WTP(Willingness to Pay)とは支払意欲・支払意思額のことです。
価格戦略を検討する際に、よく出てくる言葉ですが、複数の意味があるためどういった意味で使われる言葉なのか、またなぜWTPを考えることが重要なのかを、ご紹介します。
目次
WTP(支払意欲)とは
WTPとは、「Willingness to Pay」の略で、顧客が製品・サービスに対して支払いたいと思う最大の金額のことを指します。日本語では、支払意欲・支払意思額と呼ばれることもあります。
製品・サービスを販売するビジネスではより良い価格設定のためにWTPの概念が用いられています。また、経済学では環境など実際に価格がついていないが便益金額を計算する必要がある場合にWTPを用いることがあります。
WTPはビジネス側面と、経済側面で使われ方や扱いが異なるので、本記事ではビジネス側面のWTPについて解説します。
WTPの重要性
ビジネスでは、潜在顧客の支払意欲は大切です。潜在的な事業価値を収益可能性から考えると、「WTP(支払意欲) – コスト」と考えることができるでしょう。事業者側は、事業価値を上げるために、コストを低くできるようにオペレーションを最適化するか、WTP(支払意欲)を上げるために製品・サービス価値を上げるための投資をする選択肢があります。
実際に企業で行われている価格決定では大抵の場合、顧客が購入してくれる価格かつ自社の利益が出る価格を選択しますが、これはWTPとコストの間の任意の価格を決定していることになります。WTPは顧客ごとに違うため、選択した価格に対して、許容する人数(支払意欲が価格より高い)が多ければ購買者が相対的に増えることが想定されますし、許容する人数(支払意欲が価格より高い)が少なければ購買者が相対的に減ることが想定されます。
顧客獲得観点では、許容する人数(支払意欲が価格より高い)が多い金額を選ぶことが大切になります。
また利益観点では、WTPに近づけば近づくほど利益が増えるため、いかにWTPに近い価格を設定するかの観点が重要になります。
このように価格決定で重要なWTPですが、コストは自社内で算出することができる一方、WTPに関しては顧客調査を行わなければ把握することができないため、顧客調査を実施せずに価格決定をされている企業が多いという現状があります。
WTPに影響を与えるもの
WTPに影響を与えるものは、現在の市場環境から顧客の個人的な好みまでさまざまな要因があります。
経済状況
経済状況に応じて顧客のWTP・支払意欲は変化します。好景気の場合は増加傾向にありますが、一方不況の場合は減少します。価格設定をする場合、一般的な市場の変化に注意しなければなりません。
季節性や流行
季節性の高い商品・サービスの場合、WTPは時々により変化します。季節性による変動は、毎年のものであるため、過去にどのように変化しているかを把握することで、事前の予測が可能です。
ただし、流行はかなり多様であり、流動性の高いものであるため、追うことは非常に困難です。流行は産業・分野によって固有なものであるため、変化が起こったときに常にそれを把握することが重要です。
顧客の金銭感覚
すべての顧客が生まれ育った環境・生活する居住区などの違いにより様々な金銭感覚を持っています。これらの全てを把握することは不可能ですが、業界ごとに顧客に対してどのような影響があるかを調べることは可能です。
例えば、年収の高い顧客はWTPが高く、価格が高くても便利なものに対して好意的に感じる可能性があります。都内の年収の高い人が、地下鉄などの公共機関での移動よりタクシーでの移動を好むことなども一例としてあげられます。
これらの傾向をデータ化し、WTPをセグメントにわけると、より適切な価格帯を作成することができます。
顧客の状況的なニーズ
顧客が価格について個人的な感情を持っているように、個々の状況もWTPに直接的な影響を及ぼします。顧客の状況も場所・目標・役職など様々ですが、その時々によってニーズは変化します。
商品・サービスの品質
品質に対する顧客の認識は、WTPに直接影響を及ぼします。品質が高ければ高いほど、支払意欲も高まります。
商品・サービスの希少性
希少性の高いものは、それだけで価値のあるものになり、顧客のWTPにも影響します。
希少性を武器に顧客の支払意欲・商品価値・価格をあげることは可能ですが、高すぎると一部の顧客にとっては購入不可能のものになってしまいます。
そのため、事業としてのターゲットを明確にして価格設定することが大切になります。
WTPを把握する方法
支払意欲を把握するためには、直接買いたい金額を尋ねる直接質問法や、間接的な質問を行うことで交渉バイアスを抑えて支払意欲を測るPSM分析という手法があります。
実際に調査を行う際は、どちらの手法を用いるにしても、支払意欲調査の目的(価格改定、新商品開発等)を明確にして、調査を行うことが大切です。
PSM分析についてはこちらの記事を参照してください。
まとめ
WTP(Willingness to Pay、支払意欲)とは、顧客が製品・サービスに対して支払いたいと思う最大の金額です。
製品・サービスを販売するのに最適な価格を見つける際に、売り手・買い手の両方にとって、WTPは重要な要素となります。
価格・プライシングに関するお悩みがある事業者様は、一度プライシングスタジオにお問い合わせください。
