現在、ある飲食店がダイナミックプライシングを導入したことが大きな反響を生んでいます。この記事では、その事例を元に、飲食店でのダイナミックプライシング活用の可能性を考察していきます。
ダイナミックプライシングについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください
目次
ダイナミックプライシングと飲食店
飲食店はダイナミックプライシングが入りにくい業態だと言われています。実際、国内で飲食店向けダイナミックプライシングツールを提供している企業はまだ存在していません。
しかし、近頃ダイナミックプライシングが飲食店に導入されたと話題になっているのです。
その事例を紐解きながら、飲食店のダイナミックプライシングについて考えていきます。
ニュースになった飲食店のダイナミックプライシング
6月の頭に投稿されたこちらのツイートがソーシャルバズを生んでいます。Kohei Katada(@kkatada)さんの、行きつけの定食屋さんがダイナミックプライシングを導入したというツイートです。
こちらで紹介されているのはasatteという表参道に店を構えている飲食店です。「3密」を回避することが飲食店にも求められる中、席数を減らさずに密集を回避することを目指してダイナミックプライシングを導入したようです。
密集回避に新しい観点から取り組んでいるとして、ネット上で話題になりました。さらにニュース番組でも取り上げられるほど注目度が高まっています。
ダイナミックプライシングが混雑緩和に対して果たす役割に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。
ダイナミックプライシングがうまく機能する理由
国内ではダイナミックプライシングが飲食店に導入されている事例はあまり見ません。飲食店との相性が悪いと考えられますが、なぜこの飲食店ではうまく機能しているのでしょうか?
asatteのダイナミックプライシングの特徴
まずはasatteさんの事例を考えるにあたり、店舗の特徴を把握しておく必要があります。asatteさんの最大の特徴はそのメニュー構成でしょう、なんとメニューは日替わり定食のみなのです。
また、ウェブサイトを持たず、3,000人ほどのフォロワーが閲覧するinstagram上で、その日のメニューを告知していることも珍しい点かと思います。
こんなasatteさんですが、新型コロナウイルスの拡大を受け、お弁当のみの販売のみを行ってきました。6月から店舗の営業を再開したものの、席数を減らすことで密集度を減らすことも、経営を成り立たせるためには難しい状況だったのです。
ここでasatteさんは、時間帯によって価格を変動させることで消費者の需要を分散させようと考えました。基本的な考え方は他業種で使われるダイナミックプライシングと同じです。
- 需要の集中する時間帯→価格を上げることで、需要を抑える。
- 需要が小さな時間帯⇨価格を下げることで、需要がピークの時間帯の顧客を呼び寄せる。
1つの商品の価格を、時間帯に応じて複数の値段に変動させることで、混雑状況をコントロールしようとしているのです。asatteさんでは、30分ごとに商品の価格が変わるようで、最も高い時間と、最も安い時間では700円もの価格差があるようです。これにより、導入を開始してまだ間もないですが、これまでのピーク時間にお客さんが集中することはなくなったそうです。
また、価格の変動幅は、目標とする売り上げから逆算して設定しているそうなので、集客に問題を及ばさないでいれば、売り上げや利益率に対しても問題はなさそうです。
asatteで導入が順調な理由3点
まだ完全に成功したと言うわけではないと思いますが、asatteさんのダイナミックプライシングは順調なようです。飲食業界はダイナミックプライシングの導入が進んでいない業界です。その中でasatteさんのダイナミックプライシングが順調な理由を考えてみましょう。
1つは、顧客との強い関係が作られていると言う点です。
ダイナミックプライシング導入のリスクとして、導入した事実による不信感から顧客離れにつながりやすいことがあります。ダイナミックプライシングを導入した事実が顧客離れにつながり、利用者が減少して長期的な収益を減少させてしまった企業も存在しています。しかし、価格面以外でコアなファンを抱えている企業ではダイナミックプライシングの導入が受け入れられやすいです。独自の価値を顧客に提供している遊園地である、ユニバーサルスタジオジャパンはダイナミックプライシングを導入しましたが、顧客離れが起きることはありませんでした。
asatteさんは、
- 毎日日替わり定食を提供するというシステム
- 生活の一環で利用しやすいランチ飲みに絞っていること
など、日常で利用されることに注力したモデルとなっていたため、コアなファンがついていたと思われます。そのために導入しても顧客離れがあまり起きていないのでしょう。
また、顧客との強い関係性は、混雑緩和のダイナミックプライシングが商売として利益を上げるための前提になります。
そもそも客の集中を防ぐためにある時間帯に値上げをした結果、他の時間帯に利用してもらうのではなく、他店舗を利用されてしまうのでは、商売として成り立ちません。
