あなたは価格調査に最適な方法をご存知でしょうか。この記事では、様々な価格調査方法を紹介します。
目次
価格調査に適切な方法
結論を先に言ってしまうと価格調査方法で最も効果的な方法はアンケートを使った方法です。
価格調査でアンケートを使用することに懐疑的な方もいるかもしれません。
しかし、業界内ではアンケートが価格調査の最も有力な分析手法として知られています。実際に、BCGやマッキンゼーなどのコンサル企業やディズニーなどプライスハックが調査する限り、国内外問わずプライシング戦略で成功している企業で調査時にアンケートを使用していないところは聞いたことがありません。
では実際、アンケートをどのようにおこなって、どうやって分析すればいいのでしょうか。次はアンケートを使った様々な分析手法を5種類紹介します。
PSM分析
価格調査の分析でプライスハックが最適だと思う分析はPSM分析です。PSM分析以前は単純質問と言われる方法が一般的な調査方法でした。
単純質問は、「この製品やサービスが〇〇円だとしたら、どれくらい買いたいと思いますか」や「この製品やサービスがいくらなら買いたいと思いますか」と言った質問を回答者にします。
そして、そのアンケート結果に基づいて企業は製品やサービスの価格決定をするというものです。
しかし、次第にアンケート回答者である消費者が価格に敏感になり製品やサービスが安くなるかもしれないと考えたり、自分が思っている価格よりも低く回答したり、建前で価格を高く答えることが多くなりました。
これにより価格に対する直接的な質問をしていく単純質問では正確な分析をすることが困難になってしまいました。こういった理由によりPSM分析という新たな手法が取り入れられるようになっていきました。
PSM分析とは
PSM分析とはバリューベースの価格設定を実現するために、顧客の支払意欲を調査するため使われる手法です。PSM分析を応用することで、商品・サービスがどの程度の価格なら最も顧客に受けいられるかを把握でき、売り上げや顧客数を最大化できる価格を試算できます。
PSM分析の方法・手順
一般的なPSM分析の手順は、次の2段階のステップでおこなわれます。
まずは、アンケート調査を行います。PSM分析では、アンケートで4つの質問をすることで、実際に顧客が製品・サービスに対して、どれほどの支払意欲を持っているのかを調べます。
次に、アンケートの結果を集計し、以下のようにグラフに回答を累積してプロットします
グラフはX軸が価格を、Y軸が当てはまる顧客の割合を表します。
価格が上がると、「安すぎて品質が低い」「安く感じる」と思う顧客が減り、「高すぎて検討に乗らない」「高く感じる」と思う顧客が増えます。
このグラフから価格設定の参考となる4つの交点がわかります。
・最適価格
「高すぎて買えないと感じ始める価格」と「安すぎて品質や効果に不安を感じ始める価格」の交点で顧客が望む理想的な価格
・妥協価格
「安く感じる」と「高く感じる」の交点で消費者に「このくらいの価格なら仕方ない」と感じてもらえる価格
・上限価格
「安く感じる」と「高すぎて買えないと感じ始める価格」の交点でこれ以上高くなると、消費者に購入されなくなるとみられる価格
・下限価格
「高く感じる」と「安すぎて品質や効果に不安を感じ始める価格」の交点でこれ以上安くなると。消費者が「品質が悪いのではないかと不安になる
」と感じる価格
交点の価格を参考にすることで、価格設定に目安をつけることができます。
PSM分析の不足点
PSM分析の交点はわかりやすい反面、正確性にかけるという欠点があります。実際には上限価格以上でも購入が検討に乗る人はいますし、同様に下限価格以下でも品質が悪いと思わない人が存在します。
最適価格に関しても、本来顧客が最大化する価格は安すぎて品質が低いと思う人と高すぎて検討に乗らないと思う人が最小となる価格で、必ずしも交点と一致しません。
交点の取り扱いがそのまま売り上げの最大化につながるわけではないので、売り上げの最大を目指すフェーズと顧客数拡大を目指すフェーズによってPSM分析の見方を変えなければいけません。
また、売り上げの最大化や顧客数を最大化することどちらの見方においても製品やサービスのターゲットセグメンテーションをすることが必要になります。ターゲットセグメンテーションをするときは製品やサービスに関するどの変数がターゲットの支払い意欲を変えているのかを調査し、適切にターゲットを切り分けなければいけません。
