なことですが、これがサブスクリプション型のビジネスであるSaaSだと非常に難しいです。なぜなら旧来ビジネスからの2つの大きな変化があるからです。」
サブスクリプションにより世の中の製品は、モノとしてではなく、サービスとして認識されるようになっている。モノからサービスに変化したことで価格体系に選択肢ができ、複雑化したという。
本来、一つの商品に対して単一価格が決められていたが、モノのサービス化により、月額料金のシステムや人数ごとに課金するシステム、利用料で課金するシステムなどが生まれ、価格体系に選択肢が増えたのである。
「また、製品価値がアップデートされていくだけでなく、それに伴い事業状態と提供価値、顧客も変化していきます。そのため、価格体系も一度決めたら終わりでなく合わせて変化が必要になります。
そもそも価格体系が複雑化している中、変化させていかなければいけないところにSaaSの価格体系の検討の難しさがあります。」
企業にあった価格体系の決め方
価格体系を決める観点
相関氏は価格体系を決める観点は、「顧客と価値」と「個別の価格体系」の2つであるという。「顧客と価値」とは誰に何を届けるか、「個別の価格体系」とは何にいくら請求するかということである。
顧客と価値
顧客属性の整理と提供価値の整理を行うことが必要である。
「顧客の整理で行うことは、業界、業種、企業規模(エンタープライズ等)、部署などで実際の顧客データベースを分類できるような、顧客分類を作成することが重要です。
また、価値の整理で行うことは、誰にどんな価値を与えているかなど、整理した顧客分類からサービス価値を整理することが重要です。」
個別の価格体系(代表となる価格体系4つ)
相関氏は代表的な価格体系四つとその特徴を説明した。
今回相関氏が解説したのは定額課金、アカウント別従量課金、利用従量課金、機能別料金の四つである。
・定額料金の特徴
期間毎の定額料金を設定する 顧客が価格を理解しやすい 幅広いニーズに応える工夫が必要
・アカウント別従量課金の特徴
アカウント数毎の料金を設定する 利用ユーザーに比例して単価アップ 複数ユーザー前提サービスに向く
・利用従量課金の特徴
利用量毎の料金を設定する 利用に応じて自動で単価が増える 顧客が利用を控えるリスクあり
・機能別料金の特徴
利用ニーズに合わせてプランを設計 顧客分類に応じたプランが可能 プラン変更でアップセルが望める
価格体系の策定前提
相関氏は策定前提として価格体系は、価値が単一か複数かによって変化するということを説明した。
縦軸に顧客が感じる価値を表すものとして支払意欲を置いたものが次のグラフである。
事業の最初の段階であれば、一つの顧客セグメントに対して一つの価値を提供していることが多いため左側のグラフのように支払い意欲が揃ってくる。しかし実際のSaaS企業は、右側のグラフのように、顧客の支払い意欲のパターンが複数存在していることが多い。
「このグラフにおいて支払い意欲が高い人に合わせた金額設定にしてしまうと、支払い意欲の低い人たちは買えなくなってしまう。逆に支払い意欲が低い人たちに合わせた金額設定にしてしまうと、支払い意欲が高い人の分を損してしまうことになる。
そのため、顧客への価値が単一か複数かで、価格体系を組み合わせるべきかが決まります。」
価格体系の策定方法
次の画像のようにターゲットとターゲット毎の価値を列挙し、その上で価値毎の価格体系を整理するという。
「全ターゲットに対するコア価値を選定して、ベース部分の価格体系を決定して、一部ターゲットに対するサブ価値から、オプション及びアップセルおよび従量課金を選定するというやり方になります。
サービスのどのような価値を表すために、その価格体系にする必要があるのか、そこまで考慮して価格体系を決めないとせっかくの価値が伝わらず、なかなかお客様の支払いが生まれない、契約が生まれないということが発生してしまいます。そのため実際の価格体系策定では、価値と価格体系の整理・検討が重要になります。」
値付けの仕方(具体的に価格を決めるには)
価格体系決定後に具体的な価格を決める際、いきなり価格変更を行うのではなく検証を挟む必要がある。
価格体系変更は顧客影響が大きいため未検証での価格変更はリスクが高く、検証が必要だという。
「また、製品価値がアップデートされていくだけでなく、それに伴い事業状態と提供価値、顧客も変化していきます。そのため、価格体系も一度決めたら終わりでなく合わせて変化が必要になります。」
価格体系の検討から調査まで行えるPricing Sprint
「事業ビジョンを実現する価格体系策定から、調査・分析、そして価格改定実行し運用化までプライシングスプリントでは一気通貫で支援致します。
なかなか価格体系を見るのはかなり難しいかなと思うのですが、まさにSaaSサービスの中で一番大事なところになりますので、改めてこの機会に考えていただければと思います。皆様の事業の成長がプライシングによって、加速することを願っています。改めて皆様ありがとうございました。」と、相関氏は自身の公演を締めくくった。
まとめ
皆様のサブスクリプション事業が価格によって、より加速することを願っております。価格についてのご相談はお気軽にプライシングスタジオまで宜しくお願い致します。
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前回開催されたプライシングセミナーの記事はこちら。
目次
実例からみるサブスクモデルの現状
プライシングの成功企業(Netflix)
相関氏はプライシングの成功企業としてNetflix (ネットフリックス)を例に挙げた。
(出典:Statista)
「Netflixでは1-2年に1度のペースで値上げが実施されています。それによって売上も上がっていることが左のグラフのMRRを見ていただければわかると思います。」
米国の失敗したスタートアップのうち15%は「価格と費用」が原因
プライシングで成功した企業がある一方、失敗した企業もあるという。
米国の111の失敗したスタートアップを調査して、失敗した理由をランキングにしたものが次のグラフである。
(出典:CBINSIGHT)
このグラフでいう失敗とは倒産だけでなく、実質倒産も含まれる。
「最も多いのは、キャッシュアウト資金切れで、次にマーケットのニーズがないというランキングですが、この7番目にプライシングとコストの問題がでてきます。
プライシングに難航している企業は多々ありますが、倒産の原因にまでなっている企業が15%もあるんですね。この違いは何から生まれるのでしょうか?この理由について価格体系という側面から、掘り下げていくのが本日のセミナーになります。」
そもそも価格体系とは?