強い選ばれる理由のない飲食店の場合、顧客は需要が小さい時間帯での利用ではなく、他のお店に流れてしまいます。しかし強い選ばれる理由がある場合、顧客は店を変えるのではなく、時間帯を変えて安くなる時間帯に利用していただけるでしょう。このように、顧客との関係性の強さが混雑緩和に経済性をもたらすのです。
そしてそもそも、ダイナミックプライシングは、時間帯ごとの価格を顧客に認知されないと混雑緩和の価値を発揮しません。「安い時間に商品を購入したい」という顧客の思いを利用して来店タイミングを分散させるのですから当然ですよね。顧客に時間帯ごとの価格を知らせるためには、どうすれば良いのでしょうか?ここでも顧客との関係性の強さが重要になるのです。
asatteさんは、Instagramで3,000人ほどのフォロワーを獲得しており、そこで毎日のメニューを投稿しているため、顧客とのつながりを強く持てています。そのアカウントでダイナミックプライシングの導入と、時間帯ごとの価格を知らせることができたため、顧客の来店時間をコントロールできているのです。
こちらasatteさんのInstagramアカウントです。
2つ目は、値上げが「密集回避」という顧客のメリットにつながることです。
ダイナミックプライシングの導入は「儲け主義」だとみなされてしまうことがあります。心理的に値上げの方が顧客にインパクトがあるためそう思われてしまいがちなのです。そこから顧客離れに繋がってしまうケースも少なくありません。
しかし、値上げに顧客のメリットに繋がるような理由を示せれば、納得感は向上し、顧客離れは起きにくくなります。asatteさんの事例だと、ダイナミックプライシングによる値上げには「顧客の集中を防ぎ、密集を回避する」という理由があります。これがダイナミックプライシングが好意的に受け入れられている理由でしょう。
3つ目は、販売している商品が少ないことです。
飲食店のダイナミックプライシングが難しいとされる理由の1つに、商品点数の多さがあります。多くのダイナミックプライシングでは、商品ごとの需要予測を行い、それを元に収益最大化につながる価格変更を行います。しかし飲食店の場合、商品点数が多く、一つの商品の価格が変わると別の商品の需要にまで影響を及ぼすことが多いため、価格変更が収益最大化につながるように管理するのが難しいのです。さらに、ただ多くの商品を販売するわけではなく、多くの飲食店はハンバーガーとポテトのように商品をセットで販売することがあります。単品ではなく、セットで購入されることで利益をあげるような計画も練っていますが、ダイナミックプライシングはそれに支障をきたしてしまうかもしれないのです。
そのため、通常の飲食店ではダイナミックプライシングの導入は難しいと考えられています。
しかし、asatteさんのような、1つのメニューしか存在しないお店では、商品の需要というよりも、店全体の需要を元にして価格設定を行えるため、来客数といわかりやすい変数を元に価格変更が実施できます。つまり、効果的なダイナミックプライシングを簡単に設計しやすいのです。この単純なプライシングモデルなために、特に機械学習や自動化のツールを用いずとも、人力でダイナミックプライシングを行えているのです。
実際に、海外でダイナミックプライシングが効果を発揮している飲食店の多くは、品数の少ない完全予約型のコース料理店となっています。
ダイナミックプライシングの成功につながったasatteさんの特徴
- ・顧客と強い関係性が作れていること
- ・顧客にメリットがあること
- ・品数の少なさ
ダイナミックプライシングが飲食店で効果を発揮することは簡単ではありません。まさに、このような特徴を持つasatteさんだから実行できるシステムなのです。
こちらの記事では、ダイナミックプライシング導入に適している企業の特徴をまとめております。
asatteが抱える課題と解決策
asatteさんはダイナミックプライシングによって、これまでのピーク時間に人が殺到することを防ぐことができました。
しかし、現在の価格設定の結果、値下げした時間に人が殺到するという状態ができてしまっています。このような状況は、下の画像でいうところの、「高くても買う層」が少なかったことが原因だと考えられます。その層には「一般的に都合の良い時間帯での購入」「密集回避」という価値を提供するはずなののですが、顧客にとっては値下げの魅力が強く、安く購入できる時間に人が殺到し過ぎてしまっているのでしょう。
このような状況下では、混雑緩和も実現できないうえ、単価が安い商品の販売になるため収益拡大にもつながりません。この課題を解決するには、少し値下げの幅を小さくしたり、値上げの幅を小さくしたりする調整が有効だと考えられます。それにより、価格の安い時間帯に集中しすぎることを防ぐことができるのです。asatteさんは週に1度ほどのペースで価格改定を行っていくらしいので、徐々に調整していけるかと思います。
飲食店でのダイナミックプライシングの今後
asatteさんは
- 顧客と強い関係性が作れていること
- 顧客にメリットがあること
- 品数の少なさ
という特徴を持っていたために、ダイナミックプライシングが活用できました。それでは、飲食店にとってダイナミックプライシングは当然のものとなるのでしょうか?
