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2020.09.24(更新日:2023.07.13)

ダイナミックプライシング企業インタビュー01 akippa株式会社

ダイナミックプライシング企業インタビュー01 akippa株式会社
ダイナミックプライシング企業インタビュー01 akippa株式会社
その他・価格業界情報
#ダイナミックプライシング
#価格事例

ダイナミックプライシングは現在国内でも話題性が増してきています。情報を耳に入れる機会も増えてきているかと思います。しかし、実際に導入した企業の声を聞く機会はないのでしょうか。

プライスハックでは、ダイナミックプライシングを導入している企業や提供している企業に、直接インタビューをはじめました。

今回はその第一弾、akippa株式会社さんの記事です。

ダイナミックプライシングとは何かを知りたい方は、こちらの記事をご覧ください!

「akippa」とは?

–こんにちは。本日はakippa株式会社様がダイナミックプライシングの導入に至った経緯や、導入してみて感じたこと、そしてダイナミックプライシングの未来についてお聞かせいただけたら、と思います。早速なのですが、ダイナミックプライシングを導入したサービスであるakippaとはどんなサービスなのかについてご紹介ください。

田中:こんにちは。akippa株式会社でサービス運用全般の責任者をしている田中と申します。

さて、弊社のサービスであるakippaとは、「契約の無い月極駐車場」や「マンションの空き駐車場」など、様々なスペースを15分単位又は、1日単位で駐車場として貸し借りできるサービスです。

ビジネスモデルは非常にシンプルで、ドライバー様には会員登録頂き、一方で、駐車場オーナー様にはスペースを登録頂きます。初期費用・月額費用はそれぞれ、完全に無料で、予約が入った際のみにドライバーが駐車料金を支払う仕組みで収益が発生し、akippaは手数料を頂く形となります。akippaのサービスはおかげ様で、それぞれ累計で会員数は190万人、拠点数は39,000箇所と非常に利用されてきております。

akippaのビジネスモデル
akippaのビジネスモデル。ドライバーが駐車場を利用する際に支払いが発生し、その後akippaから駐車場オーナーに、報酬として貸し出し料金のおよそ50%が支払われる

–ご説明ありがとうございます。田中様は、どのようなお仕事に取り組まれているのでしょうか?

田中:先ほど申し上げたように、現在はサービス運用全般の責任者をしています。akippa株式会社への入社後の経歴としては、まず営業マネージャーとして大阪のドミナント戦略の成立に従事した後、社内のプライシングチームを立ち上げ、チームマネージャーとしてダイナミックプライシングをakippaのスタンダードにする業務に従事しました。

現在は、「ダイナミックプライシング」の他に、「カスタマーサクセス」「駐車場の掲載」「事業全体の売上の最大化」の4つを主な領域として日々、事業の成長と向き合いっています。

ダイナミックプライシング導入の経緯

–ありがとうございます。それではダイナミックプライシングの話にうつらせていただきます。まず、そもそもダイナミックプライシングは、akippaの中でどのように活用されているのでしょうか?

田中:「駐車場拠点の一部以外全て」をダイナミックプライシングを利用して、akippaがサービスプラットフォーマーとして値付けしています。

まず、前提としてakippaでの駐車場の値付けは二つに分かれています。日常生活での駐車場利用を想定した「定常料金」と、イベント等での駐車場利用を想定した「イベント料金」の2つです。これらの料金をダイナミックに変動させることで、駐車場単位の売上(単価×稼働率)を最大化させようとしています。例えば、「定常料金」の場合、平日の通勤需要では周辺コインパーキングよりやや低い金額で駐車場料金を設定し、「イベント料金」は休日の有名アーティストのコンサートがある日には、大きく価格を上げるといったイメージです。

–なるほど、それでは何故このダイナミックプライシングを導入しようと思ったのでしょうか?

田中: 結論から申し上げますと、駐車場オーナー様の収益と自社の業績を最大化するのに最適なソリューションだったからです。

akippaでは約3年前に、登録駐車場数とユーザー様の数の大幅な増加に伴い、全国で需給のバランスに応じた料金設定がやりきれていない点が事業課題としてあがってきました。この課題を解決し、需給に応じて収益を最大化する駐車場貸し出しを行える様に、本格的にダイナミックプライシングを開始しました。実は、akippaではサービス開始して間もないころから一部、ダイナミックプライシングによる値付けを導入していました。例えば、「阪神甲子園球場」で「阪神タイガース」の試合がある際には、球場周辺の駐車場料金を値上げするような形です。この実績があったため、3年前に価格戦略を再考した際に、一律料金やオークション価格などの他の価格戦略ではなく、ダイナミックプライシングを信頼でき、導入を決められました。

–本格導入を決めてから、どのように進めていったのでしょうか?

