目次
LTV(顧客生涯価値)とは
LTVとは、Life Time Value(ライフタイムバリュー)の略で、日本語では顧客生涯価値のことです。LTV(顧客生涯価値)とは、顧客1人が生涯のうちに、企業にもたらす利益がどれくらいあるかを算出したものです。新規顧客を獲得時にどれくらいの利益が将来的にもたらせるかが分かる指標となります。
LTV(顧客生涯価値)の目的と計算方法
LTV(顧客生涯価値)は、売上ベースと利益ベースが存在し、一般的には利益ベースで語られることが多い概念です。そのため本記事のLTVの説明は、利益ベースについて説明します。なお小売業界では、売上LTVで計算する場合もあります。
LTVの計算方法は、目的ごとに計算式が異なります。ここでの目的は、大きく分けて3つあります。
- LTVが高い注力商材を知る
- LTVが高い注力顧客を知る
- 目標解約率を知る
これらについてそれぞれの解説と計算式を紹介します。
⽬的①:商材ごとにLTVを⽐較し、LTVが⾼い商材を知る。
LTVが高い商材ほど、その1つの商品を売ることでもたらされる利益が大きいことを指します。
商材ごとにLTVを比較し、LTVが高い商材を知りたい場合、基本式は下記の式となります。
ここからSaaS商材と小売店それぞれの場合で、具体的な数値を使って、説明していきます。
<SaaS商材の場合>
例えば以下3つのSaaSサービスがあったとします。それぞれのサービスのLTVを計算していきます。
サービスA:「単価2万円∕⽉、粗利率40%、平均購⼊期間5年」
- 計算式:2万円×40%×60ヶ⽉=48万円
サービスB:「単価10万円∕⽉、粗利率20%、平均購⼊期間2年」
- 計算式:10万円×20%×24ヶ⽉=48万円
サービスC:「単価5万円/⽉、粗利率30%、平均購⼊期間4年」
- 計算式:5万円×30%×48ヶ⽉=72万円
ここから分かることとして、LTVの⾼い商材は「サービスC」と分かり、サービスCが最も販売に注力すべき商材ということがわかります。
<小売店の場合>
例えば以下2つのメニューがあったとします。こちらもそれぞれのLTVを求めていきます。
メニューA:単価1000円、粗利率15%、平均購⼊回数10回(来店回数∕⽉)
- 計算式: 1000円×15%×10回=1500円
メニューB:単価2000円、粗利率20%、平均購⼊回数3回(来店回数∕⽉ )
- 計算式:2000円×20%×3回=1200円
ここから分かることとして、LTVの⾼いメニューは「メニューA」 と分かり、メニューAが最も販売に注力すべき商品ということがわかります。
【CAC(新規顧客獲得費用)の求め方】
商材ごとに算出したLTVの活用例として、「その商材に対して、いくらまでの新規獲得費⽤(CAC) を投資できるかを算出する 」ことが挙げられます。
CACとは顧客1人を獲得するために費やしたコストを意味し、広告費だけではなく、マーケティング費用・人件費など様々なコストを合計したものです。
一般的にLTVがCACの3倍以上であると、企業は健全といわれています。つまりこれを式で表すと下記のようになれば企業は健全となります。
LTV≧CAC×3
LTVがCACの1倍以上でも利益は出ますが、LTVは将来的な長い期間を見なければならなく、キャッシュフローにおいて問題になることがあるため、3倍以上という状態を目指すことが重要です。
先程のSaaS商材のサービスAの例で、CACについて考えてみると、サービスAのLTVは48万だったので、健全な経営を前提に、広告費だけではなく、マーケティング費⽤・⼈件費など顧客1⼈を獲得するために費やせるコストであるCACは48万÷3=16万と求めることができます。
