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2020.12.02(更新日:2023.07.13)

サブスクリプションが流行した理由・背景を消費者意識から解説

サブスクリプションが流行した理由・背景とは?「所有」から「利用」へと変わる消費者意識
サブスクリプションが流行した理由・背景とは?「所有」から「利用」へと変わる消費者意識
SaaS・サブスク
#SaaS・サブスク
#価格戦略

私たちの生活では当たり前になっているサブスクリプションサービスですが、実は時代の流れと共に流行り始めたビジネスモデルです。

この記事では、サブスクリプションサービスの時代背景について解説します。

サブスクリプションとは

サブスクリプションとは、「定額制で製品やサービスを利用者に提供するビジネスモデルのこと」です。通称「サブスク」という名で、2018年前後から世界中で注目されています。

サブスクという名前は真新しく感じられますが、ビジネスモデル自体は昔から存在していました。例えば、雑誌や新聞などを定期購読したり、保険料金やガス、電気などの公共料金などを定期的に支払ったりしているのもサブスクリプションの1つです。

一方で現代のサブスクリプションは、従来のものと違い、インターネットやITを活用したビジネスモデルのことを言います。
なぜ近年になって、サブスクリプションが注目を集めているのでしょうか。今回は、サブスクリプションの流行背景について解説します。

サブスクリプションの流行背景

現在、サブスクリプションが流行している背景は以下の3つのことがあげられます。

1.インターネットの普及

サブスクリプションの流行背景の理由の1つ目は、ITやインターネットの進化があげられます。

インターネットが普及する前、ソフトウェアはパッケージ販売されていました。そのため、バージョンアップや修正したソフトウェアを発売するのに1年半や2年といった長い期間が必要でした。

ですがITやインターネットが普及してくると、インターネットを使って大きなデータをやりとりすることができるようになり、ソフトウェアをインターネット上でダウンロードして直接購入することが可能になりました。インストールされたソフトウェアをインターネット上で修理できるようになったため、パッケージ化するためのコストが低減し、ソフトウェアの流通スピードが増加しました。

頻繁に改善したソフトウェアを消費者に提供するための手段として、手軽に契約できるサブスクリプションが導入されるようになりました。

2.消費者の意識の変化

サブスクリプションの流行背景の理由の2つ目は、消費者の意識の変化があげられます。

少子高齢化が進み、ターゲットとしていた若年層が減少していることはもちろんのこと、若者を中心として「消費離れ」「所有欲離れ」という意識の変化が見られます。

「消費者離れ」や「所有欲離れ」は、将来への不安や手取り収入の低下が原因だと言われています。
消費者は、物を所有することを評価するというお金の消費に対する考え方から体験や人間関係に価値を見出し、評価の対象とする考え方に移行しているのです。

この結果、旅行やレジャー、芸術鑑賞、習い事などのサービスにお金を使うようになりました。従来のように個人として所有するという形で商品が売れなくなってしまった今、契約期間でのみ商品やサービスを提供するビジネスモデルであるサブスクリプションは、非常に合理的だと言えます。

3.物流の進歩

サブスクリプションの流行背景の理由の3つ目は、物流の発達があげられます。

インターネットが発達したことによって、ネットショッピングなど電子上の取引が普及しました。その際、重要になってくるのが宅配便の存在です。配送した翌日には商品が届くスピーディーさだけでなく、複雑な宅配便にも適応できるという強みが、日本におけるサブスクリプションサービスの拡大に大きく貢献しました。

例えば、衣服をレンタル形式で提供するサブスク「airCloset」では、衣服を保管している倉庫から会員それぞれの衣服を送り、返送があれば修善やクリーニングに出し、一連の流れが終了したら保管場所に送るというような作業を繰り返し行っています。

このようなサブスクリプションサービスを展開するには、複雑な物流の仕組みを可能にできる物流の発達が必要不可欠です。

サブスクリプションが日本で流行ったきっかけ

サブスクリプションが日本で流行ったきっかけの事例を2つご紹介します。

最初に現代サブスクリプションサービスが日本で流行したきっかけは、NTTドコモの「パケホーダイ」。パケホーダイは、携帯電話が爆発的に普及した2004年6月に開始されたサービスです。

当時、携帯電話向けのコンテンツがインターネット上に次々と登場し、1人当たりが使用する通信量が増加傾向にありました。
ただし価格体系は、通信量を使用した分だけ料金が請求される従量課金制であったため、利用者の中には高額な料金に頭を抱える人も少なくありませんでした。

