ダイナミックプライシングの国内外の10の事例を解説

2020/07/17

こんにちは、Dr.プライスです。ダイナミックプライシングは、近年様々な業界で導入されています。この記事では、導入事例のある10の業界を取り上げ、解説していきます!

ダイナミックプライシングとは何かを詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください

この記事の結論

  • ダイナミックプライシングは、日常生活の様々な場所で導入されている
  • BtoCだけでなく、BtoBやCtoCのサービスでも、ダイナミックプライシングは導入されている。
  • ダイナミックプライシングの導入をどんな企業でも検討できる時代がきている。

ダイナミックプライシングとは?

ダイナミックプライシングとは、「高頻度で商品価格を変更させる仕組み」です。価格変更させることで、企業の収益を最大化させることや混雑を緩和させることが可能になります。

人々の需要が増加している商品や、供給不足な商品に対しては、価格を上げて利益を最大化します。一方、人々の需要が縮小している商品や、供給過多な商品に対しては、価格を下げることで、販売数を増やします

そんなダイナミックプライシングは、近年ますます多くの業界で導入されており、私たちの日常生活にも影響を与えています。この記事では、国内外の企業がダイナミックプライシングを導入した事例やその業界におけるダイナミックプライシングのサービスの提供事例をまとめています。

事例1.スキー場

ダイナミックプライシングを導入しているヨーロッパのスキー場の数は、2018年から2020年にかけて3倍に増加しています。導入した狙いは、

(1)収益の最大化、(2)早期予約する利用者の増加、(3)長期利用の顧客増加の3つです。

(1)収益の最大化
需要が集中する期間に値上げをして利益を増加させ、一方需要がない時間に値下げをして顧客を増加させることで、収益の最大化を図っています。

(2)早期予約数の増加
チケット価格を左右する変数として「実際にスキー場を訪れる日付」だけではなく「予約を行うタイミング」も取り入れて、早期予約の価格を低くする手法を取ることで達成を目指しています。

(3)長期利用の顧客増加突発的な予約で来場する人も早期予約の方が滞在日数が長い傾向にあります。そのため早期予約者数が増加すると長期利用の顧客が増加する結果となり得ます。

また、スキー場で扱われているプライシングモデルは3つのパターンがあります。

①天気に応じた割引モデル
天気予報に基づいて段階的な割引を顧客に提供することで、需要の減退が予測される天気の悪い日の集客を増やす施策です。

②予約時期に応じた割引モデル
予約が早ければ早いほどチケットが安くなる仕組みです。

③複合的な需要予測に基づく価格調整モデル
履歴データ、予約時間、季節、休暇期間をもとに需要予測を行い、それに合わせて値段を変動させる仕組みです。

現在はヨーロッパでのケースが主ですが、今後国内のスキー場でも導入されていくと考えられます。

事例2.配車サービス

移動手段として、個人の車やタクシーをその場に呼ぶことができる配車サービスでもダイナミックプライシングは広がっています。

アメリカの配車サービスUberは、個人がタクシーとして乗客を乗せることができるサービスです。乗客は行き先をアプリで入力し、近くにいるドライバーとマッチングする仕組みなのですが、マッチング時に提示される運賃がダイナミックプライシングによって調整されています。

需要が高い地域に適切に即座にドライバーを派遣するため、需要が高い地域の価格(=ドライバーにとっての収入)を高く設定することで、ドライバーが該当する地域に赴くインセンティブを作ることが可能です。それにより高い需要に応える供給を提供することができ、Uberの利益の最大化にも繋がります。

一方、乗客視点から見ると、需要が高い地域では値段も高いため、需要が低い(=ドライバーの供給が足りている)地域に移動して配車を行います。そのため需要過多の地域での需要が抑えられ、供給とのバランスが取れるのです。

ちなみに、Uberのダイナミックプライシングは、「surge pricing」という名称で、価格変更は需要が多くなった場合のみ(=値上げのみ)です。Uberはサービス供給者であるドライバーが自社社員ではなく第三者であるために、強制力を持って需要の多い地域に向かわせることができません。

そのため、それでもドライバーを動かそうと思うと、金銭的な報酬が上がるという動機付けが必要になってきます。Uberのダイナミックプライシングは値上げのみですが、自社の営利目的だけでなく、乗客のもとに十分な数のドライバーを届けるという、顧客利益もあるため、一定の納得感が得られています。

事例3.民泊サービス

個人が所有する物件などをを宿泊施設として貸し出す民泊サービスでも、ダイナミックプライシングの導入は進んでいます。例として、ここ数年日本でも盛んに利用されているAirbnbが挙げられます。

Airbnbでは、宿泊施設のホストが自分で部屋の値段を決めることが可能です。しかし、宿泊施設の経営については素人であろうホストが、適切なプライシングを行うことは簡単ではありません。

