値上げを成功させるプライシング戦略|事例から学ぶ効果的に売上を伸ばす考え方

2020/10/27

こんにちは、Dr.プライスです!事業者の皆様は普段値上げにどのように取り組まれているでしょうか?値上げはうまく行えれば大きな効果をあげられますが、一歩間違えると大きな損失を巻き起こす可能性の高い諸刃の剣のようなものです。この記事ではそんな「値上げ」を様々な方面から解説していきます。

この記事の結論

  • 値上げ戦略①:顧客の価格感・支払い意欲を把握すること
  • 値上げ戦略②:高価格の商品と低価格の商品を用意すること
  • 値上げ戦略③:値上げ時の通知を工夫すること

値上げ戦略の重要性

値上げ戦略を成功させた場合、想像以上のインパクトをもたらします。
1%の値上げを行い、顧客離れが起きなかった場合、最大12.8%の収益改善効果があると言われているのです。

しかし、値上げにはメリットがあることを承知でも、事業者にとって実際に実行するのは怖いものです。

単純に購買数が減るかもしれない…。
もしかしたら値上げの事実によって顧客からの印象が悪くなるかもしれない…。
なのに、どの商品を何円値上げすれば良いのかわかない…。

など様々な懸念点があげられると思います。

そんな値上げを成功させるためには、「顧客離れを防ぐ」ことが重要です。

そのため、企業は顧客離れを防ぐための値上げ戦略を考えなければいけません。

今回は値上げ戦略を3つ具体的なテクニック・事例とともに紹介します。

値上げを成功させる戦略1.支払い意欲の把握

支払い意欲の把握とは

消費者は、1つの製品に対して、「XX円までなら払える」という、いわゆる「支払い意欲」を持っています。例えば、1つ牛丼があったとして、そこに対してターゲット顧客は390円までなら払って良いと思っている、のようなかたちです。

この支払い意欲を理解することで、無駄に安く価格設定してしまうことや、高く設定しすぎて顧客が離れてしまうことを防げます。

「支払い意欲の把握」の価格戦略

支払い意欲を把握した場合、「支払い意欲内での値付け」「安すぎる価格からの脱却」「価値の向上に応じた値上げ」という観点から、プライシングの決定が可能です。

1.支払い意欲内での値付け

支払い意欲を把握することで、適切な値上げが可能になります。
例として、10000人の顧客が牛丼を購入するときの支払い意欲で解説します。

牛丼の価格(円) 支払い意欲のある人数
(10,000人中)
合計売上(円)
case.1 350 9,200 3,220,000
case.2 390 9,000 3,510,000
case.3 400 7,000 2,800,000

上記の例の場合、支払い意欲を把握することで、牛丼の価格が390円のときの「case2」が1番売上が最大になることがわかります。

仮に350円から390円という40円の値上げなら、ほとんど顧客離れが起きずに、100人あたりの売上も3000円近く上昇します。一方、400円まで値上げをすると、極端に支払い意欲のある人数が減少するために、売上を下げてしまう恐れがあるのも事実です。「case2」と「case3」では10円の差しかないにも関わらず、売上が大幅に変わってしまいます。

値上げを実施する前に、顧客の支払い意欲を事前に把握しておくことで、値上げ幅を確定させて大きな利益があげられます。

2.安すぎる価格からの脱却

顧客の支払い意欲は、実は安ければ安いほど高まるわけではありません。実際に複数の分析結果から、顧客にとって「安すぎて買うのをためらう価格」があることがわかっています。

例えば、牛丼の料金が80円で販売されていたらどうでしょうか?もし、品質や業態が他で販売されているものと同じであったとしても、価格が安すぎて、怪しさを感じると思います。

そのため、価格を安くしすぎた結果、顧客の購買意欲を削がないようにしなければなりません。

3.価値の向上に応じた値上げ

商品が同じでも、顧客の支払い意欲は不変ではなく、時間とともに変化することがあります。

例えば、SaaSなどのサブスクリプションサービスの場合、新しい機能やコンテンツの追加をした際に、顧客の支払い意欲が変動します。

機能・コンテンツの追加が利用者にとって魅力的な改善だと、顧客の支払い意欲は向上します。そのタイミングで支払い意欲を分析し向上していれば値上げを成功させられるチャンスです。

「支払い意欲の把握」事例:東京ディズニーランド

東京ディズニーランドのチケット価格は、なんと開園以来13回もの値上げがされてきました。しかし、ディズニーランドが値上がりしても、来場者数は減ることはなく、むしろ増加しています。

これは、ディズニーランドがその時々の来場者の支払い意欲を把握し、それに応じて値上げをした結果です。度重なるコンテンツの追加や、人気の向上は、来場者の支払い意欲を高め、そしてディズニーは顧客の支払い意欲を把握して値上げを実施しています。

値上げを成功させる戦略2.安値と高値の共存

安値と高値の共存とは

安値と高値の共存とは、値下げと値上げをともに実施する価格戦略です。

値上げによる顧客離れは、単純に「高すぎて検討に乗らない」と感じさせてしまった時だけではなく、「手は出るが価格が不当に高い」と感じられた時にもおきます。つまり、支払う意欲があったとしても、値上げという行為自体が不誠実に捉えられる時があるのです。