結論としては、「前進していくが今は一般的には難しい」状況だと言えるかと思います。
そもそも、ダイナミックプライシングを行える飲食店向けツールがまだ存在しないため、科学的なアプローチでダイナミックプライシングを行うことが難しいです。科学的でない方法で無闇に価格を変動させると、多くの商品を扱う飲食店は、予測不可能な商品需要の変動が起きて、収益減退に繋がってしまう可能性もあります。
また、小売店のダイナミックプライシングのように、競合価格との価格競争に勝つための価格設定をすることも効果を発揮しません。小売店ほど、細かい価格差が客の購買意欲に影響を及ぼしにくいのです。
そして、商品価格の提示に紙のメニュー表を利用している場合、リアルタイムの価格変更を反映することもできません。
このような状況からも、現状飲食店がダイナミックプライシングを導入することは難しいと考えられます。
しかし、オンラインのレストラン予約サービス「TableCheck」でダイナミックプライシングの仕組みが導入されるなど、今後飲食業界にダイナミックプライシングの導入が広がっていく可能性はあるでしょう。
まとめ
飲食店にとって、集客数を減らすことは避けたいものです。withコロナで混雑回避が求められる中、asatteさんはダイナミックプライシングを活用して集客数を減らさずに密集を回避する店舗運営を可能にしています。
また密集を避ける目的以外にも、収益最大化のツールとしてもダイナミックプライシングは注目されるでしょう。しかし、現状飲食店ではダイナミックプライシングの導入により、収益最大化に対して高いパフォーマンスを発揮することは難しいと考えられます。
特に、飲食店のダイナミックプライシングはツール化もなされていないため、もしも導入をお考えの場合は、専門家へ相談することをおすすめします。
参考記事
Jタウンネット東京都
日本経済新聞
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しかし、近頃ダイナミックプライシングが飲食店に導入されたと話題になっているのです。
その事例を紐解きながら、飲食店のダイナミックプライシングについて考えていきます。
ニュースになった飲食店のダイナミックプライシング
6月の頭に投稿されたこちらのツイートがソーシャルバズを生んでいます。Kohei Katada(@kkatada)さんの、行きつけの定食屋さんがダイナミックプライシングを導入したというツイートです。
こちらで紹介されているのはasatteという表参道に店を構えている飲食店です。「3密」を回避することが飲食店にも求められる中、席数を減らさずに密集を回避することを目指してダイナミックプライシングを導入したようです。
密集回避に新しい観点から取り組んでいるとして、ネット上で話題になりました。さらにニュース番組でも取り上げられるほど注目度が高まっています。
ダイナミックプライシングが混雑緩和に対して果たす役割に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。
ダイナミックプライシングがうまく機能する理由
国内ではダイナミックプライシングが飲食店に導入されている事例はあまり見ません。飲食店との相性が悪いと考えられますが、なぜこの飲食店ではうまく機能しているのでしょうか?