そのためAirbnbでは、以下のような条件をもとに、最適価格を推奨するサービスが用意されています。

最適価格の提案の変数

  • 残り時間: チェックイン日が近づくにつれ、料金は安くなります
  • エリアの人気度: エリア全体の検索数が増えるにつれ、料金は高くなります
  • シーズン: 繁忙期や閑散期によって、料金が変わります
  • リスティングの人気度: ビュー数と予約が増えるにつれ、料金は高くなります
  • リスティングの記載情報: Wi-Fiなどのアメニティ·設備を増やすと、料金は高くなります
  • 予約履歴: 予約が入ると、成約段階の料金もその後の料金に影響を与えます。たとえばスマートプライシングの推奨料金より高い料金を手動で設定し、それで予約が入った場合には、アルゴリズムはそこから学習し、推奨料金に反映していきます。
  • レビュー履歴: 高評価レビューが増えるにつれ、料金は高くなります

参考:Airbnb「スマートプライシング」のメカニズム

事例4.駐車場

駐車場のダイナミックプライシングは、現在日本でも、海外でも導入が進んでいます。

PerfectPriceという企業では、空港駐車場におけるダイナミックプライシングが行われています。空港向けにのaaS「PerfectPrice」のサービスと空港の自社のデータを活用し、駐車場の需要の変化を予測し最適価格を導くことが可能です。

国内のCtoC駐車場予約サービスakippaでは、駐車場の近くでのイベントの有無や普段の利用状況から需要を予測し、それに応じた値段に価格を設定されています。

事例5.レンタカー

レンタカーのダイナミックプライシングは、ここ数年、大きな盛り上がりを見せた業界です。ダイナミックプライシングを利用するレンタカー業者や、ダイナミックプライシングを搭載したレンタカー管理プラットフォームが、国内外で生まれています。さらに、海外ではレンタカーのダイナミックプライシングを監視し、安くなったタイミングで消費者に知らせるウェブサイトが存在するほど広がっているのです。

ダイナミックプライシング導入以前から収益向上化のために、国外を中心にレンタカー業者は価格調査と徹底的な分析が行われていましたが、コストの高さが目立っていました。ただ近年におけるビックデータやAIの発達により、その時々の需要を予測し、リアルタイムに価格を設定し直すダイナミックプライシングが可能になったため、価格調査を行っていた頃よりも低いコストで高い収益拡大を実現することができるようになりました。

レンタカーのダイナミックプライシングは、企業が持つ販売実績などのデータや、時間・天気・周辺地域でのイベントの有無などの、商品の需要予測に扱える外部データをもとにその時の需要の大きさを予測します。また、そこに競合他社の情報を加えて、最大の収益が期待できる値段になるように常時価格を変動させる仕組みも使われています。

事例6.映画館

映画館では昔から、需要が少なくなる曜日の値段を安くする取り組みが行われていたが、近年ダイナミックプライシングというかたちで価格変動を実施する企業が海外で増えてきています。その背景として、Netflixなどのビデオストリーミングサービスが普及したことで、映画館は価格戦略の再考を求められている点が挙げられます。

映画館は、座席数(=1度にサービスを供給できる量)が決まっている上、需要の変動が時間に応じて起きるため、ダイナミックプライシングとの親和性が高い領域と言えます。飛行機などに活用されるアルゴリズムを転用しやすいのです。

映画館がダイナミックプライシングを導入する場合は、ビックデータを元に需要予測を行い、予測される需要と映画館の容量に応じた値段に設定する、アルゴリズムが導入されている場合がほとんどです。

しかし、映画の料金に合わせてドリンクなどの値段も値上げしたところ、ダイナミックプライシングの名を借りた値上げだと批判を受けた映画館もあるようです。ダイナミックプライシングを導入する際は、その導入理由や変動要因を顧客に伝える、透明性の高さが求められるでしょう。

導入企業が気をつけるべきことについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。


参考:『ダイヤモンドオンライン』映画やライブの「価格変動制」が話題

事例7.ライブ

音楽ライブでのダイナミックプライシングは、昨年11月の音楽イベント「Yahoo!チケット EXPERIENCE VOL.1」にて日本で国内で初めて導入され、国内で話題になりました。

導入の最大の目的は、収益の最大化です。需要が多い場合、高価格で販売し利益を最大化し、一方需要が少ない場合、値下げして販売数を促進し、客数を最大化することを、AIを用いて行います。

同じ条件のライブが定期的に開催されることは少ないため、機械学習を導入する際に準備データが不十分となるリスクがあるものの、アーティストの収益改善に必要な施策として今後も導入は拡大していくと考えられます。

今後のライブ業界でのダイナミックプライシングは、大規模会場での活用から導入が拡大していくと予測できます。当然のことながら、アーティストによる大規模なライブイベントでないと導入は金銭的に難しいことも理由としては挙げられます。

ライブでのプライシングは、値上げ以上に値下げとの相性が良くなります。なぜなら、スポーツチケットや航空券の場合と同じく、在庫が余るリスクがあり値下げしてでも会場を満席にすることが利益につながりやすいためです。また、安くしてでも客数を増やすことは、それによって参加した顧客をファンにすることができる可能性があるうえ、アーティストのブランディングにおいて重要な、動員数ブランドの獲得につながります。また、顧客から不満が出るのは値上げのタイミングなので、業界内で利用されてまもないダイナミックプライシングは、値下げメインの方が受け入れられやすいです。そのため、その値下げを有効活用できる大規模会場を中心に導入は拡大していくでしょう。