田中:まず、社内に「ダイナミックプライシングチーム」を立ち上げて国内事例等を探しました。しかし、コインパーキングは、看板での価格通知や精算機の設定上の課題があり、細かい料金変更をすることは難しいようで、私の調べた範囲では、しっかりと「ダイナミックプライシング」を導入している事業者様は無さそうでした。また、ホテル等他業界のアルゴリズムを利用しても一定効果は発揮しそうでしたが、やはり自社のデータと完全にマッチするイメージは無さそうでした。これらを踏まえ、「マーケットリーダーとして、しっかりダイナミックプライシングの概念を取り入れ、成立させる必要があるな」と感じたのを覚えています。

そして実際に、以前から行っていたダイナミックプライシングをアップデートして、より需要と供給に応じた価格設定ができるように仕組みを作っていきました。主には、「イベント料金」で参照するイベントや要素の範囲を広げることで、正確に需給に応じた価格設定ができるようにしてきました。

そうした結果、需給ギャップを最小限に抑え、ユーザー様にとってはご納得頂ける価格オーナー様にとっては収益が最大化する価格での運用をしていけるようになりました。もちろん、「全国全ての駐車場で完全に需給バランスを取り切れている」という状況では無いですので、今も料金設定におけるアルゴリズムの調整はし続けていて、日々、PDCAを回している状況です。多くのPDCAを回し、アップデートさせてきたため、今では「akippa」のダイナミックプライシングは日本の駐車場業界ではかなり先行していると感じています。

ダイナミックプライシング導入のメリットとデメリット

–それでは、ダイナミックプライシングを実際に活用してきた中でどんなメリットを感じられましたか?

田中:メリットは何と言っても「売上」が目に見えて上がっていく点です。ユーザー様は様々な要素から「この駐車場を予約しよう」と判断しますが、中でも「場所(立地)」と「価格」は最重要な項目だと考えています。その最重要な項目である「価格」を変更し続けることで、ユーザー様が納得し、かつオーナー様の利益を最大化できる価格で販売することや、利用されていなかった時間帯や場所の駐車場を販売することができていたのです。

これにより駐車場の売上があがることで、駐車場オーナー様や、駐車場を獲得して下さるパートナー様の収益にも繋がるため、ダイナミックプライシングはユーザー様もオーナー様も満足する素晴らしい仕組みだと思っています。

また、ダイナミックプライシングによる自動値付けは、全国の駐車場の価格を正確にかつ素早く決定していくことにも役立ちました。

–ありがとうございます。逆にダイナミックプライシング導入の際に感じた注意点や、気をつけていたことはございましたか?

田中:もちろん、ダイナミックプライシングを活用する中で、注意しないとといけないと感じることもありました。過去に経験したことのない状況で値付けを行う際に、値段を適切に設定することができず、ユーザー様がakippaとは違う駐車場に流れてしまうことが少なからず起きてしまうのです。例えば、新型コロナウイルスの影響で、イベントの集客上限が5,000人とされる、といったケースがありましたが、こういったケースが、過去に経験したことがなく、値付けが難しい状況だったといえます。

このような注意点があったため、akippaとして気をつけたのは、顧客離れを起こさない価格設定と、PDCAの徹底です。ダイナミックプライシングだとしても、ユーザー様に不審に思われる様な価格設定を避けることや、仮に一時的に利用されない価格設定をしてしまったとしても、即時にダイナミックプライシングで価格を設定し直すというPDCAを行いました。

ダイナミックプライシングの未来

–ありがとうございます。近日話題を読んでいるダイナミックプライシングですが、導入企業の目線から、ダイナミックプライシングが世に広がっていくことについてどう思われますか?

