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2021.01.04(更新日:2023.07.13)

低価格で市場シェアを高めるペネトレーションプライシング(市場浸透価格戦略)とは

ペネトレーションプライシング(市場浸透価格戦略)とは|低価格で市場シェアを高める価格戦略
ペネトレーションプライシング(市場浸透価格戦略)とは|低価格で市場シェアを高める価格戦略
その他・価格業界情報
#価格戦略

ペネトレーションプライシングとは、低価格で製品を販売し、広く顧客を獲得するための価格戦略です。早期段階から高価格で販売するスキミングプライシングと対比されることが多いペネトレーションプライシングの戦略について、定義・流れ・メリット・デメリットを解説します。

ペネトレーションプライシングとは

ペネトレーションプライシングとは、新製品を市場に送り出す初期段階で価格を低価格に設定し、ある一定の期間でシェアを高める価格戦略です。

高所得者層をターゲットとしているスキミングプライシングに比べて、シェアを高めるために価格を低く設定するのがペネトレーションプライシングです。

ペネトレーションプライシングの流れ

ペネトレーションプライシングを行い、マーケットに浸透させるまでの流れの一例をステップごとに紹介します。

ステップ1:初期段階の価格を製造原価と同じかそれ以下に設定する

顧客の購買意欲を促進させるため、市場の競合よりもいかに低価格で提供できるかが重要であり、製造原価と同価格かそれ以下の価格に設定することが必要です。それにより、ターゲット層を広げられ、市場のシェアを高められます。

ステップ2:市場でのシェアが増えることで、製造量が増える

利用者数が増えることで、市場でのシェアが拡大します。製品のシェアを拡大できると、利用する人が増えるため販売量が増えます。販売量が増えることで、1単位あたりの生産コストを抑えることが可能になります。そのため、さらなる販売量増加と市場占有率の拡大を見込むことができます。

ステップ3:徐々に価格を上げる

低価格というブランドイメージとブランドの名前が浸透したことで、名前の知れた製品として信頼を得やすくなります。さらに市場シェアが高いので、利用者から製品への支持を受けやすく、一定の顧客からの利益を見込むことが可能です。この段階から徐々に価格を上げることで、利益を得ることができるようになります。

3つのステップをみても分かるように、ペネトレーションプライシングは、中・長期的に利益を上げていく価格戦略になっています。

ペネトレーションプライシングのメリット

初期段階での製品価格を低価格に設定しているため、活発な市場への参入がしやすいことがメリットです。

低い価格設定は、市場の大多数を占める低・中所得層の顧客にも購買を促すことができ、早期段階から市場におけるシェアを拡大させられます。市場の占有率が高くなると、知名度も顧客に知ってもらえることでブランドが浸透します。そうすることで、最終的には保守的で流行や世の中の動きへの関心が薄い層までにアプローチすることが可能です。

新しい市場に参入するにあたって、他の競合と比較してより顧客にとって魅了区的な条件を提示できる、つまり他の競合と常に差別化できることは、強みです。

ペネトレーションプライシングのデメリット

ペネトレーションプライシングのデメリットは以下の3つがあります。

利益を得るまでに時間がかかる

初期段階の価格を低く設定することで市場を拡大できる反面、利益を得るまでに時間がかかるというデメリットもあります。

ペネトレーションプライシングの初期段階では、投資額が利益より上回ってしまうことが予想されます。一連の流れがなければ、徐々に価格を上げて利益を得る段階まで到達出来ないことを考えると、中・長期的な視野が必要です。

そのため、ある程度の資金基盤がしっかりしている企業で行われることが推奨されます。

競合との価格競争に勝たなければならない

活発な市場でのシェアを狙うために、製品を低価格に設定するのがペネトレーションプライシングの意図です。

市場のシェアを狙うには、多くの人に受け入れられる価格設定である必要があります。市場の多くを占める低・中所得者層は一般的に、品質よりも価格に重きを置く傾向があるため、他の競合よりも低価格であることが求められます。

