990円や1,980円という、キリの良い数字からあえて少し差し引いた価格を目にしたことがあるのではないでしょうか。
実はこれは、価格の「閾値」が意識されているのです。「閾値」とは、価格にはこれ以上値上げしたら顧客が離れ、売上が大きく変化する境界線のことを言います。価格戦略を立てる際に、閾値の原理について知っておくことはとても重要なのです。
この記事では、この理論を活用したプライシングのノウハウについて、実際の事例を交えながら解説します。
閾値とは
冒頭でもお話ししましたが、価格の閾値とは、それを超えると常に売上に顕著な変化が生じる境界線のことです。通常100円、500円、1,000円、10,000円というキリのいい価格ポイントの近くで起こる傾向にあるようです。
こうした価格から少し差し引いて、末尾を8や9にする端数価格が多いのもそのためだと言えます。
たった数円の価格改定でも、閾値を超えると大幅に売上が変化するため、売り手にとって、価格の閾値を知ることはとても重要だと言えます。
参考:端数価格とは
端数価格とは閾値を利用した価格戦略の一つで、198円や980円のように端数をつけて消費者に安さを印象づける価格のことを指します。
日本では「8」を端数とすることが多いですが、欧米では1.99ドルや199ドルのように「9」を端数とすることが多いです。スーパーマーケットなどの小売業で多く見られ、比較的低価格の商品に設定されます。
端数価格の歴史として最も有力な説は、顧客は価格を左から右に読むため、それに伴って数字の注意が薄れていくために生まれたというものです。
人間は最初に見た数字が最も印象に残るため、一番左の数字を小さくすると顧客の購買意欲が上がるという原理があります。
閾値の価格戦略
値上げ時、値下げ時の両方で閾値を理解しておくことは重要です。
まず売り手が値下げを行う際は、閾値を超えるまで価格を下げないと効果が出にくいです。そのため、端数価格のように閾値を超えるまで価格を下げる手法が有効だと言えます。
逆に売り手が値上げをする場合は、価格が閾値を超えない必要があります。価格の閾値を超えてしまうと、売り上げの急落を招く恐れがあるため、その一歩手前で止める手法が有効だと言えます。特に、売り切り型ビジネスと違って、サブスクリプションビジネスの場合、一度顧客が離れた場合、売上の回復には非常に時間がかかります。閾値を超えたことで離脱した顧客は、価格を戻しても戻ってこない場合が多いためです。
注意点
閾値の特定には、PSM分析などを応用したマーケットリサーチが必要で、数百万円の調査費用がかかります。そこで、値上げを避ける意思決定も選択肢の一つでしょう。そこで、パッケージのサイズを変更して価格の閾値を超えないようにする手法が存在しますが、注意が必要です。
カルビーのポテトチップスや、ハーゲンダッツのミニカップのように、同じ価格でも内容量が減らすことで利益を増やすことができます。これは価格が同じである限り、顧客は新しいパッケージが、以前のものよりわずかに個数や量が減っていたとしても気づかない、という心理に基づいているものです。しかし商品の質を下げることには大きなリスクが伴います。それは「顧客が商品に感じる価値(知覚価値)を下げてしまう可能性がある」ことです。知覚価値を下げてしまうとそれ以降の値上げは難しく、長期的な増収が見込めなくなってしまうのです。
そこで顧客が感じる価値を上げながら、閾値のギリギリまで値上げをしていくことで増収するという手法が近年注目されています。プライスハック編集部の調査によると、ネットフリックスの近年の価格改定はこの戦略が採用されていると考えられます。詳しくは以下をご覧ください。
まとめ
今回の記事では「閾値」という大きく売り上げが変化する境界線について解説しました。
この考え方を利用して価格改定を行う際には、ユーザー数を維持できる範囲内で売上を最大にできる価格を理解しておく必要があります。
プライシングによって皆様の事業成長が、より加速することを願っております。価格についてのご相談はお気軽にプライシングスタジオまで宜しくお願い致します。
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こうした価格から少し差し引いて、末尾を8や9にする端数価格が多いのもそのためだと言えます。
たった数円の価格改定でも、閾値を超えると大幅に売上が変化するため、売り手にとって、価格の閾値を知ることはとても重要だと言えます。
参考:端数価格とは
端数価格とは閾値を利用した価格戦略の一つで、198円や980円のように端数をつけて消費者に安さを印象づける価格のことを指します。
日本では「8」を端数とすることが多いですが、欧米では1.99ドルや199ドルのように「9」を端数とすることが多いです。スーパーマーケットなどの小売業で多く見られ、比較的低価格の商品に設定されます。
端数価格の歴史として最も有力な説は、顧客は価格を左から右に読むため、それに伴って数字の注意が薄れていくために生まれたというものです。
人間は最初に見た数字が最も印象に残るため、一番左の数字を小さくすると顧客の購買意欲が上がるという原理があります。
閾値の価格戦略
値上げ時、値下げ時の両方で閾値を理解しておくことは重要です。
まず売り手が値下げを行う際は、閾値を超えるまで価格を下げないと効果が出にくいです。そのため、端数価格のように閾値を超えるまで価格を下げる手法が有効だと言えます。
逆に売り手が値上げをする場合は、価格が閾値を超えない必要があります。価格の閾値を超えてしまうと、売り上げの急落を招く恐れがあるため、その一歩手前で止める手法が有効だと言えます。特に、売り切り型ビジネスと違って、サブスクリプションビジネスの場合、一度顧客が離れた場合、売上の回復には非常に時間がかかります。閾値を超えたことで離脱した顧客は、価格を戻しても戻ってこない場合が多いためです。
注意点
閾値の特定には、PSM分析などを応用したマーケットリサーチが必要で、数百万円の調査費用がかかります。そこで、値上げを避ける意思決定も選択肢の一つでしょう。そこで、パッケージのサイズを変更して価格の閾値を超えないようにする手法が存在しますが、注意が必要です。
カルビーのポテトチップスや、ハーゲンダッツのミニカップのように、同じ価格でも内容量が減らすことで利益を増やすことができます。これは価格が同じである限り、顧客は新しいパッケージが、以前のものよりわずかに個数や量が減っていたとしても気づかない、という心理に基づいているものです。しかし商品の質を下げることには大きなリスクが伴います。それは「顧客が商品に感じる価値(知覚価値)を下げてしまう可能性がある」ことです。知覚価値を下げてしまうとそれ以降の値上げは難しく、長期的な増収が見込めなくなってしまうのです。
そこで顧客が感じる価値を上げながら、閾値のギリギリまで値上げをしていくことで増収するという手法が近年注目されています。プライスハック編集部の調査によると、ネットフリックスの近年の価格改定はこの戦略が採用されていると考えられます。詳しくは以下をご覧ください。
まとめ
今回の記事では「閾値」という大きく売り上げが変化する境界線について解説しました。
この考え方を利用して価格改定を行う際には、ユーザー数を維持できる範囲内で売上を最大にできる価格を理解しておく必要があります。
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