NTTドコモは、1ヶ月に決められた通信量が定額で使い放題になるサービスとして「パケホーダイ」を提供しました。高額な通信量の請求がこないという安心感から多くの利用者を獲得することに成功しました。

次にご紹介するのは、Spotifyの例です。
日本だけでなく、世界中でサブスクリプションサービスの火付け役となったSpotifyは、2008年から開始された音楽の定額聴き放題サービスです。約4000万曲以上の音楽が聴き放題だけでなく、大半の機能を無料会員でも利用できるといった点が他にはないサービスです。

通常、トライアル期間が過ぎると有料になることが多いですが、Spotifyは無料かつプレイリスト機能も無料で使用することができます。無料でも便利だが、有料会員になると更に便利という謙虚さが人気の理由と言えます。今では有料会員数が1億3000万人を超えるまでに拡大しています。

まとめ

サブスクリプションサービスは、これまでのIT産業の発展や物流の発展、経済状況の変化に大きく影響されているサービスであることが分かりました。

サブスクリプションは、ものを所有するのではなく、利用するという消費者意識の変化を表しています。
最近では、車のサブスクリプションや料理のサブスクリプションなど多種多様なサブスクリプションサービスが増えています。車を持っていることがステータスという概念や料理をするのが当然という従来の考え方も塗り替えられつつあります。

そう意味では、サブスクリプションサービスは時代を表す鏡のようなビジネスモデルだということができるでしょう。
消費者意識に対して合理的なビジネスモデルであるサブスクリプションサービスの背景を知った今、これからの発展も見逃せません!

 

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Yoshihiro Takahashi

高橋 嘉尋

プライシングスタジオ株式会社

代表取締役CEO

プライシングスタジオ株式会社代表取締役 CEO。2019年、慶應義塾大学総合政策学部在学中に価格1%が企業の営業利益を約20%の改善につながるということを知り、その影響力に魅力を感じ、当社を設立。プライシングスタジオは設立以来、30以上の業界、100以上のサービスの値付けを支援している。著書に「値決めの教科書 勘と経験に頼らないプライシングの新常識」(日経BP)。「日経トップリーダー・ビジネス」にて「値決めの科学」、「ダイヤモンドオンライン」にて「価格戦略のプロが見た「あの値付け」」を連載中。「日経COMEMO」キーオピニオンリーダー。そのほか、テレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」、ABEMA「ABEMA Prime」、NewsPicks「メイクマネー」など多数メディアに出演。2023年Forbesによる「アジアを代表する30才未満の30人」に部門で選出される。

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サブスクという名前は真新しく感じられますが、ビジネスモデル自体は昔から存在していました。例えば、雑誌や新聞などを定期購読したり、保険料金やガス、電気などの公共料金などを定期的に支払ったりしているのもサブスクリプションの1つです。

一方で現代のサブスクリプションは、従来のものと違い、インターネットやITを活用したビジネスモデルのことを言います。
なぜ近年になって、サブスクリプションが注目を集めているのでしょうか。今回は、サブスクリプションの流行背景について解説します。

サブスクリプションの流行背景

現在、サブスクリプションが流行している背景は以下の3つのことがあげられます。

1.インターネットの普及

サブスクリプションの流行背景の理由の1つ目は、ITやインターネットの進化があげられます。

インターネットが普及する前、ソフトウェアはパッケージ販売されていました。そのため、バージョンアップや修正したソフトウェアを発売するのに1年半や2年といった長い期間が必要でした。

ですがITやインターネットが普及してくると、インターネットを使って大きなデータをやりとりすることができるようになり、ソフトウェアをインターネット上でダウンロードして直接購入することが可能になりました。インストールされたソフトウェアをインターネット上で修理できるようになったため、パッケージ化するためのコストが低減し、ソフトウェアの流通スピードが増加しました。

頻繁に改善したソフトウェアを消費者に提供するための手段として、手軽に契約できるサブスクリプションが導入されるようになりました。

2.消費者の意識の変化

サブスクリプションの流行背景の理由の2つ目は、消費者の意識の変化があげられます。

少子高齢化が進み、ターゲットとしていた若年層が減少していることはもちろんのこと、若者を中心として「消費離れ」「所有欲離れ」という意識の変化が見られます。

「消費者離れ」や「所有欲離れ」は、将来への不安や手取り収入の低下が原因だと言われています。
消費者は、物を所有することを評価するというお金の消費に対する考え方から体験や人間関係に価値を見出し、評価の対象とする考え方に移行しているのです。