この辺りの作業は、専門的な知識やノウハウが必要となってくるため、正確に調査し実行するには外注することも選択肢になり得ます。
PSM分析に関する詳しい記事はこちら。
コンジョイント分析
コンジョイント分析の方法とは
コンジョイント分析はB2Cマーケティングでよく使われ、消費者が製品・サービスを選ぶ際の、購買主要因(KBF:Key Buying Factor)を数値化する分析手法です。
主にここで数値化されるのは、商品・サービスの構成要素(価格・機能・デザインなど)です。
コンジョイント分析の方法
分析方法としては、まず商品の属性と水準を組み合わせた複雑な条件のカードで好きな方を回答者に複数回選んでいただきます。そしてその結果を統計解析することでKBFを数値化します。
この分析によって、顧客が特定の製品構成にどのくらい支払うのかを定量化し、実際の販売数量の予測に変換することかできます。これは価格決定に有効な示唆を与えてくれます。また、対象のセグメントによって商品設計の際に優先すべき属性と水準も決定しやすくなります。
コレスポンデンス分析
コレスポンデンス分析とは
コレスポンデンス分析は、顧客の心の中の自社と競合ブランドの位置関係を知り、イメージの強みと欠けている要素を分析する手法です。散布図として結果を出すため、項目が多い時や一目で見たい時に用いられることが多いです。
コレスポンデンス分析の方法
分析方法としては、まず表側、表頭を用いてアンケートを行い、クロス集計をします。そしてその結果を用いて表側の要素と表頭の要素感の関係性をそれらの相関関係が最大になるように低次元空間のマップ上に散布図としてプロットして多変量解析を行います。その際に散布図の縦軸、横軸の意味を分析者が考える必要があります。
これによって企業のブランドイメージのポジショニングを明確化できます。
ポケットプライス分析
ポケットプライス分析とは
ポケットプライスは、本当の意味で企業がポケットに入れている価格と、内部コストまでも計算して本当にその取引からマージンが稼げているのかどうか、実態把握する分析手法です。
ポケットプライス分析の方法
分析方法としては、メーカーが商品をチャネルの多段階に渡って流通させている場合、まずそれぞれのステップで発生するリベート*やアローアンス**を商品ごと、顧客ごと、注文ごとに分析して実態を把握します。その後に不適切なプライシングをあぶり出してその発生理由を分析し、それを食い止めるための対策を講じます。
*リベート:メーカーや卸売業者などが商品の売上高や取引高など一定の条件をクリアした流通業者に対して支払う報酬
**アローアンス:販売店の販促活動を援護するために奨励金的な活動の総称
この分析によって収益改善と収益獲得を目標として、考えて売る仕組みと癖を営業に組み込むことができるようになります。
価格弾力性分析
価格弾力性の分析とは
価格弾力性分析は、価格の変化に対して需要量が変化する程度を経済的に測定した需要の価格弾力性(Price elasticity of demand、PED)を求める分析手法です。
価格弾力性とは、価格が変化した際に、どのくらい需要が変化するかを測定し、数値化したものです。
価格弾力性の分析方法
分析方法は2つあります。
1つ目は、アンケート調査やコンジョイント分析で価格弾力性を推察する方法です。
2つ目は、市場実験による方法です。メーカーであれば実際の店舗を数店実験的に経営することがあり、アンテナショップを経営している企業は数多くあります。いくつかのメーカーでは繋がりの強いチェーン店舗で価格変更による弾力性のテストや販売促進の実験させてもらい、小売りのFSPのデータを購入してリアルタイムでPDCAサイクルを回しています。また、ネットで実験的に顧客セグメント毎に異なる割引率を提示して反応を見ることも可能です。
需要の価格弾力性を知ることで、価格設定時や値下げ・割引戦略をとる際に活用できます。
まとめ
ここまで価格調査に関するいろいろな分析手法を紹介してきました。
しかし、分析者がアンケートをしてその結果から何を求めたいかによって使いたい分析は変わります。
目的によって分析を使い分けるのは難しさがありますので、価格調査に関してお悩みの事業者様は一度、プライシングスタジオにお問い合わせください。
