ビジネスの基本的である「価格=生産にかかるコスト+利益」という考え方を実践しているコストベースプライシングの定義・代表的な業界・メリット・デメリットを解説します。
目次
コストベースプライシングとは
コストベースプライシングとは、名前のとおりコスト(原価)に対して、利益を上乗せして価格を設定する方法です。
利益をあげるために、商品やサービスを作ったときにかかった費用以上の金額で提供する点で、ビジネスをおこなうための基本的な考え方といえるでしょう。
多くの企業は、商品・サービスを販売する際に、このコストベースプライシングを利用して価格を決定しています。例として、飲食業界では原価率30%が慣例的だと言われています。
コストベースプライシングの仕組み
コストベースプライシングの計算方法は、1製品単位あたりの総コスト(製造費・開発費・人件費・輸送費など)と、得たい利益を計算して、利益率を上乗せします。
この方法では、市場調査をする必要はなく、消費者の需要や競合他社の価格を考慮しなくてよいため、非常にシンプルに価格を決定できます。
コストベースプライシングで価格設定をおこなっている業界
コストベースプライシングを利用する場合、製品に関するコストが容易に定義しやすいことが重要です。
コストベースプライシングをおこなっている業界は様々ですが、代表例として製造業があげられます。
製造業は、コスト(原材料費・人件費・機械にかかる費用など)が比較的予測可能なため、ビジネスを維持するための利益率を上乗せすることが容易です。
さらに製造業の中でも、既存の顧客と契約を結び、一括で販売している業態のモノの価格は、値上げや値下げを必要としない場合が多く、長期的な収益予測を可能としています。
コストベースプライシングのメリット
コストベースプライシングによる価格設定は、以下のメリットがあります。
価格設定に時間や知識を必要としない
コストベースプライシングは、コスト(原価・人件費など)に対して一定の利益率を上乗せするだけであるため、コストの総数を把握すれば計算が簡単です。
また、市場調査や競合調査、顧客の支払意欲を考慮する必要もありません。そのため、市場に直接の競合他社がいない場合は特に役立ちます。
基本的に、価格を設定するために必要なデータは、コスト計算のみです。そのため、ほぼすべての商品・サービスに迅速に実装できます。
一貫した利益率をあげられる
商品・サービスの1単位あたりにかかるコスト計算が正しくおこなわれている限り、コストベースプライシングは、すべてのコストがカバーされているため損失を生むことはなく、一貫した利益率をあげられます。
しかし多くの場合、価格設定時には予期していなかった追加コストがあるため、その分利益率は当初の想定よりも減少します。
コストベースプライシングのデメリット
コストベースプライシングによる価格設定は、以下のデメリットがあります。
すべてのコストを把握するのは難しい
商品・サービスの開発・マーケティングなどにかかるすべてのコストの把握は非常に難しいです。
商品やサービスを改善していけばいくほど、コストは時間とともに変動するため、実際にサービス改善をおこなわなければ想定額を算出できません。
常に一定の利益率を確保しようとするならば、このような変化に応じて、価格を変動させなければいけません。コストをもととした価格変動は、購入する顧客にとってかなりストレスを与えるものになるでしょう。
顧客が商品・サービスに抱く価値と価格に乖離が起きやすい
コストベースプライシングでは、顧客の支払意欲(=サービスに対して価値を感じ支払いたいと考える価格)を価格に反映していません。顧客は商品・サービスに対してのコストを気にして購入している場合は少ないです。
必ずしも利益を最大化できるとは限らない
コストベースプライシングでは、顧客や市場の変化に合わせて価格を調整することは難しいです。そのため、顧客単価をあげる施策を取りづらく、必ずしも利益を最大化できるとは限りません。
商品やサービスは改善を重ねるごとに、顧客が感じる価値、顧客の支払意欲は高まります。コストベースプライシングをおこなうと、顧客が支払いたいと感じている価格よりも低くなってしまい、結果として収益を逃してしまいます。
コストベースプライシングがおすすめな業界
コストベースプライシングは、物理的な製品を販売している業界に有効な手段です。
製品原価よりも人件費などの割合が高い商品・サービスを提供している企業には、コストベースプライシングは推奨しません。例えば、インターネットを経由したSaaSやサブスクリプションサービス、テーマパークなどのエンタメ産業などがこれにあたります。
商品やサービスは改善を重ねるごとに、顧客が感じる価値が高まっていきます。そのため、コストベースプライシングをおこなうと、顧客が支払いたいと感じている価格よりも低くなってしまい、結果として収益を逃してしまいます。
そのような場合は、顧客価値に基づいた価格設定をおこなうバリューベースプライシングがおすすめです。
まとめ
コストベースプライシングは、コスト(原価)に対して、利益を上乗せして価格を設定する方法です。
商品・サービスを販売するのに必要なコストのみを計算し、利益を上乗せして価格設定ができるため非常に簡単というメリットを持つ反面、顧客価値に基づく価格設定ではないため収益を逃す可能性をもつというデメリットもあげられます。
自社がコストベースプライシングによる価格戦略が良いのか、他の価格戦略をとるべきか相談したい事業者様は、一度プライシングスタジオにお問い合わせください。