asatteのダイナミックプライシングの特徴
まずはasatteさんの事例を考えるにあたり、店舗の特徴を把握しておく必要があります。asatteさんの最大の特徴はそのメニュー構成でしょう、なんとメニューは日替わり定食のみなのです。
また、ウェブサイトを持たず、3,000人ほどのフォロワーが閲覧するinstagram上で、その日のメニューを告知していることも珍しい点かと思います。
こんなasatteさんですが、新型コロナウイルスの拡大を受け、お弁当のみの販売のみを行ってきました。6月から店舗の営業を再開したものの、席数を減らすことで密集度を減らすことも、経営を成り立たせるためには難しい状況だったのです。
ここでasatteさんは、時間帯によって価格を変動させることで消費者の需要を分散させようと考えました。基本的な考え方は他業種で使われるダイナミックプライシングと同じです。
- 需要の集中する時間帯→価格を上げることで、需要を抑える。
- 需要が小さな時間帯⇨価格を下げることで、需要がピークの時間帯の顧客を呼び寄せる。
1つの商品の価格を、時間帯に応じて複数の値段に変動させることで、混雑状況をコントロールしようとしているのです。asatteさんでは、30分ごとに商品の価格が変わるようで、最も高い時間と、最も安い時間では700円もの価格差があるようです。これにより、導入を開始してまだ間もないですが、これまでのピーク時間にお客さんが集中することはなくなったそうです。
また、価格の変動幅は、目標とする売り上げから逆算して設定しているそうなので、集客に問題を及ばさないでいれば、売り上げや利益率に対しても問題はなさそうです。
asatteで導入が順調な理由3点
まだ完全に成功したと言うわけではないと思いますが、asatteさんのダイナミックプライシングは順調なようです。飲食業界はダイナミックプライシングの導入が進んでいない業界です。その中でasatteさんのダイナミックプライシングが順調な理由を考えてみましょう。
1つは、顧客との強い関係が作られていると言う点です。
ダイナミックプライシング導入のリスクとして、導入した事実による不信感から顧客離れにつながりやすいことがあります。ダイナミックプライシングを導入した事実が顧客離れにつながり、利用者が減少して長期的な収益を減少させてしまった企業も存在しています。しかし、価格面以外でコアなファンを抱えている企業ではダイナミックプライシングの導入が受け入れられやすいです。独自の価値を顧客に提供している遊園地である、ユニバーサルスタジオジャパンはダイナミックプライシングを導入しましたが、顧客離れが起きることはありませんでした。
asatteさんは、
- 毎日日替わり定食を提供するというシステム
- 生活の一環で利用しやすいランチ飲みに絞っていること
など、日常で利用されることに注力したモデルとなっていたため、コアなファンがついていたと思われます。そのために導入しても顧客離れがあまり起きていないのでしょう。
また、顧客との強い関係性は、混雑緩和のダイナミックプライシングが商売として利益を上げるための前提になります。
そもそも客の集中を防ぐためにある時間帯に値上げをした結果、他の時間帯に利用してもらうのではなく、他店舗を利用されてしまうのでは、商売として成り立ちません。
強い選ばれる理由のない飲食店の場合、顧客は需要が小さい時間帯での利用ではなく、他のお店に流れてしまいます。しかし強い選ばれる理由がある場合、顧客は店を変えるのではなく、時間帯を変えて安くなる時間帯に利用していただけるでしょう。このように、顧客との関係性の強さが混雑緩和に経済性をもたらすのです。
そしてそもそも、ダイナミックプライシングは、時間帯ごとの価格を顧客に認知されないと混雑緩和の価値を発揮しません。「安い時間に商品を購入したい」という顧客の思いを利用して来店タイミングを分散させるのですから当然ですよね。顧客に時間帯ごとの価格を知らせるためには、どうすれば良いのでしょうか?ここでも顧客との関係性の強さが重要になるのです。
asatteさんは、Instagramで3,000人ほどのフォロワーを獲得しており、そこで毎日のメニューを投稿しているため、顧客とのつながりを強く持てています。そのアカウントでダイナミックプライシングの導入と、時間帯ごとの価格を知らせることができたため、顧客の来店時間をコントロールできているのです。
こちらasatteさんのInstagramアカウントです。
2つ目は、値上げが「密集回避」という顧客のメリットにつながることです。
ダイナミックプライシングの導入は「儲け主義」だとみなされてしまうことがあります。心理的に値上げの方が顧客にインパクトがあるためそう思われてしまいがちなのです。そこから顧客離れに繋がってしまうケースも少なくありません。
しかし、値上げに顧客のメリットに繋がるような理由を示せれば、納得感は向上し、顧客離れは起きにくくなります。asatteさんの事例だと、ダイナミックプライシングによる値上げには「顧客の集中を防ぎ、密集を回避する」という理由があります。これがダイナミックプライシングが好意的に受け入れられている理由でしょう。
3つ目は、販売している商品が少ないことです。
