ホテル業界のダイナミックプライシング|客室稼働率を向上させる価格システムを解説

この記事では、ホテル業界でのダイナミックプライシングについて、事例を交えながら解説いたします。

ダイナミックプライシングについて詳しく知りたい方はこの記事をご覧ください。

ホテル業界とダイナミックプライシングの歴史

ホテル業界は、ダイナミックプライシングがかなり早くに導入された業界です。

ダイナミックプライシングとは、「高頻度で商品価格を変更させる仕組み」で、商品の需給に合わせて価格を変更させて適正価格で売ることに活用されています。

実は1980年代後半からアメリカでは、ホテルのダイナミックプライシングは価格変更の担当者により行われてきていました。

しかし当時は、担当者の経験と勘に頼って需要を予測して、収益を高められるように価格を変動させてきていたのです。

それを近年では、自動化や機械学習をもとにした需要予測を用いて、ダイナミックプライシングが行われるようになっています。

ホテル業界におけるダイナミックプライシング導入のメリット

ホテル業界におけるダイナミックプライシング導入のメリットとして以下の2点があげられます。

1.収益拡大

ホテル業界のダイナミックプライシングでは、「できるだけ高い価格で全ての部屋を売り切る」という目標を達成するために価格を変動させます。
客室の需要が大きい場合…できるだけ高く売り切れるように「値上げ」をする

ex)予約状況が良い、当日イベントが近くで開催される、繁忙期、休日

客室の需要が小さい場合…売り切れるように「値下げ」をする

ex)予約状況が悪い、当日雨が降る、閑散期、平日

これらにより、稼働率と平均客室単価の双方が改善されるため、ホテルの収益は増加します。

2.自動化による業務効率化

ダイナミックプライシングは、従来は担当者の勘と経験を元に考えられ、手動で行われていた、価格決定や価格変更の膨大な作業を自動化できます。

「客室の種類が膨大」「様々なオンラインチャネルで価格を顧客に通知している」「価格変更の回数を増やしたい」などの場合に、価格決定・変更作業の業務コストはかなり大きなものになってしまいます。

そのため、ダイナミックプライシングによりそれらを自動化することは、業務効率化としての価値も大きいと言えるでしょう。

ホテルにおけるダイナミックプライシングの仕組み

ホテル業界では顧客が増えても、それに応じたスタッフの数などが変わらない場合が多いため、コストが上がりにくいという特徴があります。

そのため、「できるだけ高い価格で全ての部屋を売り切る」を目標に、ダイナミックプライシングが行われます。ステップは以下の2つです。

  1. 需要予測をもとに、部屋料金を日毎に異なる価格に設定
  2. 予約状況や、予測する需要の変動をもとに、予約日まで価格を変更し続ける

そんなホテルでのダイナミックプライシングを解説します。

ステップ1:需要予測をもとに価格設定

まず、曜日、季節、その日のイベントの有無などの、需要を左右する変数をもとに、その日のホテルの需要の大きさを予測します。そして、その予測から特定の予約日の価格を設定します。

ステップ2:状況に応じた価格変更

①レベニューマネジメントを活用した価格変更

さらに、1度設定した価格を、予約状況や新たなデータを元に変動させます。それには、主に、ホテルで以前から行われてきていた「レベニューマネジメント」という手法が活用されます。

レベニューマネジメントでは、その時点での予約状況をもとにした価格変更を行います。これにより、「できるだけ高い価格で売り切る」ことを目指します。

レベニューマネジメントの工程

まず特定の予約日の、部屋が埋まっていくペースを推定しておきます。これは、下の画像のように、ブッキングカーブ(予約曲線)として表されることも多いです。

そこで、レベニューマネジメントでは、予約のペースの、理想と現実のズレに合わせて価格変更するのです。

予定より早く部屋が埋まりそうな場合→値上げ

予定するように部屋が埋まらない場合→値下げ

このように価格を動かすことで、ブッキングカーブ通りに予約を埋め切ることを狙います。

②外部データを活用した価格変更

また現代のダイナミックプライシングは、内部のデータだけではなく、外部のデータから、需要を予測して価格変更します。

例①天候などの外部データを元にした需要予測

予約日が近づくにつれて明らかになる、需要予測に扱えるデータをもとに価格変更が行われます。

天気はその代表例です。例えば、台風が直撃するとわかると、その日の需要は落ち込みますよね。それがわかれば、売り切るためには客室料金を安く変更する必要があるとわかります。このように、天気が需要、ひいてはブッキングカーブに与える影響をAIや人間が定義したうえで、価格変更を行います。