⽬的②:顧客ごとにLTVを⽐較し、優良顧客・注⼒顧客を決める
LTVが高い顧客ほど、その顧客に商品を売ることでもたらされる利益が大きいことを指します。
顧客ごとにLTVを比較し、注力すべき顧客を見つけることを目的とした場合の計算式は下記の式となります。
例えば、顧客の年齢によってもたらされる利益が異なるのではないかという仮説があった場合、年齢ごとにLTVを算出することで自社がメインターゲットとすべき年齢層がわかります。
下記は「30歳以上の顧客(A)」と「30歳未満の顧客(B)」のLTVを比較した例です。
- 顧客属性A(30歳以上):平均購⼊単価2000円×粗利20%×5ヶ ⽉=2000円
- 顧客属性B(30歳未満):平均購⼊単価1000円×粗利率10%×10ヶ ⽉ =1000円
→注⼒すべきLTVの⾼い顧客は「顧客属性A」だと分かります。
この計算式は、新規顧客に対して、投資した獲得費⽤が、収益性が担保されている範囲内に収まっているかを確認する際に、活用できます。
先ほども説明したようにLTV÷CAC=3以上だと健全な経営状態といわれています。この「3」という数字は、「1人顧客あたりの採算性」を示しており、別名ユニットエコノミクスと呼ばれています。
ある若年層顧客(平均単価2万円∕⽉、粗利率40%、平均購 ⼊期間5年)の獲得に20万円(CAC)の費用がかかったと仮定すると
- LTV=2万円×40%×60ヶ⽉=48万円
- 48万円(LTV)÷20万円(CAC)=2.4(ユニットエコノミクス)
この式から、ユニットエコノミクス(LTV÷CAC)が3以下となっているので、このCACだと、経営状態的に健全ではないと定義上判断することができます。
⽬的③:解約率に応じてどのくらいLTVが改善するかを計算する
商材ごとのLTVを算出したくても購入期間や購入頻度が不明のケースも考えられます。
そうした購⼊期間が不明の場合、解約率を基準にLTVを⽐較することができます。
SaaS商材にて、顧客の平均購入単価が1万円で、 解約率が5%のケースと解約率が10%のケースのLTVを求める場合、
解約率が5%の場合、
- LTV = 1万円 ÷ 0.05= 20万円
解約率が10%の場合、
- LTV=1万円 ÷ 0.1=10万円
とLTVを算出することができ、それぞれどれくらいの解約率にすれば、どのくらいLTVが改善されるかを明らかにすることができます。
この計算⽅法では、顧客の平均単価(平均的な購⼊額)を解約率で割ることで、顧客の⽣涯価値を推定しています。解約率が低ければ顧客の継続期間が⻑くなり、LTVは増加します。一方、解約率が⾼ければ顧客の継続期間が短くなり、LTVは減少します。
⼩売業界のLTVの注意点
先ほど、LTVは基本的には、利益ベースで考えると説明しましたが、小売業界の場合、期間の求め⽅が特殊なので、売上LTVを⽤いるケースもあります。ですが、まずは小売業界の利益LTVの計算方法について説明します。
小売業界の利益LTVの計算式は下記の式となります。
「来店回数」については、顧客⼀⼈が週や⽉当たりに購⼊する回数として考えます。また、「顧客継続期間」については以下のプロセスで定義します。
①⽐較的⾼い頻度で利⽤してくれる顧客、すなわち「アクティブユーザー」を何らかの⽅法で定義します。たとえば「3か⽉間に1回も買い物をしていなかったらアクティブユーザーではないものとみなす」など、⾃社の業態に合わせ て「常連」と⾔える期間・頻度を設定します。
②「アクティブユーザー」を定義したうえで、⾃社の業態に合わせて適切な顧客の購買⾏動データを取得し、継続期間を測定することが望ましいでしょう。
「⽬的①LTVが高い注力商材を知る」が目的だった場合、一例として、次の数値をもとに計算することができます。