事例8.オフライン小売

EC小売業界もダイナミックプライシングが早くに導入された業界です。ここ数年はオフライン小売でも導入が拡大しております。電子タグとも呼ばれる、電子棚札の利用拡大により、日本国内でも大手家電量販店のノジマやビックカメラがダイナミックプライシングでの値付けを始めました。また、コンビニエンスストアのローソンでも、商品の賞味期限を基準に価格を変動させるダイナミックプライシングの導入実験が行われています。

もともとオフライン小売業界は、Amazonなどオンライン小売店やオフライン小売店同士の激しい競争環境のため、価格変更を頻繁に行う必要がありました。しかし、値札の張り替えを手動で行うことは、扱う商品点数が多い大手小売店において、非常にコストがかかるものでした。そこで電子棚札の実用化に伴い、ダイナミックプライシングの導入が拡大し、以前より高頻度の価格変更をスピーディーかつローコストに行えるようになりました。

参考:『mbaSwitch』小売店でも始まるダイナミックプライシング

オフライン小売のダイナミック事例として、こちらでビックカメラの事例を紹介しています。

事例9.遊園地

国内でダイナミックプライシングを導入した遊園地の事例として、ユニバーサルスタジオジャパンが挙げられます。ユニバーサルスタジオジャパンでは、2019年1月から3種類の価格を、時期や曜日によって分けて提供する価格体系を始めました。現在はまだ細かい価格変更は行っていませんが、徐々にさらにダイナミックに価格を変えるようにすることも検討しているようです。

遊園地は繁忙期と閑散期の需要差が大きいため、繁忙期のチケットは高い値段で販売し利益を上げ、閑散期のチケットは安い値段で販売することで販売量を増やし、収益を最大化することができます。遊園地は基本的に同じサービスを顧客に提供する業態であり、繁忙期と閑散期という形で需要の変動を予測することができるため、適正価格の算出が比較的容易なのです。

しかし、今後さらに細かく動的なダイナミックプライシングを行っていくのならば、天気や近隣のイベントの有無など、需要を予測する変数を増やしていくことも必要になると考えられます。実際に、海外の遊園地向けダイナミックプライシングを提供しているSMART PRICERは、天気などの変数も加味してプライシングを行っているようです。

参考:『日経トレンド』USJが始めた「価格変動制」の裏側

こちらの記事では、ダイナミックプライシングによる混雑緩和の例として、遊園地業界を解説しています。

事例10.化学工業

様々な製品の原料を作る化学工業でもダイナミックプライシングが導入されているケースがあります。化学工業で作成する商品の原料のもととなる化学品の価格は、基礎となる原油価格や需給バランスの変化によって変動することが多いです。
そのため、それらを自動で行えるダイナミックプライシングの導入が近年一部の会社で行われ始めています。化学工業は、あまりプライシングを工夫してこなかった業界であるため、収益性を高める有用な手段として注目されています。

「ベイン・アンド・カンパニー」の調査によると、非常に高いパフォーマンスをあげている化学工業会社の50%がダイナミックプライシングを導入しています。80%は競合他社の価格の監視を行っているようで、化学工業におけるダイナミックプライシングの有用性がわかります。

参考:『ベイン・アンド・カンパニー』The Formula for Better Pricing in Chemicals

メジャーな業界事例

この記事では、貴重なダイナミックプライシングの事例をまとめました。
よりメジャーな事例である、EC小売、スポーツ、飲食店といった業界でのダイナミックプライシング導入事例は、以下の記事に専門的にまとめてあります。ぜひご覧ください!

EC小売

スポーツ

飲食店

高速道路、遊園地、銭湯

まとめ

ダイナミックプライシングは近年様々な業界で導入され始めています。イールドマネジメントという形で適用できる、映画館やライブなどの供給に限りのある業界が代表的ですが、化学工業などのBtoB業界や、airbnbやUberといったCtoCサービスでも導入は進んでいます。これからも導入される業界は増えていくでしょう。まさに、どこにでもダイナミックプライシングがある時代が近づいているのかもしれません。自社では導入は難しいと思っていたとしても、開発企業やツール提供企業にお声をかけてみますと、導入の実現につながる可能性は十分にあります。

ダイナミックプライシングを導入すべき企業の特徴をこちらの記事で解説しております。導入をお考えの方は、ぜひご覧ください!

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価格改善クラウド

この記事の監修者

プライスハック監修

高橋嘉尋

プライシングスタジオ株式会社代表取締役社長

プライシングスタジオは、B2B向け価格改善クラウド「Pricing Sprint」の開発・提供や、様々な産業へのダイナミックプライシング受託開発・導入サポート事業を展開している。また大手飲食チェーン店をはじめとする様々なクライアントに対し、プライシングコンサルティングを実施している。

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