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価格戦略を検討する際に、よく出てくる言葉ですが、複数の意味があるためどういった意味で使われる言葉なのか、またなぜWTPを考えることが重要なのかを、ご紹介します。
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WTP(支払意欲)とは
WTPとは、「Willingness to Pay」の略で、顧客が製品・サービスに対して支払いたいと思う最大の金額のことを指します。日本語では、支払意欲・支払意思額と呼ばれることもあります。
製品・サービスを販売するビジネスではより良い価格設定のためにWTPの概念が用いられています。また、経済学では環境など実際に価格がついていないが便益金額を計算する必要がある場合にWTPを用いることがあります。
WTPはビジネス側面と、経済側面で使われ方や扱いが異なるので、本記事ではビジネス側面のWTPについて解説します。
WTPの重要性
ビジネスでは、潜在顧客の支払意欲は大切です。潜在的な事業価値を収益可能性から考えると、「WTP(支払意欲) – コスト」と考えることができるでしょう。事業者側は、事業価値を上げるために、コストを低くできるようにオペレーションを最適化するか、WTP(支払意欲)を上げるために製品・サービス価値を上げるための投資をする選択肢があります。
実際に企業で行われている価格決定では大抵の場合、顧客が購入してくれる価格かつ自社の利益が出る価格を選択しますが、これはWTPとコストの間の任意の価格を決定していることになります。WTPは顧客ごとに違うため、選択した価格に対して、許容する人数(支払意欲が価格より高い)が多ければ購買者が相対的に増えることが想定されますし、許容する人数(支払意欲が価格より高い)が少なければ購買者が相対的に減ることが想定されます。
顧客獲得観点では、許容する人数(支払意欲が価格より高い)が多い金額を選ぶことが大切になります。
また利益観点では、WTPに近づけば近づくほど利益が増えるため、いかにWTPに近い価格を設定するかの観点が重要になります。
このように価格決定で重要なWTPですが、コストは自社内で算出することができる一方、WTPに関しては顧客調査を行わなければ把握することができないため、顧客調査を実施せずに価格決定をされている企業が多いという現状があります。
WTPに影響を与えるもの
WTPに影響を与えるものは、現在の市場環境から顧客の個人的な好みまでさまざまな要因があります。
経済状況
経済状況に応じて顧客のWTP・支払意欲は変化します。好景気の場合は増加傾向にありますが、一方不況の場合は減少します。価格設定をする場合、一般的な市場の変化に注意しなければなりません。
季節性や流行
季節性の高い商品・サービスの場合、WTPは時々により変化します。季節性による変動は、毎年のものであるため、過去にどのように変化しているかを把握することで、事前の予測が可能です。
ただし、流行はかなり多様であり、流動性の高いものであるため、追うことは非常に困難です。流行は産業・分野によって固有なものであるため、変化が起こったときに常にそれを把握することが重要です。
顧客の金銭感覚
すべての顧客が生まれ育った環境・生活する居住区などの違いにより様々な金銭感覚を持っています。これらの全てを把握することは不可能ですが、業界ごとに顧客に対してどのような影響があるかを調べることは可能です。
例えば、年収の高い顧客はWTPが高く、価格が高くても便利なものに対して好意的に感じる可能性があります。都内の年収の高い人が、地下鉄などの公共機関での移動よりタクシーでの移動を好むことなども一例としてあげられます。
これらの傾向をデータ化し、WTPをセグメントにわけると、より適切な価格帯を作成することができます。
顧客の状況的なニーズ
顧客が価格について個人的な感情を持っているように、個々の状況もWTPに直接的な影響を及ぼします。顧客の状況も場所・目標・役職など様々ですが、その時々によってニーズは変化します。
商品・サービスの品質
品質に対する顧客の認識は、WTPに直接影響を及ぼします。品質が高ければ高いほど、支払意欲も高まります。
商品・サービスの希少性
希少性の高いものは、それだけで価値のあるものになり、顧客のWTPにも影響します。
希少性を武器に顧客の支払意欲・商品価値・価格をあげることは可能ですが、高すぎると一部の顧客にとっては購入不可能のものになってしまいます。
そのため、事業としてのターゲットを明確にして価格設定することが大切になります。
WTPを把握する方法
支払意欲を把握するためには、直接買いたい金額を尋ねる直接質問法や、間接的な質問を行うことで交渉バイアスを抑えて支払意欲を測るPSM分析という手法があります。
実際に調査を行う際は、どちらの手法を用いるにしても、支払意欲調査の目的(価格改定、新商品開発等)を明確にして、調査を行うことが大切です。
PSM分析についてはこちらの記事を参照してください。
まとめ
WTP(Willingness to Pay、支払意欲)とは、顧客が製品・サービスに対して支払いたいと思う最大の金額です。
製品・サービスを販売するのに最適な価格を見つける際に、売り手・買い手の両方にとって、WTPは重要な要素となります。
価格・プライシングに関するお悩みがある事業者様は、一度プライシングスタジオにお問い合わせください。
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