よって、常に競合との価格競争に勝つ必要があります。価格競争と同時に利益の獲得にも注目しなければならないため、初期段階での価格設定が非常に重要になります。

ブランドのイメージに影響する可能性も考えられる

低価格に設定することばかりを重視しすぎると、ブランドのイメージに影響する場合があります。

製品を購入する顧客は、価格と製品の質に一定の関係性があると感じる傾向にあります。そのため低価格に設定しすぎると、質が伴わないのではないかという懸念から顧客の信頼を失いかねません。

そうならないために、他競合よりも低価格かつ、製品に対する信頼を失わない価格設定にすることが必要です。

まとめ

ペネトレーションプライシングとは、新製品を市場に送り出す初期段階で価格を低く設定し、ある一定の期間で市場シェアを高める価格戦略です。初期段階で低い価格に設定し、顧客を獲得できるため、活発な市場で応用できる価格戦略です。

しかし、利益を得るには低価格から徐々に価格を上げていかなければなりません。「初期段階の製品を低価格に設定し、短期間で占有率を高める」という本来の目的だけでなく、その後どのように価格を上げて、どれくらいの利益を得るかという部分までの設計が必要になってきます。ペネトレーションプライシングは、十分な資金を調達できる基盤が整っていることが条件であり、長期的な視野を持つことが求められるでしょう。

価格戦略・プライシングに関してお悩みがある事業者様は、一度プライシングスタジオにお問い合わせ・相談してみてください。

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Yoshihiro Takahashi

高橋 嘉尋

プライシングスタジオ株式会社

代表取締役CEO

プライシングスタジオ株式会社代表取締役 CEO。2019年、慶應義塾大学総合政策学部在学中に価格1%が企業の営業利益を約20%の改善につながるということを知り、その影響力に魅力を感じ、当社を設立。プライシングスタジオは設立以来、30以上の業界、100以上のサービスの値付けを支援している。著書に「値決めの教科書 勘と経験に頼らないプライシングの新常識」(日経BP)。「日経トップリーダー・ビジネス」にて「値決めの科学」、「ダイヤモンドオンライン」にて「価格戦略のプロが見た「あの値付け」」を連載中。「日経COMEMO」キーオピニオンリーダー。そのほか、テレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」、ABEMA「ABEMA Prime」、NewsPicks「メイクマネー」など多数メディアに出演。2023年Forbesによる「アジアを代表する30才未満の30人」に部門で選出される。

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ペネトレーションプライシングとは

ペネトレーションプライシングとは、新製品を市場に送り出す初期段階で価格を低価格に設定し、ある一定の期間でシェアを高める価格戦略です。

高所得者層をターゲットとしているスキミングプライシングに比べて、シェアを高めるために価格を低く設定するのがペネトレーションプライシングです。

ペネトレーションプライシングの流れ

ペネトレーションプライシングを行い、マーケットに浸透させるまでの流れの一例をステップごとに紹介します。

ステップ1:初期段階の価格を製造原価と同じかそれ以下に設定する

顧客の購買意欲を促進させるため、市場の競合よりもいかに低価格で提供できるかが重要であり、製造原価と同価格かそれ以下の価格に設定することが必要です。それにより、ターゲット層を広げられ、市場のシェアを高められます。

ステップ2:市場でのシェアが増えることで、製造量が増える

利用者数が増えることで、市場でのシェアが拡大します。製品のシェアを拡大できると、利用する人が増えるため販売量が増えます。販売量が増えることで、1単位あたりの生産コストを抑えることが可能になります。そのため、さらなる販売量増加と市場占有率の拡大を見込むことができます。

ステップ3:徐々に価格を上げる

低価格というブランドイメージとブランドの名前が浸透したことで、名前の知れた製品として信頼を得やすくなります。さらに市場シェアが高いので、利用者から製品への支持を受けやすく、一定の顧客からの利益を見込むことが可能です。この段階から徐々に価格を上げることで、利益を得ることができるようになります。