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利益をあげるために、商品やサービスを作ったときにかかった費用以上の金額で提供する点で、ビジネスをおこなうための基本的な考え方といえるでしょう。
多くの企業は、商品・サービスを販売する際に、このコストベースプライシングを利用して価格を決定しています。例として、飲食業界では原価率30%が慣例的だと言われています。
コストベースプライシングの仕組み
コストベースプライシングの計算方法は、1製品単位あたりの総コスト(製造費・開発費・人件費・輸送費など)と、得たい利益を計算して、利益率を上乗せします。
この方法では、市場調査をする必要はなく、消費者の需要や競合他社の価格を考慮しなくてよいため、非常にシンプルに価格を決定できます。
コストベースプライシングで価格設定をおこなっている業界
コストベースプライシングを利用する場合、製品に関するコストが容易に定義しやすいことが重要です。
コストベースプライシングをおこなっている業界は様々ですが、代表例として製造業があげられます。
製造業は、コスト(原材料費・人件費・機械にかかる費用など)が比較的予測可能なため、ビジネスを維持するための利益率を上乗せすることが容易です。
さらに製造業の中でも、既存の顧客と契約を結び、一括で販売している業態のモノの価格は、値上げや値下げを必要としない場合が多く、長期的な収益予測を可能としています。
コストベースプライシングのメリット
コストベースプライシングによる価格設定は、以下のメリットがあります。
価格設定に時間や知識を必要としない
コストベースプライシングは、コスト(原価・人件費など)に対して一定の利益率を上乗せするだけであるため、コストの総数を把握すれば計算が簡単です。
また、市場調査や競合調査、顧客の支払意欲を考慮する必要もありません。そのため、市場に直接の競合他社がいない場合は特に役立ちます。
基本的に、価格を設定するために必要なデータは、コスト計算のみです。そのため、ほぼすべての商品・サービスに迅速に実装できます。
一貫した利益率をあげられる
商品・サービスの1単位あたりにかかるコスト計算が正しくおこなわれている限り、コストベースプライシングは、すべてのコストがカバーされているため損失を生むことはなく、一貫した利益率をあげられます。
しかし多くの場合、価格設定時には予期していなかった追加コストがあるため、その分利益率は当初の想定よりも減少します。
コストベースプライシングのデメリット
コストベースプライシングによる価格設定は、以下のデメリットがあります。
すべてのコストを把握するのは難しい
商品・サービスの開発・マーケティングなどにかかるすべてのコストの把握は非常に難しいです。
商品やサービスを改善していけばいくほど、コストは時間とともに変動するため、実際にサービス改善をおこなわなければ想定額を算出できません。
常に一定の利益率を確保しようとするならば、このような変化に応じて、価格を変動させなければいけません。コストをもととした価格変動は、購入する顧客にとってかなりストレスを与えるものになるでしょう。
顧客が商品・サービスに抱く価値と価格に乖離が起きやすい
コストベースプライシングでは、顧客の支払意欲(=サービスに対して価値を感じ支払いたいと考える価格)を価格に反映していません。顧客は商品・サービスに対してのコストを気にして購入している場合は少ないです。
必ずしも利益を最大化できるとは限らない
コストベースプライシングでは、顧客や市場の変化に合わせて価格を調整することは難しいです。そのため、顧客単価をあげる施策を取りづらく、必ずしも利益を最大化できるとは限りません。
商品やサービスは改善を重ねるごとに、顧客が感じる価値、顧客の支払意欲は高まります。コストベースプライシングをおこなうと、顧客が支払いたいと感じている価格よりも低くなってしまい、結果として収益を逃してしまいます。
コストベースプライシングがおすすめな業界
コストベースプライシングは、物理的な製品を販売している業界に有効な手段です。
製品原価よりも人件費などの割合が高い商品・サービスを提供している企業には、コストベースプライシングは推奨しません。例えば、インターネットを経由したSaaSやサブスクリプションサービス、テーマパークなどのエンタメ産業などがこれにあたります。
商品やサービスは改善を重ねるごとに、顧客が感じる価値が高まっていきます。そのため、コストベースプライシングをおこなうと、顧客が支払いたいと感じている価格よりも低くなってしまい、結果として収益を逃してしまいます。
そのような場合は、顧客価値に基づいた価格設定をおこなうバリューベースプライシングがおすすめです。
まとめ
コストベースプライシングは、コスト(原価)に対して、利益を上乗せして価格を設定する方法です。
商品・サービスを販売するのに必要なコストのみを計算し、利益を上乗せして価格設定ができるため非常に簡単というメリットを持つ反面、顧客価値に基づく価格設定ではないため収益を逃す可能性をもつというデメリットもあげられます。
自社がコストベースプライシングによる価格戦略が良いのか、他の価格戦略をとるべきか相談したい事業者様は、一度プライシングスタジオにお問い合わせください。
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