<例:コンビニ>
- 1回あたりの平均購⼊単価=1,000円
- 利益率=10%
- 来店回数(1⽉あたり)=10回
- 顧客継続期間=1年間
LTV=1,000円×0.1×10回/月×12カ月=12,000円
と求めらることができます。しかし、先ほども説明したように、計算が簡単なため、売上LTVで計算する場合もあります。
たとえば「ECとリアル店舗の⽐較」、「WEBブラウザ経由とアプリ経由の⽐較」などのように、異なるセグメント間で⽐較するのであれば、コストはいったん度外視して「売上」でLTVを計算するのも⼀つの⽅法です。
売上LTVの求め⽅は、上述した計算式の中から、「粗利率」を除いた計算式になります。
LTV(顧客生涯価値)が重要な4つの理由
LTVの把握が重要な理由として、顧客獲得以外にも次の点があげられます。
理由①:様々な部署で共通したKPIとして活用できる
LTVは、収益性と顧客の維持の程度を組みあわせた指標であるため、さまざまな顧客獲得の手法の成否を、その顧客のLTVから評価できます。
「営業をし続けた結果得た顧客」「マーケティングに力を入れて獲得した顧客」など、顧客獲得手法ごとに得た顧客のLTVを比較することで、力を入れるべき方向性への示唆を得られます。
理由②:ペルソナ決定に利用できる
サービス成長にあたり、理想的なペルソナの顧客を増やしていくことが重要です。理想的なペルソナの選定を「LTVの高さ」という観点から行い、LTVが高くなる顧客属性を分析することで、そのような顧客の獲得、もしくは利用を継続させる施策をおこなえます。
理由③:リテンション施策の評価に利用できる
LTVでは、顧客の維持を測れるので、顧客の継続利用を促すための取り組みや、追加購入されたものが、どのように顧客の維持に影響したかを理解できます。これにより、長期利用されるために、製品開発や施策設計の改善が可能です。
理由④:財務戦略で活用する
平均的なLTVを算出しておくことで、新規顧客の獲得が、長期的なキャッシュに与える影響を予測可能になります。これにより、成長戦略の立案や、マーケティング費用の査定が、財務の目線から可能です。
LTV(顧客生涯価値)を上げる3つの方法
LTVを上げるための3つの方法を紹介します。
方法①:支払い意欲に応じたプライシング戦略
支払い意欲に応じたプライシング戦略とは、支払い意欲の高い顧客には高い価格プランを用意し、支払い意欲の低い顧客には低い価格プランを用意するように、顧客の支払い意欲に応じて、アップセルプラン・クロスセルプラン・ダウンセルプランを用意することです。
支払い意欲に応じたプライシングをすることは、平均顧客単価と解約率を改善することが可能です。平均顧客単価と解約率を改善できれば、LTVは向上します。
特に、顧客単価をあげるアップセルは、LTVの拡大に繋がりやすいです。しかし、単発のアップセルでは長期的にみたLTVに大きな影響を与えないため、アップセルした場合の利用期間を継続してもらえる施策は検討しなければいけません。
方法②:サービスラインの拡大
複数のサービスを展開している企業の場合、1サービスを利用する顧客に対して、その繋がりを使って、別のサービスを販売することで、LTV向上を目指すことができます。
方法③:顧客満足度の向上
顧客満足度は、その後の解約率やリピート率に大きく影響します。
顧客がどういったポイントに価値を感じているのかを把握し、より提供価値を高めるためにサービス開発へ投資していくことでLTV向上を目指していくことができます。
アンケートなどで顧客の声を確認したり、カスタマーサクセスの強化やCRMやSFAの活用など幅広い取り組みが挙げられます。
補足:割引を行うとLTVはどうなるのか?