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価格調査でアンケートを使用することに懐疑的な方もいるかもしれません。
しかし、業界内ではアンケートが価格調査の最も有力な分析手法として知られています。実際に、BCGやマッキンゼーなどのコンサル企業やディズニーなどプライスハックが調査する限り、国内外問わずプライシング戦略で成功している企業で調査時にアンケートを使用していないところは聞いたことがありません。
では実際、アンケートをどのようにおこなって、どうやって分析すればいいのでしょうか。次はアンケートを使った様々な分析手法を5種類紹介します。
PSM分析
価格調査の分析でプライスハックが最適だと思う分析はPSM分析です。PSM分析以前は単純質問と言われる方法が一般的な調査方法でした。
単純質問は、「この製品やサービスが〇〇円だとしたら、どれくらい買いたいと思いますか」や「この製品やサービスがいくらなら買いたいと思いますか」と言った質問を回答者にします。
そして、そのアンケート結果に基づいて企業は製品やサービスの価格決定をするというものです。
しかし、次第にアンケート回答者である消費者が価格に敏感になり製品やサービスが安くなるかもしれないと考えたり、自分が思っている価格よりも低く回答したり、建前で価格を高く答えることが多くなりました。
これにより価格に対する直接的な質問をしていく単純質問では正確な分析をすることが困難になってしまいました。こういった理由によりPSM分析という新たな手法が取り入れられるようになっていきました。
PSM分析とは
PSM分析とはバリューベースの価格設定を実現するために、顧客の支払意欲を調査するため使われる手法です。PSM分析を応用することで、商品・サービスがどの程度の価格なら最も顧客に受けいられるかを把握でき、売り上げや顧客数を最大化できる価格を試算できます。
PSM分析の方法・手順
一般的なPSM分析の手順は、次の2段階のステップでおこなわれます。
まずは、アンケート調査を行います。PSM分析では、アンケートで4つの質問をすることで、実際に顧客が製品・サービスに対して、どれほどの支払意欲を持っているのかを調べます。
次に、アンケートの結果を集計し、以下のようにグラフに回答を累積してプロットします
グラフはX軸が価格を、Y軸が当てはまる顧客の割合を表します。
価格が上がると、「安すぎて品質が低い」「安く感じる」と思う顧客が減り、「高すぎて検討に乗らない」「高く感じる」と思う顧客が増えます。
このグラフから価格設定の参考となる4つの交点がわかります。
・最適価格
「高すぎて買えないと感じ始める価格」と「安すぎて品質や効果に不安を感じ始める価格」の交点で顧客が望む理想的な価格
・妥協価格
「安く感じる」と「高く感じる」の交点で消費者に「このくらいの価格なら仕方ない」と感じてもらえる価格
・上限価格
「安く感じる」と「高すぎて買えないと感じ始める価格」の交点でこれ以上高くなると、消費者に購入されなくなるとみられる価格
・下限価格
「高く感じる」と「安すぎて品質や効果に不安を感じ始める価格」の交点でこれ以上安くなると。消費者が「品質が悪いのではないかと不安になる
」と感じる価格
交点の価格を参考にすることで、価格設定に目安をつけることができます。
PSM分析の不足点
PSM分析の交点はわかりやすい反面、正確性にかけるという欠点があります。実際には上限価格以上でも購入が検討に乗る人はいますし、同様に下限価格以下でも品質が悪いと思わない人が存在します。
最適価格に関しても、本来顧客が最大化する価格は安すぎて品質が低いと思う人と高すぎて検討に乗らないと思う人が最小となる価格で、必ずしも交点と一致しません。
交点の取り扱いがそのまま売り上げの最大化につながるわけではないので、売り上げの最大を目指すフェーズと顧客数拡大を目指すフェーズによってPSM分析の見方を変えなければいけません。
また、売り上げの最大化や顧客数を最大化することどちらの見方においても製品やサービスのターゲットセグメンテーションをすることが必要になります。ターゲットセグメンテーションをするときは製品やサービスに関するどの変数がターゲットの支払い意欲を変えているのかを調査し、適切にターゲットを切り分けなければいけません。