この結果、旅行やレジャー、芸術鑑賞、習い事などのサービスにお金を使うようになりました。従来のように個人として所有するという形で商品が売れなくなってしまった今、契約期間でのみ商品やサービスを提供するビジネスモデルであるサブスクリプションは、非常に合理的だと言えます。

3.物流の進歩

サブスクリプションの流行背景の理由の3つ目は、物流の発達があげられます。

インターネットが発達したことによって、ネットショッピングなど電子上の取引が普及しました。その際、重要になってくるのが宅配便の存在です。配送した翌日には商品が届くスピーディーさだけでなく、複雑な宅配便にも適応できるという強みが、日本におけるサブスクリプションサービスの拡大に大きく貢献しました。

例えば、衣服をレンタル形式で提供するサブスク「airCloset」では、衣服を保管している倉庫から会員それぞれの衣服を送り、返送があれば修善やクリーニングに出し、一連の流れが終了したら保管場所に送るというような作業を繰り返し行っています。

このようなサブスクリプションサービスを展開するには、複雑な物流の仕組みを可能にできる物流の発達が必要不可欠です。

サブスクリプションが日本で流行ったきっかけ

サブスクリプションが日本で流行ったきっかけの事例を2つご紹介します。

最初に現代サブスクリプションサービスが日本で流行したきっかけは、NTTドコモの「パケホーダイ」。パケホーダイは、携帯電話が爆発的に普及した2004年6月に開始されたサービスです。

当時、携帯電話向けのコンテンツがインターネット上に次々と登場し、1人当たりが使用する通信量が増加傾向にありました。
ただし価格体系は、通信量を使用した分だけ料金が請求される従量課金制であったため、利用者の中には高額な料金に頭を抱える人も少なくありませんでした。

NTTドコモは、1ヶ月に決められた通信量が定額で使い放題になるサービスとして「パケホーダイ」を提供しました。高額な通信量の請求がこないという安心感から多くの利用者を獲得することに成功しました。

次にご紹介するのは、Spotifyの例です。
日本だけでなく、世界中でサブスクリプションサービスの火付け役となったSpotifyは、2008年から開始された音楽の定額聴き放題サービスです。約4000万曲以上の音楽が聴き放題だけでなく、大半の機能を無料会員でも利用できるといった点が他にはないサービスです。

通常、トライアル期間が過ぎると有料になることが多いですが、Spotifyは無料かつプレイリスト機能も無料で使用することができます。無料でも便利だが、有料会員になると更に便利という謙虚さが人気の理由と言えます。今では有料会員数が1億3000万人を超えるまでに拡大しています。

まとめ

サブスクリプションサービスは、これまでのIT産業の発展や物流の発展、経済状況の変化に大きく影響されているサービスであることが分かりました。

サブスクリプションは、ものを所有するのではなく、利用するという消費者意識の変化を表しています。
最近では、車のサブスクリプションや料理のサブスクリプションなど多種多様なサブスクリプションサービスが増えています。車を持っていることがステータスという概念や料理をするのが当然という従来の考え方も塗り替えられつつあります。

そう意味では、サブスクリプションサービスは時代を表す鏡のようなビジネスモデルだということができるでしょう。
消費者意識に対して合理的なビジネスモデルであるサブスクリプションサービスの背景を知った今、これからの発展も見逃せません!

 

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Yoshihiro Takahashi

高橋 嘉尋

プライシングスタジオ株式会社

代表取締役CEO

プライシングスタジオ株式会社代表取締役 CEO。2019年、慶應義塾大学総合政策学部在学中に価格1%が企業の営業利益を約20%の改善につながるということを知り、その影響力に魅力を感じ、当社を設立。プライシングスタジオは設立以来、30以上の業界、100以上のサービスの値付けを支援している。著書に「値決めの教科書 勘と経験に頼らないプライシングの新常識」(日経BP)。「日経トップリーダー・ビジネス」にて「値決めの科学」、「ダイヤモンドオンライン」にて「価格戦略のプロが見た「あの値付け」」を連載中。「日経COMEMO」キーオピニオンリーダー。そのほか、テレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」、ABEMA「ABEMA Prime」、NewsPicks「メイクマネー」など多数メディアに出演。2023年Forbesによる「アジアを代表する30才未満の30人」に部門で選出される。

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