田中:我々は「駐車場」の専門家であり、それ以外の産業について構造的に理解しきれている訳では無い前提ですが、多くの産業においてこのダイナミックプライシングは導入されるべきだと感じています。「価格が需給に応じて変更される」という考え方は、社会的に効率的であり、合理性が高いという背景は間違いなくそうだと思います。ただ、価格を決定するプラットフォーマー側の責任は重く、消費者の方に不信感を与えないような設定を常に模索しつづける必要があると感じています。

 まだ多くの産業においてダイナミックプライシングの仕組みは構築されていなくて手探りの状況だと思いますが、関係者で協力して、しっかりとこの概念・市場を成立させていきたいです。どの産業でもオンライン化は進んでいるものの、そこに適応していく企業ばかりではありません。だからこそ、プライシングスタジオさんのようなプライステック事業者様や、実際に導入している我々akippaのような企業がそれぞれの役割を果たしていくことが重要だと思っています。

また別の背景として、akippaは「あなたの”あいたい”をつなぐ」というビジョンを掲げています。このビジョンに対して「駐車場の値段が高くて使えない」といった理由で、会いたい人に会えないという課題を解決する手法としてダイナミックプライシングは収益面だけではなく、ビジョンに沿った手段だと感じています。ビジョンに沿った手段であり、社会的な意義も大きいダイナミックプライシングの概念の浸透には今後も積極的に協力していきたいと考えています。

まとめ

以上がakippa株式会社の田中様に行ったインタビューの内容となります。

ダイナミックプライシングの導入を進める経緯、ダイナミックプライシングが事業に与えるインパクトの大きさ、そしてダイナミックプライシングの未来について、実際にダイナミックプライシング導入企業のお話を届けられたのは、大きな価値があったと感じています。

ダイナミックプライシングに関する高い解像度での理解を促進するため、これからもダイナミックプライシング導入のリアルを、インタビューを通じてお届けします!ご注目ください。

今回インタビューでも取り上げていた、ダイナミックプライシングのメリットデメリット導入に適している企業についてまとめた記事は以下のリンクからご覧になられます。



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Yoshihiro Takahashi

高橋 嘉尋

プライシングスタジオ株式会社

代表取締役CEO

プライシングスタジオ株式会社代表取締役 CEO。2019年、慶應義塾大学総合政策学部在学中に価格1%が企業の営業利益を約20%の改善につながるということを知り、その影響力に魅力を感じ、当社を設立。プライシングスタジオは設立以来、30以上の業界、100以上のサービスの値付けを支援している。著書に「値決めの教科書 勘と経験に頼らないプライシングの新常識」(日経BP)。「日経トップリーダー・ビジネス」にて「値決めの科学」、「ダイヤモンドオンライン」にて「価格戦略のプロが見た「あの値付け」」を連載中。「日経COMEMO」キーオピニオンリーダー。そのほか、テレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」、ABEMA「ABEMA Prime」、NewsPicks「メイクマネー」など多数メディアに出演。2023年Forbesによる「アジアを代表する30才未満の30人」に部門で選出される。

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プライスハックでは、ダイナミックプライシングを導入している企業や提供している企業に、直接インタビューをはじめました。

今回はその第一弾、akippa株式会社さんの記事です。

ダイナミックプライシングとは何かを知りたい方は、こちらの記事をご覧ください!

「akippa」とは?

–こんにちは。本日はakippa株式会社様がダイナミックプライシングの導入に至った経緯や、導入してみて感じたこと、そしてダイナミックプライシングの未来についてお聞かせいただけたら、と思います。早速なのですが、ダイナミックプライシングを導入したサービスであるakippaとはどんなサービスなのかについてご紹介ください。

田中:こんにちは。akippa株式会社でサービス運用全般の責任者をしている田中と申します。

さて、弊社のサービスであるakippaとは、「契約の無い月極駐車場」や「マンションの空き駐車場」など、様々なスペースを15分単位又は、1日単位で駐車場として貸し借りできるサービスです。

ビジネスモデルは非常にシンプルで、ドライバー様には会員登録頂き、一方で、駐車場オーナー様にはスペースを登録頂きます。初期費用・月額費用はそれぞれ、完全に無料で、予約が入った際のみにドライバーが駐車料金を支払う仕組みで収益が発生し、akippaは手数料を頂く形となります。akippaのサービスはおかげ様で、それぞれ累計で会員数は190万人、拠点数は39,000箇所と非常に利用されてきております。

akippaのビジネスモデル
akippaのビジネスモデル。ドライバーが駐車場を利用する際に支払いが発生し、その後akippaから駐車場オーナーに、報酬として貸し出し料金のおよそ50%が支払われる

–ご説明ありがとうございます。田中様は、どのようなお仕事に取り組まれているのでしょうか?