この辺りの作業は、専門的な知識やノウハウが必要となってくるため、正確に調査し実行するには外注することも選択肢になり得ます。
PSM分析に関する詳しい記事はこちら。
コンジョイント分析
コンジョイント分析の方法とは
コンジョイント分析はB2Cマーケティングでよく使われ、消費者が製品・サービスを選ぶ際の、購買主要因(KBF:Key Buying Factor)を数値化する分析手法です。
主にここで数値化されるのは、商品・サービスの構成要素(価格・機能・デザインなど)です。
コンジョイント分析の方法
分析方法としては、まず商品の属性と水準を組み合わせた複雑な条件のカードで好きな方を回答者に複数回選んでいただきます。そしてその結果を統計解析することでKBFを数値化します。
この分析によって、顧客が特定の製品構成にどのくらい支払うのかを定量化し、実際の販売数量の予測に変換することかできます。これは価格決定に有効な示唆を与えてくれます。また、対象のセグメントによって商品設計の際に優先すべき属性と水準も決定しやすくなります。
コレスポンデンス分析
コレスポンデンス分析とは
コレスポンデンス分析は、顧客の心の中の自社と競合ブランドの位置関係を知り、イメージの強みと欠けている要素を分析する手法です。散布図として結果を出すため、項目が多い時や一目で見たい時に用いられることが多いです。
コレスポンデンス分析の方法
分析方法としては、まず表側、表頭を用いてアンケートを行い、クロス集計をします。そしてその結果を用いて表側の要素と表頭の要素感の関係性をそれらの相関関係が最大になるように低次元空間のマップ上に散布図としてプロットして多変量解析を行います。その際に散布図の縦軸、横軸の意味を分析者が考える必要があります。
これによって企業のブランドイメージのポジショニングを明確化できます。
ポケットプライス分析
ポケットプライス分析とは
ポケットプライスは、本当の意味で企業がポケットに入れている価格と、内部コストまでも計算して本当にその取引からマージンが稼げているのかどうか、実態把握する分析手法です。
ポケットプライス分析の方法
分析方法としては、メーカーが商品をチャネルの多段階に渡って流通させている場合、まずそれぞれのステップで発生するリベート*やアローアンス**を商品ごと、顧客ごと、注文ごとに分析して実態を把握します。その後に不適切なプライシングをあぶり出してその発生理由を分析し、それを食い止めるための対策を講じます。
*リベート:メーカーや卸売業者などが商品の売上高や取引高など一定の条件をクリアした流通業者に対して支払う報酬
**アローアンス:販売店の販促活動を援護するために奨励金的な活動の総称
この分析によって収益改善と収益獲得を目標として、考えて売る仕組みと癖を営業に組み込むことができるようになります。
価格弾力性分析
価格弾力性の分析とは
価格弾力性分析は、価格の変化に対して需要量が変化する程度を経済的に測定した需要の価格弾力性(Price elasticity of demand、PED)を求める分析手法です。
価格弾力性とは、価格が変化した際に、どのくらい需要が変化するかを測定し、数値化したものです。
価格弾力性の分析方法
分析方法は2つあります。
1つ目は、アンケート調査やコンジョイント分析で価格弾力性を推察する方法です。
2つ目は、市場実験による方法です。メーカーであれば実際の店舗を数店実験的に経営することがあり、アンテナショップを経営している企業は数多くあります。いくつかのメーカーでは繋がりの強いチェーン店舗で価格変更による弾力性のテストや販売促進の実験させてもらい、小売りのFSPのデータを購入してリアルタイムでPDCAサイクルを回しています。また、ネットで実験的に顧客セグメント毎に異なる割引率を提示して反応を見ることも可能です。
需要の価格弾力性を知ることで、価格設定時や値下げ・割引戦略をとる際に活用できます。
まとめ
ここまで価格調査に関するいろいろな分析手法を紹介してきました。
しかし、分析者がアンケートをしてその結果から何を求めたいかによって使いたい分析は変わります。
目的によって分析を使い分けるのは難しさがありますので、価格調査に関してお悩みの事業者様は一度、プライシングスタジオにお問い合わせください。
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