割引の実施は、結果的に平均LTVを下げてしまうリスクがあります。割引は短期的な収益を改善することができますが、それによって集まる顧客は、長期的に会社にとって有益でない可能性があります。
通常価格で買わなかった顧客は、値上げに敏感に反応してしまう顧客が多いです。そのため、自ずと解約率が高くなってしまいます。そして、価格の低さと解約率の高さからLTVが低くなってしまいます。
まとめ
LTVは、顧客がもたらす継続的な企業への価値を表します。
顧客単価や継続期間・継続率を包括した指標であるLTVを追跡することで、商品・サービスの状態を理解できます。
LTVを活用することで、より見通しの良い経営が可能になるでしょう。
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LTV(顧客生涯価値)の目的と計算方法
LTV(顧客生涯価値)は、売上ベースと利益ベースが存在し、一般的には利益ベースで語られることが多い概念です。そのため本記事のLTVの説明は、利益ベースについて説明します。なお小売業界では、売上LTVで計算する場合もあります。
LTVの計算方法は、目的ごとに計算式が異なります。ここでの目的は、大きく分けて3つあります。
- LTVが高い注力商材を知る
- LTVが高い注力顧客を知る
- 目標解約率を知る
これらについてそれぞれの解説と計算式を紹介します。
⽬的①:商材ごとにLTVを⽐較し、LTVが⾼い商材を知る。
LTVが高い商材ほど、その1つの商品を売ることでもたらされる利益が大きいことを指します。
商材ごとにLTVを比較し、LTVが高い商材を知りたい場合、基本式は下記の式となります。
ここからSaaS商材と小売店それぞれの場合で、具体的な数値を使って、説明していきます。
<SaaS商材の場合>
例えば以下3つのSaaSサービスがあったとします。それぞれのサービスのLTVを計算していきます。
サービスA:「単価2万円∕⽉、粗利率40%、平均購⼊期間5年」
- 計算式:2万円×40%×60ヶ⽉=48万円
サービスB:「単価10万円∕⽉、粗利率20%、平均購⼊期間2年」
- 計算式:10万円×20%×24ヶ⽉=48万円
サービスC:「単価5万円/⽉、粗利率30%、平均購⼊期間4年」
- 計算式:5万円×30%×48ヶ⽉=72万円
ここから分かることとして、LTVの⾼い商材は「サービスC」と分かり、サービスCが最も販売に注力すべき商材ということがわかります。
<小売店の場合>
例えば以下2つのメニューがあったとします。こちらもそれぞれのLTVを求めていきます。
メニューA:単価1000円、粗利率15%、平均購⼊回数10回(来店回数∕⽉)
- 計算式: 1000円×15%×10回=1500円
メニューB:単価2000円、粗利率20%、平均購⼊回数3回(来店回数∕⽉ )
- 計算式:2000円×20%×3回=1200円
ここから分かることとして、LTVの⾼いメニューは「メニューA」 と分かり、メニューAが最も販売に注力すべき商品ということがわかります。
【CAC(新規顧客獲得費用)の求め方】
商材ごとに算出したLTVの活用例として、「その商材に対して、いくらまでの新規獲得費⽤(CAC) を投資できるかを算出する 」ことが挙げられます。
CACとは顧客1人を獲得するために費やしたコストを意味し、広告費だけではなく、マーケティング費用・人件費など様々なコストを合計したものです。
一般的にLTVがCACの3倍以上であると、企業は健全といわれています。つまりこれを式で表すと下記のようになれば企業は健全となります。
LTV≧CAC×3
LTVがCACの1倍以上でも利益は出ますが、LTVは将来的な長い期間を見なければならなく、キャッシュフローにおいて問題になることがあるため、3倍以上という状態を目指すことが重要です。
先程のSaaS商材のサービスAの例で、CACについて考えてみると、サービスAのLTVは48万だったので、健全な経営を前提に、広告費だけではなく、マーケティング費⽤・⼈件費など顧客1⼈を獲得するために費やせるコストであるCACは48万÷3=16万と求めることができます。
⽬的②:顧客ごとにLTVを⽐較し、優良顧客・注⼒顧客を決める
LTVが高い顧客ほど、その顧客に商品を売ることでもたらされる利益が大きいことを指します。