相関氏は価格体系について「製品にいくら請求するか?の問いに答えるもの」と定義している。
「すごく単純なことですが、これがサブスクリプション型のビジネスであるSaaSだと非常に難しいです。なぜなら旧来ビジネスからの2つの大きな変化があるからです。」
サブスクリプションにより世の中の製品は、モノとしてではなく、サービスとして認識されるようになっている。モノからサービスに変化したことで価格体系に選択肢ができ、複雑化したという。
本来、一つの商品に対して単一価格が決められていたが、モノのサービス化により、月額料金のシステムや人数ごとに課金するシステム、利用料で課金するシステムなどが生まれ、価格体系に選択肢が増えたのである。
「また、製品価値がアップデートされていくだけでなく、それに伴い事業状態と提供価値、顧客も変化していきます。そのため、価格体系も一度決めたら終わりでなく合わせて変化が必要になります。
そもそも価格体系が複雑化している中、変化させていかなければいけないところにSaaSの価格体系の検討の難しさがあります。」
企業にあった価格体系の決め方
価格体系を決める観点
相関氏は価格体系を決める観点は、「顧客と価値」と「個別の価格体系」の2つであるという。「顧客と価値」とは誰に何を届けるか、「個別の価格体系」とは何にいくら請求するかということである。
顧客と価値
顧客属性の整理と提供価値の整理を行うことが必要である。
「顧客の整理で行うことは、業界、業種、企業規模(エンタープライズ等)、部署などで実際の顧客データベースを分類できるような、顧客分類を作成することが重要です。
また、価値の整理で行うことは、誰にどんな価値を与えているかなど、整理した顧客分類からサービス価値を整理することが重要です。」
個別の価格体系(代表となる価格体系4つ)
相関氏は代表的な価格体系四つとその特徴を説明した。
今回相関氏が解説したのは定額課金、アカウント別従量課金、利用従量課金、機能別料金の四つである。
・定額料金の特徴
期間毎の定額料金を設定する 顧客が価格を理解しやすい 幅広いニーズに応える工夫が必要
・アカウント別従量課金の特徴
アカウント数毎の料金を設定する 利用ユーザーに比例して単価アップ 複数ユーザー前提サービスに向く
・利用従量課金の特徴
利用量毎の料金を設定する 利用に応じて自動で単価が増える 顧客が利用を控えるリスクあり
・機能別料金の特徴
利用ニーズに合わせてプランを設計 顧客分類に応じたプランが可能 プラン変更でアップセルが望める
価格体系の策定前提
相関氏は策定前提として価格体系は、価値が単一か複数かによって変化するということを説明した。
縦軸に顧客が感じる価値を表すものとして支払意欲を置いたものが次のグラフである。
事業の最初の段階であれば、一つの顧客セグメントに対して一つの価値を提供していることが多いため左側のグラフのように支払い意欲が揃ってくる。しかし実際のSaaS企業は、右側のグラフのように、顧客の支払い意欲のパターンが複数存在していることが多い。
「このグラフにおいて支払い意欲が高い人に合わせた金額設定にしてしまうと、支払い意欲の低い人たちは買えなくなってしまう。逆に支払い意欲が低い人たちに合わせた金額設定にしてしまうと、支払い意欲が高い人の分を損してしまうことになる。
そのため、顧客への価値が単一か複数かで、価格体系を組み合わせるべきかが決まります。」
価格体系の策定方法
次の画像のようにターゲットとターゲット毎の価値を列挙し、その上で価値毎の価格体系を整理するという。
「全ターゲットに対するコア価値を選定して、ベース部分の価格体系を決定して、一部ターゲットに対するサブ価値から、オプション及びアップセルおよび従量課金を選定するというやり方になります。
サービスのどのような価値を表すために、その価格体系にする必要があるのか、そこまで考慮して価格体系を決めないとせっかくの価値が伝わらず、なかなかお客様の支払いが生まれない、契約が生まれないということが発生してしまいます。そのため実際の価格体系策定では、価値と価格体系の整理・検討が重要になります。」
値付けの仕方(具体的に価格を決めるには)
価格体系決定後に具体的な価格を決める際、いきなり価格変更を行うのではなく検証を挟む必要がある。
価格体系変更は顧客影響が大きいため未検証での価格変更はリスクが高く、検証が必要だという。
「また、製品価値がアップデートされていくだけでなく、それに伴い事業状態と提供価値、顧客も変化していきます。そのため、価格体系も一度決めたら終わりでなく合わせて変化が必要になります。」
価格体系の検討から調査まで行えるPricing Sprint
「事業ビジョンを実現する価格体系策定から、調査・分析、そして価格改定実行し運用化までプライシングスプリントでは一気通貫で支援致します。
なかなか価格体系を見るのはかなり難しいかなと思うのですが、まさにSaaSサービスの中で一番大事なところになりますので、改めてこの機会に考えていただければと思います。皆様の事業の成長がプライシングによって、加速することを願っています。改めて皆様ありがとうございました。」と、相関氏は自身の公演を締めくくった。
まとめ
皆様のサブスクリプション事業が価格によって、より加速することを願っております。価格についてのご相談はお気軽にプライシングスタジオまで宜しくお願い致します。
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