田中:先ほど申し上げたように、現在はサービス運用全般の責任者をしています。akippa株式会社への入社後の経歴としては、まず営業マネージャーとして大阪のドミナント戦略の成立に従事した後、社内のプライシングチームを立ち上げ、チームマネージャーとしてダイナミックプライシングをakippaのスタンダードにする業務に従事しました。

現在は、「ダイナミックプライシング」の他に、「カスタマーサクセス」「駐車場の掲載」「事業全体の売上の最大化」の4つを主な領域として日々、事業の成長と向き合いっています。

ダイナミックプライシング導入の経緯

–ありがとうございます。それではダイナミックプライシングの話にうつらせていただきます。まず、そもそもダイナミックプライシングは、akippaの中でどのように活用されているのでしょうか?

田中:「駐車場拠点の一部以外全て」をダイナミックプライシングを利用して、akippaがサービスプラットフォーマーとして値付けしています。

まず、前提としてakippaでの駐車場の値付けは二つに分かれています。日常生活での駐車場利用を想定した「定常料金」と、イベント等での駐車場利用を想定した「イベント料金」の2つです。これらの料金をダイナミックに変動させることで、駐車場単位の売上(単価×稼働率)を最大化させようとしています。例えば、「定常料金」の場合、平日の通勤需要では周辺コインパーキングよりやや低い金額で駐車場料金を設定し、「イベント料金」は休日の有名アーティストのコンサートがある日には、大きく価格を上げるといったイメージです。

–なるほど、それでは何故このダイナミックプライシングを導入しようと思ったのでしょうか?

田中: 結論から申し上げますと、駐車場オーナー様の収益と自社の業績を最大化するのに最適なソリューションだったからです。

akippaでは約3年前に、登録駐車場数とユーザー様の数の大幅な増加に伴い、全国で需給のバランスに応じた料金設定がやりきれていない点が事業課題としてあがってきました。この課題を解決し、需給に応じて収益を最大化する駐車場貸し出しを行える様に、本格的にダイナミックプライシングを開始しました。実は、akippaではサービス開始して間もないころから一部、ダイナミックプライシングによる値付けを導入していました。例えば、「阪神甲子園球場」で「阪神タイガース」の試合がある際には、球場周辺の駐車場料金を値上げするような形です。この実績があったため、3年前に価格戦略を再考した際に、一律料金やオークション価格などの他の価格戦略ではなく、ダイナミックプライシングを信頼でき、導入を決められました。

–本格導入を決めてから、どのように進めていったのでしょうか?

田中:まず、社内に「ダイナミックプライシングチーム」を立ち上げて国内事例等を探しました。しかし、コインパーキングは、看板での価格通知や精算機の設定上の課題があり、細かい料金変更をすることは難しいようで、私の調べた範囲では、しっかりと「ダイナミックプライシング」を導入している事業者様は無さそうでした。また、ホテル等他業界のアルゴリズムを利用しても一定効果は発揮しそうでしたが、やはり自社のデータと完全にマッチするイメージは無さそうでした。これらを踏まえ、「マーケットリーダーとして、しっかりダイナミックプライシングの概念を取り入れ、成立させる必要があるな」と感じたのを覚えています。

そして実際に、以前から行っていたダイナミックプライシングをアップデートして、より需要と供給に応じた価格設定ができるように仕組みを作っていきました。主には、「イベント料金」で参照するイベントや要素の範囲を広げることで、正確に需給に応じた価格設定ができるようにしてきました。

そうした結果、需給ギャップを最小限に抑え、ユーザー様にとってはご納得頂ける価格オーナー様にとっては収益が最大化する価格での運用をしていけるようになりました。もちろん、「全国全ての駐車場で完全に需給バランスを取り切れている」という状況では無いですので、今も料金設定におけるアルゴリズムの調整はし続けていて、日々、PDCAを回している状況です。多くのPDCAを回し、アップデートさせてきたため、今では「akippa」のダイナミックプライシングは日本の駐車場業界ではかなり先行していると感じています。

ダイナミックプライシング導入のメリットとデメリット

–それでは、ダイナミックプライシングを実際に活用してきた中でどんなメリットを感じられましたか?

田中:メリットは何と言っても「売上」が目に見えて上がっていく点です。ユーザー様は様々な要素から「この駐車場を予約しよう」と判断しますが、中でも「場所(立地)」と「価格」は最重要な項目だと考えています。その最重要な項目である「価格」を変更し続けることで、ユーザー様が納得し、かつオーナー様の利益を最大化できる価格で販売することや、利用されていなかった時間帯や場所の駐車場を販売することができていたのです。

これにより駐車場の売上があがることで、駐車場オーナー様や、駐車場を獲得して下さるパートナー様の収益にも繋がるため、ダイナミックプライシングはユーザー様もオーナー様も満足する素晴らしい仕組みだと思っています。

また、ダイナミックプライシングによる自動値付けは、全国の駐車場の価格を正確にかつ素早く決定していくことにも役立ちました。

–ありがとうございます。逆にダイナミックプライシング導入の際に感じた注意点や、気をつけていたことはございましたか?