3つのステップをみても分かるように、ペネトレーションプライシングは、中・長期的に利益を上げていく価格戦略になっています。

ペネトレーションプライシングのメリット

初期段階での製品価格を低価格に設定しているため、活発な市場への参入がしやすいことがメリットです。

低い価格設定は、市場の大多数を占める低・中所得層の顧客にも購買を促すことができ、早期段階から市場におけるシェアを拡大させられます。市場の占有率が高くなると、知名度も顧客に知ってもらえることでブランドが浸透します。そうすることで、最終的には保守的で流行や世の中の動きへの関心が薄い層までにアプローチすることが可能です。

新しい市場に参入するにあたって、他の競合と比較してより顧客にとって魅了区的な条件を提示できる、つまり他の競合と常に差別化できることは、強みです。

ペネトレーションプライシングのデメリット

ペネトレーションプライシングのデメリットは以下の3つがあります。

利益を得るまでに時間がかかる

初期段階の価格を低く設定することで市場を拡大できる反面、利益を得るまでに時間がかかるというデメリットもあります。

ペネトレーションプライシングの初期段階では、投資額が利益より上回ってしまうことが予想されます。一連の流れがなければ、徐々に価格を上げて利益を得る段階まで到達出来ないことを考えると、中・長期的な視野が必要です。

そのため、ある程度の資金基盤がしっかりしている企業で行われることが推奨されます。

競合との価格競争に勝たなければならない

活発な市場でのシェアを狙うために、製品を低価格に設定するのがペネトレーションプライシングの意図です。

市場のシェアを狙うには、多くの人に受け入れられる価格設定である必要があります。市場の多くを占める低・中所得者層は一般的に、品質よりも価格に重きを置く傾向があるため、他の競合よりも低価格であることが求められます。

よって、常に競合との価格競争に勝つ必要があります。価格競争と同時に利益の獲得にも注目しなければならないため、初期段階での価格設定が非常に重要になります。

ブランドのイメージに影響する可能性も考えられる

低価格に設定することばかりを重視しすぎると、ブランドのイメージに影響する場合があります。

製品を購入する顧客は、価格と製品の質に一定の関係性があると感じる傾向にあります。そのため低価格に設定しすぎると、質が伴わないのではないかという懸念から顧客の信頼を失いかねません。

そうならないために、他競合よりも低価格かつ、製品に対する信頼を失わない価格設定にすることが必要です。

まとめ

ペネトレーションプライシングとは、新製品を市場に送り出す初期段階で価格を低く設定し、ある一定の期間で市場シェアを高める価格戦略です。初期段階で低い価格に設定し、顧客を獲得できるため、活発な市場で応用できる価格戦略です。

しかし、利益を得るには低価格から徐々に価格を上げていかなければなりません。「初期段階の製品を低価格に設定し、短期間で占有率を高める」という本来の目的だけでなく、その後どのように価格を上げて、どれくらいの利益を得るかという部分までの設計が必要になってきます。ペネトレーションプライシングは、十分な資金を調達できる基盤が整っていることが条件であり、長期的な視野を持つことが求められるでしょう。

価格戦略・プライシングに関してお悩みがある事業者様は、一度プライシングスタジオにお問い合わせ・相談してみてください。

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Yoshihiro Takahashi

高橋 嘉尋

プライシングスタジオ株式会社

代表取締役CEO

プライシングスタジオ株式会社代表取締役 CEO。2019年、慶應義塾大学総合政策学部在学中に価格1%が企業の営業利益を約20%の改善につながるということを知り、その影響力に魅力を感じ、当社を設立。プライシングスタジオは設立以来、30以上の業界、100以上のサービスの値付けを支援している。著書に「値決めの教科書 勘と経験に頼らないプライシングの新常識」(日経BP)。「日経トップリーダー・ビジネス」にて「値決めの科学」、「ダイヤモンドオンライン」にて「価格戦略のプロが見た「あの値付け」」を連載中。「日経COMEMO」キーオピニオンリーダー。そのほか、テレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」、ABEMA「ABEMA Prime」、NewsPicks「メイクマネー」など多数メディアに出演。2023年Forbesによる「アジアを代表する30才未満の30人」に部門で選出される。

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