ここで紹介する戦略が、そう感じさせないための「安値と高値の共存」です。

値上げをしても顧客のマイナスな感情を引き起こさないためには、値上げだけではなく、値下げも織り交ぜることで、顧客にとっての不利益を感じさせないことが重要なのです。

「安値と高値の共存」の価格戦略

1.顧客の気持ちに寄り添うプライシング

値上げを実施するときに、顧客のマイナスな感情を引き起こさないために、商品Aの値上げと商品Bの値下げを両方実施します。そうすることで、単純な値段引き上げではなく、「価格変更」という印象を顧客に与えることが可能です。

2.キャプティブプライシングの応用

キャプティブプライシングとは、メイン製品を低価格で、付属製品を高価格で販売する価格戦略です。この戦略を応用することで、一部の商品の値上げを成功させ、収益拡大が見込めます。

例えば、カミソリなどの商品は、本体の値段を下げ、何度も購入される刃の値段を上げる価格戦略が行われています。
長期的に買われる付属品を値上げしつつも、本体の値段を下げて購入を促進することで、通常の販売方法より長期的に高い収益が見込めます。さらに、この形式でも「安値と高値の共存」が実施できており、顧客が値上げを不当だと感じにくく、顧客離れが起きにくいのです。

3.ダイナミックプライシングの応用

ダイナミックプライシングとは、「高頻度で商品価格を変更させる仕組み」です。主に需給の変動に合わせて価格変更を行うかたちで活用されており、企業の収益最大化や混雑緩和など、多くの価値を発揮しています。

ダイナミックプライシングを用いると、需要が高い時に価格を上げることで利益率をあげ、一方需要が低い時は価格を下げることで顧客の不信感は抑えられます。つまり、これは時による需要変動を利用した、「安値と高値の共存」です。

さらに、ダイナミックプライシングは、需要によって価格を変更するため、混雑緩和や在庫処分などの恩恵も受けられます。

ダイナミックプライシングについては詳しくこちらで解説しています。

「安値と高値の共存」事例:JR東日本

JR東日本は、コロナ禍によって収益に大きな打撃を受けた企業です。2020年の4月から6月の売り上げは、前年度比2640億円も落ちてしまっていました。

そんな中、収益改善のための値上げを実施しましたが、そこでJRはダイナミックプライシングを検討していることを発表しました。ラッシュ時の価格をあげるだけでなく、混雑しない時間帯の価格を下げることで、人々から反感を持たれずに値上げすることを可能にしています。

値上げを成功させる戦略3.適切な値上げのお知らせ

適切な値上げのお知らせとは

適切な値上げのお知らせとは、値上げの伝え方を工夫する戦略です。

ここまで解説してきた値上げ自体を工夫する方法もありますが、適切な値上げのお知らせも重要になります。

商品値上げをした際の取引先への文章や、世間に対しての説明を真摯に行うだけでも、値上げに対する印象は変わります。

適切なお知らせでの戦略

1.メールでの値上げのお知らせ

メールでの値上げのお知らせは、工夫次第で顧客の印象を高く保つことができます。

まず、心得として、早い通知を心がけましょう。出来る限り前もって通知することで、誠実な印象を与えられます。

ここに、値上げのお知らせの際に必要な項目をまとめました。ぜひご参考になさってください。

値上げ取引先をメールでメールで記載すべき項目
  • 値上げを実施する旨
  • 値上げの対象商品
  • 値上げ開始の日程
  • 値上げ前の価格と値上げ後の価格
  • 値上げに対する考え方の表明(必要に応じた謝罪)
  • 継続しての利用のお願い

2.営業チームへの値上げの浸透

値上げを直接対面で通知してやりとりをする営業チームとの協力は、「適切な値上げのお知らせ」のために重要です。

しかし、実際に販売数の増加が目的であることの多い営業チームは、値上げを嫌うこともあります。実際に売りにくくなる他、取引を行っている企業との関係悪化をもたらす危険性があるため、値上げに反感を持たれるかも知れません。

そのため、実際に営業を行う彼らに、値上げの必要性や、競合と比較した時の値段感、値上げの背景を強く理解しもらい、心から共感してもらうことが重要です。

「適切な値上げのお知らせ」事例:ともえ庵

ともえ庵は都内のたいやき屋です。

2018年1月に、定番商品のたいやきの価格を150円から180円に値上げを発表し、2月に実施したところ売り上げ増加を達成しました。

この価格変更の際にともえ庵は、ブログ上で、値上げの背景や値上げが必要な理由、値上げに関するお詫びなどを長文で行ったのです。顧客に対する真摯な態度が成功の秘訣の1つと言えます。このように値上げのお知らせを工夫することで、顧客離れを防ぐ方法もあります。

参考:エンタメウィークたいやき「ともえ庵」ブログ

まとめ

「値上げ」は大きなインパクトをもたらす一方、「顧客離れ」のリスクを持ちます。この記事では、そんなリスクを回避することで値上げを成功させる戦略を3つ紹介してきました。

しかし、値上げに関しては実際の実行に際して専門家の協力が必要になることは多くあります。値上げや価格に関してお悩みでしたら、ご気軽に一度プライスハックにご相談ください。

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価格改善クラウド

この記事の監修者

プライスハック監修

高橋嘉尋

プライシングスタジオ株式会社代表取締役社長

プライシングスタジオは、B2B向け価格改善クラウド「Pricing Sprint」の開発・提供や、様々な産業へのダイナミックプライシング受託開発・導入サポート事業を展開している。また大手飲食チェーン店をはじめとする様々なクライアントに対し、プライシングコンサルティングを実施している。

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