顧客ごとにLTVを比較し、注力すべき顧客を見つけることを目的とした場合の計算式は下記の式となります。
例えば、顧客の年齢によってもたらされる利益が異なるのではないかという仮説があった場合、年齢ごとにLTVを算出することで自社がメインターゲットとすべき年齢層がわかります。
下記は「30歳以上の顧客(A)」と「30歳未満の顧客(B)」のLTVを比較した例です。
- 顧客属性A(30歳以上):平均購⼊単価2000円×粗利20%×5ヶ ⽉=2000円
- 顧客属性B(30歳未満):平均購⼊単価1000円×粗利率10%×10ヶ ⽉ =1000円
→注⼒すべきLTVの⾼い顧客は「顧客属性A」だと分かります。
この計算式は、新規顧客に対して、投資した獲得費⽤が、収益性が担保されている範囲内に収まっているかを確認する際に、活用できます。
先ほども説明したようにLTV÷CAC=3以上だと健全な経営状態といわれています。この「3」という数字は、「1人顧客あたりの採算性」を示しており、別名ユニットエコノミクスと呼ばれています。
ある若年層顧客(平均単価2万円∕⽉、粗利率40%、平均購 ⼊期間5年)の獲得に20万円(CAC)の費用がかかったと仮定すると
- LTV=2万円×40%×60ヶ⽉=48万円
- 48万円(LTV)÷20万円(CAC)=2.4(ユニットエコノミクス)
この式から、ユニットエコノミクス(LTV÷CAC)が3以下となっているので、このCACだと、経営状態的に健全ではないと定義上判断することができます。
⽬的③:解約率に応じてどのくらいLTVが改善するかを計算する
商材ごとのLTVを算出したくても購入期間や購入頻度が不明のケースも考えられます。
そうした購⼊期間が不明の場合、解約率を基準にLTVを⽐較することができます。
SaaS商材にて、顧客の平均購入単価が1万円で、 解約率が5%のケースと解約率が10%のケースのLTVを求める場合、
解約率が5%の場合、
- LTV = 1万円 ÷ 0.05= 20万円
解約率が10%の場合、
- LTV=1万円 ÷ 0.1=10万円
とLTVを算出することができ、それぞれどれくらいの解約率にすれば、どのくらいLTVが改善されるかを明らかにすることができます。
この計算⽅法では、顧客の平均単価(平均的な購⼊額)を解約率で割ることで、顧客の⽣涯価値を推定しています。解約率が低ければ顧客の継続期間が⻑くなり、LTVは増加します。一方、解約率が⾼ければ顧客の継続期間が短くなり、LTVは減少します。
⼩売業界のLTVの注意点
先ほど、LTVは基本的には、利益ベースで考えると説明しましたが、小売業界の場合、期間の求め⽅が特殊なので、売上LTVを⽤いるケースもあります。ですが、まずは小売業界の利益LTVの計算方法について説明します。
小売業界の利益LTVの計算式は下記の式となります。
「来店回数」については、顧客⼀⼈が週や⽉当たりに購⼊する回数として考えます。また、「顧客継続期間」については以下のプロセスで定義します。
①⽐較的⾼い頻度で利⽤してくれる顧客、すなわち「アクティブユーザー」を何らかの⽅法で定義します。たとえば「3か⽉間に1回も買い物をしていなかったらアクティブユーザーではないものとみなす」など、⾃社の業態に合わせ て「常連」と⾔える期間・頻度を設定します。
②「アクティブユーザー」を定義したうえで、⾃社の業態に合わせて適切な顧客の購買⾏動データを取得し、継続期間を測定することが望ましいでしょう。
「⽬的①LTVが高い注力商材を知る」が目的だった場合、一例として、次の数値をもとに計算することができます。
<例:コンビニ>
- 1回あたりの平均購⼊単価=1,000円
- 利益率=10%
- 来店回数(1⽉あたり)=10回
- 顧客継続期間=1年間
LTV=1,000円×0.1×10回/月×12カ月=12,000円
と求めらることができます。しかし、先ほども説明したように、計算が簡単なため、売上LTVで計算する場合もあります。
たとえば「ECとリアル店舗の⽐較」、「WEBブラウザ経由とアプリ経由の⽐較」などのように、異なるセグメント間で⽐較するのであれば、コストはいったん度外視して「売上」でLTVを計算するのも⼀つの⽅法です。
売上LTVの求め⽅は、上述した計算式の中から、「粗利率」を除いた計算式になります。