例②競合ホテルの在庫に応じた価格変更

実施しているホテルとして、アパホテルがあげられます。例えば、エリアの競合ホテルに10,000円の部屋しか在庫がなくなった時に価格を11,000円に自動で値上げするように、競合価格をもとにダイナミックプライシングを行います。

ブランド力もあり、一等地にあるアパホテルは、「1,000円の差なら自社が選ばれるだろう」と考えているため、自動的に価格変更を行い、利益増を狙っているのです。このように、競合ホテルの在庫状況もダイナミックプライシングに使われます。

参考:現代ビジネス

ホテルのダイナミックプライシング導入企業事例

実際にダイナミックプライシングを導入しているホテルとして、インドのホテル「Hotel Windoer」 の導入事例を解説します。

Hotel Windoerの価格決定の状態と変化

Hotel Windoerは、インドのパトナの中心部に位置する77室の中規模ビジネスホテルです。市街地の中心に位置しており、常に低料金の多くの格安ホテルに囲まれています。

Hotel Windoerは、そんな状況でもホテルのブランドを薄れさせないために、値下げを避けていたのですが、価格競争を行っている周囲の競合に顧客を取られてしまっていました。また、価格変更の重要性は理解していたものの、様々なチャネルでの価格変更を手動で行っていたため、頻度は週に1度と少なかったようです。

Hotel Windoerのダイナミックプライシングの導入

Hotel Windoerは、2018年にaiosellという企業のダイナミックプライシングシステムを導入しました。

季節や予約時間、競合状況などの様々な要素から需要を予測するダイナミックプライシングにより、客室稼働率を高めながら、平均客室単価を高くキープできました。

また、安易な値下げを行わずに、売れないと判断した部屋の料金のみを予約直前に値下げすることで、ブランドイメージを保ちながら、売り切ることを可能にしました。

さらに、価格決定及び価格変更の自動化により、担当者はその仕事を省き、他の仕事に専念できるようになったそうです。

ダイナミックプライシング導入の結果

ダイナミックプライシング導入後、Hotel Windoerは「総宿泊日数(Total room nights)の向上」「総売上(Total Sales)の向上」のメリットを享受することができました。

ダイナミックプライシングにより、部屋の稼働率が増えたことが総宿泊日数の増加に繋がったようです。

さらに、稼働率に加え客室単価の改善ももたらされたことは、総売上の増加をもたらしたと考えられます。

参考:AIOSELL

まとめ

ホテル業界において、ダイナミックプライシングは馴染み深い側面を持ちながらも、今後もアップデートされていくであろう重要な価格決定手法です。

また、ホテル単体だけではなく、パッケージツアーとして飛行機代と合わせてダイナミックプライシングされるケースも出てきています。今後もホテル業界のダイナミックプライシングから目が離せません!

ホテル業界のダイナミックプライシング提供企業についてはこちらを参考にしてください。

価格改善クラウド
プライスハック監修

この記事の監修者

プライシングスタジオ株式会社CEO 高橋嘉尋

プライシングスタジオ株式会社CEO

プライシングスタジオは、B2B向け価格改善クラウド「Pricing Sprint」の開発・提供や、様々な産業へのダイナミックプライシング受託開発・導入サポート事業を展開している。また大手飲食チェーン店をはじめとする様々なクライアントに対し、プライシングコンサルティングを実施している。

関連記事一覧

ダイナミックプライシングの国内外の10の事例を解説

2020/12/22

ダイナミックプライシングとはなにかについて、国内外の10の事例をもとに解説します。近年、ダイナミックプライシングは様...

ダイナミックプライシングとは?仕組み・事例をわかりやすく解説

2020/12/02

近年話題のダイナミックプライシングとはなんでしょうか?「メリットは?デメリットは?どんな仕組み?歴史は?どんな事例が...

ダイナミックプライシングのアルゴリズム3種類を簡単に解説

2020/12/01

ダイナミックプライシングは、変動する需給に合わせた最適な価格で商品/サービスをで販売することを可能にします。それでは...

最新の飲食店のダイナミックプライシング事例【SNSで話題沸騰中】

2020/10/22

様々な分野で導入が進むダイナミックプライシングですが、先日飲食店で導入されたというニュースが流れました。この記事では...