飲食店のダイナミックプライシングが難しいとされる理由の1つに、商品点数の多さがあります。多くのダイナミックプライシングでは、商品ごとの需要予測を行い、それを元に収益最大化につながる価格変更を行います。しかし飲食店の場合、商品点数が多く、一つの商品の価格が変わると別の商品の需要にまで影響を及ぼすことが多いため、価格変更が収益最大化につながるように管理するのが難しいのです。さらに、ただ多くの商品を販売するわけではなく、多くの飲食店はハンバーガーとポテトのように商品をセットで販売することがあります。単品ではなく、セットで購入されることで利益をあげるような計画も練っていますが、ダイナミックプライシングはそれに支障をきたしてしまうかもしれないのです。
そのため、通常の飲食店ではダイナミックプライシングの導入は難しいと考えられています。
しかし、asatteさんのような、1つのメニューしか存在しないお店では、商品の需要というよりも、店全体の需要を元にして価格設定を行えるため、来客数といわかりやすい変数を元に価格変更が実施できます。つまり、効果的なダイナミックプライシングを簡単に設計しやすいのです。この単純なプライシングモデルなために、特に機械学習や自動化のツールを用いずとも、人力でダイナミックプライシングを行えているのです。
実際に、海外でダイナミックプライシングが効果を発揮している飲食店の多くは、品数の少ない完全予約型のコース料理店となっています。
ダイナミックプライシングの成功につながったasatteさんの特徴
- ・顧客と強い関係性が作れていること
- ・顧客にメリットがあること
- ・品数の少なさ
ダイナミックプライシングが飲食店で効果を発揮することは簡単ではありません。まさに、このような特徴を持つasatteさんだから実行できるシステムなのです。
こちらの記事では、ダイナミックプライシング導入に適している企業の特徴をまとめております。
asatteが抱える課題と解決策
asatteさんはダイナミックプライシングによって、これまでのピーク時間に人が殺到することを防ぐことができました。
しかし、現在の価格設定の結果、値下げした時間に人が殺到するという状態ができてしまっています。このような状況は、下の画像でいうところの、「高くても買う層」が少なかったことが原因だと考えられます。その層には「一般的に都合の良い時間帯での購入」「密集回避」という価値を提供するはずなののですが、顧客にとっては値下げの魅力が強く、安く購入できる時間に人が殺到し過ぎてしまっているのでしょう。
このような状況下では、混雑緩和も実現できないうえ、単価が安い商品の販売になるため収益拡大にもつながりません。この課題を解決するには、少し値下げの幅を小さくしたり、値上げの幅を小さくしたりする調整が有効だと考えられます。それにより、価格の安い時間帯に集中しすぎることを防ぐことができるのです。asatteさんは週に1度ほどのペースで価格改定を行っていくらしいので、徐々に調整していけるかと思います。
飲食店でのダイナミックプライシングの今後
asatteさんは
- 顧客と強い関係性が作れていること
- 顧客にメリットがあること
- 品数の少なさ
という特徴を持っていたために、ダイナミックプライシングが活用できました。それでは、飲食店にとってダイナミックプライシングは当然のものとなるのでしょうか?
結論としては、「前進していくが今は一般的には難しい」状況だと言えるかと思います。
そもそも、ダイナミックプライシングを行える飲食店向けツールがまだ存在しないため、科学的なアプローチでダイナミックプライシングを行うことが難しいです。科学的でない方法で無闇に価格を変動させると、多くの商品を扱う飲食店は、予測不可能な商品需要の変動が起きて、収益減退に繋がってしまう可能性もあります。
また、小売店のダイナミックプライシングのように、競合価格との価格競争に勝つための価格設定をすることも効果を発揮しません。小売店ほど、細かい価格差が客の購買意欲に影響を及ぼしにくいのです。
そして、商品価格の提示に紙のメニュー表を利用している場合、リアルタイムの価格変更を反映することもできません。
このような状況からも、現状飲食店がダイナミックプライシングを導入することは難しいと考えられます。
しかし、オンラインのレストラン予約サービス「TableCheck」でダイナミックプライシングの仕組みが導入されるなど、今後飲食業界にダイナミックプライシングの導入が広がっていく可能性はあるでしょう。
まとめ
飲食店にとって、集客数を減らすことは避けたいものです。withコロナで混雑回避が求められる中、asatteさんはダイナミックプライシングを活用して集客数を減らさずに密集を回避する店舗運営を可能にしています。
また密集を避ける目的以外にも、収益最大化のツールとしてもダイナミックプライシングは注目されるでしょう。しかし、現状飲食店ではダイナミックプライシングの導入により、収益最大化に対して高いパフォーマンスを発揮することは難しいと考えられます。
特に、飲食店のダイナミックプライシングはツール化もなされていないため、もしも導入をお考えの場合は、専門家へ相談することをおすすめします。
参考記事
Jタウンネット東京都
日本経済新聞
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