田中:もちろん、ダイナミックプライシングを活用する中で、注意しないとといけないと感じることもありました。過去に経験したことのない状況で値付けを行う際に、値段を適切に設定することができず、ユーザー様がakippaとは違う駐車場に流れてしまうことが少なからず起きてしまうのです。例えば、新型コロナウイルスの影響で、イベントの集客上限が5,000人とされる、といったケースがありましたが、こういったケースが、過去に経験したことがなく、値付けが難しい状況だったといえます。

このような注意点があったため、akippaとして気をつけたのは、顧客離れを起こさない価格設定と、PDCAの徹底です。ダイナミックプライシングだとしても、ユーザー様に不審に思われる様な価格設定を避けることや、仮に一時的に利用されない価格設定をしてしまったとしても、即時にダイナミックプライシングで価格を設定し直すというPDCAを行いました。

ダイナミックプライシングの未来

–ありがとうございます。近日話題を読んでいるダイナミックプライシングですが、導入企業の目線から、ダイナミックプライシングが世に広がっていくことについてどう思われますか?

田中:我々は「駐車場」の専門家であり、それ以外の産業について構造的に理解しきれている訳では無い前提ですが、多くの産業においてこのダイナミックプライシングは導入されるべきだと感じています。「価格が需給に応じて変更される」という考え方は、社会的に効率的であり、合理性が高いという背景は間違いなくそうだと思います。ただ、価格を決定するプラットフォーマー側の責任は重く、消費者の方に不信感を与えないような設定を常に模索しつづける必要があると感じています。

 まだ多くの産業においてダイナミックプライシングの仕組みは構築されていなくて手探りの状況だと思いますが、関係者で協力して、しっかりとこの概念・市場を成立させていきたいです。どの産業でもオンライン化は進んでいるものの、そこに適応していく企業ばかりではありません。だからこそ、プライシングスタジオさんのようなプライステック事業者様や、実際に導入している我々akippaのような企業がそれぞれの役割を果たしていくことが重要だと思っています。

また別の背景として、akippaは「あなたの”あいたい”をつなぐ」というビジョンを掲げています。このビジョンに対して「駐車場の値段が高くて使えない」といった理由で、会いたい人に会えないという課題を解決する手法としてダイナミックプライシングは収益面だけではなく、ビジョンに沿った手段だと感じています。ビジョンに沿った手段であり、社会的な意義も大きいダイナミックプライシングの概念の浸透には今後も積極的に協力していきたいと考えています。

まとめ

以上がakippa株式会社の田中様に行ったインタビューの内容となります。

ダイナミックプライシングの導入を進める経緯、ダイナミックプライシングが事業に与えるインパクトの大きさ、そしてダイナミックプライシングの未来について、実際にダイナミックプライシング導入企業のお話を届けられたのは、大きな価値があったと感じています。

ダイナミックプライシングに関する高い解像度での理解を促進するため、これからもダイナミックプライシング導入のリアルを、インタビューを通じてお届けします!ご注目ください。

今回インタビューでも取り上げていた、ダイナミックプライシングのメリットデメリット導入に適している企業についてまとめた記事は以下のリンクからご覧になられます。



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Yoshihiro Takahashi

高橋 嘉尋

プライシングスタジオ株式会社

代表取締役CEO

プライシングスタジオ株式会社代表取締役 CEO。2019年、慶應義塾大学総合政策学部在学中に価格1%が企業の営業利益を約20%の改善につながるということを知り、その影響力に魅力を感じ、当社を設立。プライシングスタジオは設立以来、30以上の業界、100以上のサービスの値付けを支援している。著書に「値決めの教科書 勘と経験に頼らないプライシングの新常識」(日経BP)。「日経トップリーダー・ビジネス」にて「値決めの科学」、「ダイヤモンドオンライン」にて「価格戦略のプロが見た「あの値付け」」を連載中。「日経COMEMO」キーオピニオンリーダー。そのほか、テレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」、ABEMA「ABEMA Prime」、NewsPicks「メイクマネー」など多数メディアに出演。2023年Forbesによる「アジアを代表する30才未満の30人」に部門で選出される。

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