LTV(顧客生涯価値)が重要な4つの理由
LTVの把握が重要な理由として、顧客獲得以外にも次の点があげられます。
理由①:様々な部署で共通したKPIとして活用できる
LTVは、収益性と顧客の維持の程度を組みあわせた指標であるため、さまざまな顧客獲得の手法の成否を、その顧客のLTVから評価できます。
「営業をし続けた結果得た顧客」「マーケティングに力を入れて獲得した顧客」など、顧客獲得手法ごとに得た顧客のLTVを比較することで、力を入れるべき方向性への示唆を得られます。
理由②:ペルソナ決定に利用できる
サービス成長にあたり、理想的なペルソナの顧客を増やしていくことが重要です。理想的なペルソナの選定を「LTVの高さ」という観点から行い、LTVが高くなる顧客属性を分析することで、そのような顧客の獲得、もしくは利用を継続させる施策をおこなえます。
理由③:リテンション施策の評価に利用できる
LTVでは、顧客の維持を測れるので、顧客の継続利用を促すための取り組みや、追加購入されたものが、どのように顧客の維持に影響したかを理解できます。これにより、長期利用されるために、製品開発や施策設計の改善が可能です。
理由④:財務戦略で活用する
平均的なLTVを算出しておくことで、新規顧客の獲得が、長期的なキャッシュに与える影響を予測可能になります。これにより、成長戦略の立案や、マーケティング費用の査定が、財務の目線から可能です。
LTV(顧客生涯価値)を上げる3つの方法
LTVを上げるための3つの方法を紹介します。
方法①:支払い意欲に応じたプライシング戦略
支払い意欲に応じたプライシング戦略とは、支払い意欲の高い顧客には高い価格プランを用意し、支払い意欲の低い顧客には低い価格プランを用意するように、顧客の支払い意欲に応じて、アップセルプラン・クロスセルプラン・ダウンセルプランを用意することです。
支払い意欲に応じたプライシングをすることは、平均顧客単価と解約率を改善することが可能です。平均顧客単価と解約率を改善できれば、LTVは向上します。
特に、顧客単価をあげるアップセルは、LTVの拡大に繋がりやすいです。しかし、単発のアップセルでは長期的にみたLTVに大きな影響を与えないため、アップセルした場合の利用期間を継続してもらえる施策は検討しなければいけません。
方法②:サービスラインの拡大
複数のサービスを展開している企業の場合、1サービスを利用する顧客に対して、その繋がりを使って、別のサービスを販売することで、LTV向上を目指すことができます。
方法③:顧客満足度の向上
顧客満足度は、その後の解約率やリピート率に大きく影響します。
顧客がどういったポイントに価値を感じているのかを把握し、より提供価値を高めるためにサービス開発へ投資していくことでLTV向上を目指していくことができます。
アンケートなどで顧客の声を確認したり、カスタマーサクセスの強化やCRMやSFAの活用など幅広い取り組みが挙げられます。
補足:割引を行うとLTVはどうなるのか?
割引の実施は、結果的に平均LTVを下げてしまうリスクがあります。割引は短期的な収益を改善することができますが、それによって集まる顧客は、長期的に会社にとって有益でない可能性があります。
通常価格で買わなかった顧客は、値上げに敏感に反応してしまう顧客が多いです。そのため、自ずと解約率が高くなってしまいます。そして、価格の低さと解約率の高さからLTVが低くなってしまいます。
まとめ
LTVは、顧客がもたらす継続的な企業への価値を表します。
顧客単価や継続期間・継続率を包括した指標であるLTVを追跡することで、商品・サービスの状態を理解できます。
LTVを活用することで、より見通しの良い経営が可能になるでしょう。
価格・プライシングに関してお悩みの事業者様は、一度プライシングスタジオにお問い合わせください。
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また、プライスハックでは、こうしたプライシングに関わるお役立ち情報やセミナー情報を発信しています。よりプライシングについて学ばれたい方は、下記リンクよりニュースレターをお受け取りください。
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